第10話 魔王ウジーザス!……え!?魔王!?


 「ただの酸素濃度不足で気絶しているだけですね」


 そう言って謎の白い女性はマスターに魔皮紙を当てる。


 「かはっ!……!?」


 すると何かに叩き起こされるように身体がビクンとなり目を開いた。


 「!?!?!?!?!!?」


 「こんにちは、マンタティクスさん」


 「ままままままま魔王様!?」


 「へ?」


 魔王?……魔王ってあの?ゲームとかだとラスボスみたいな?


 気がつくと俺の透明化も元に戻っていた。


 「減点」


 「ひ!?」


 「?」


 減点?


 「まず、魔物を仕留めたらちゃんと処理をしましょう、腐って次の人がこの地で依頼を受ける時に大変なことになります、煮るなり焼くなりして食べるか食べないのなら素材を取って土に埋めてください、それにボロボロの拠点のテントもゴミになったらなったで片付けるかちゃんと治してから出発してください、砕けた破片などがどこかへ飛んで行きほかの冒険者に当たると危険ですそれから____」


 うわぁ、なんかめちゃくちゃお説教しだしたんだけど……

 魔王ってこんなに細かいっけ?と言うか寧ろ「自然なんてどうでもいい!焼き払えぇ!ガッハッハッハ!環境破壊は楽しいゾイ!」なんて感じじゃ無い?


 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!どうか!どうがギルドカード剥奪だけは!」


 マスターが土下座して謝ってる。


 ……ん?待てよ?


 「魔物を仕留めた……?つまりそこから見ていたのか?」


 そう言うと魔王ウジーザスは此方を向きニヤリと笑った。


 「えぇ、もちろん見てましたよ……“最初から”」


 「最初からってどこから?」


 「貴方が召喚される所から全て、です」


 「!?」


 「そうですね、まだ此方に来たばかりのあなたは勉強中で外のことをあまり知らない様なので一つ教えてあげます……この世界の私たち亜人はそれぞれ異能が開花したら使えます、私の異能は『千里眼』、私の魔王城から見ようと思えばアナタ達などすぐに見えるのです」


 うわぁ、チート級能力じゃんそれ!

 てか建物の中まで見えてるよね!?

 

 「も、申し訳ございませんでした!!!」


 「フフッ、どうしました?顔が真っ青ですよ?」


 まずい……

 人間は過去に滅ぼされている……そんな中、僕がこの世界に来たのだ。


 人間は討伐対象……しかも話を聞く限り会ったら殺せレベルだ。


 「そう構えなくていいですよ、私は貴方達を殺す気はありません」

 

 此方の考えを読んだのかそう言ってきた。


 「この際、減点は多めに見てあげます、ですが何個か貴方に聞きたいことがあるので依頼を達成したら魔王城に来るように」


 「は、はい……」


 「よろしい」


 ニコッとウジーザスが笑顔を見せて真っ青な顔のマスターを撫でて帰っていった。




 「終わった……僕の人生……」


 

 そこから先のマスターはまるで魂が抜けた状態になっていた……






 何だかんだこれが僕たちにとって初めての依頼だった……




 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る