LIVING BY NECK HUNTING sidestory 悲哀の道化師

SEN

悲哀の道化師


LIVING BY NECK HUNTING sidestory  悲哀の道化師

台本:SEN  声劇人台本(男3・女1) 所要時間:45分




説明欄や詳細文などに『作品タイトル・台本URL・作者名』の明記をお願い致します。


※各作品の著作権は放棄しておりません。無断転載や自作発言等、著作権を侵害する行為はお止め下さい。もちろん無断での改編や再配布も禁止です。


※あくまで趣味の範囲での活動や放送、金銭の発生しないツイキャスなど、各種配信サイトでの使用は基本的に歓迎しますが、金銭が発生するものはNGです。


※ツイッターのDM等でお知らせ頂けますとツイキャスなら聴きに行ける可能性があるので、よかったら気軽にご連絡下さい!


※アドリブ等はストーリーを捻じ曲げない、雰囲気を壊さない程度であればOKです。






キャラクター紹介↓






チダイ(男・21歳)

傭兵をしていたが死ぬ事が怖くなり盗賊になった。生きる為にあらゆる方法で盗みを働く。陽気でひょうひょうとしていて関西弁を喋る。隠密行動が得意。歴史や遺物に関して興味がある為、頭がキレるが大の女好き・酒好き。


マイス(男・21歳)

チダイを一方的に相棒と呼び慕っている。身体は弱いがメユナと生きる為に盗賊となり何とか生き長らえている。


ハイル(男・20歳)

貴族の男、律儀で静かだが天然。チダイに引かれる。リヴィアではかなり高貴な貴族だったが貴族での暮らしが嫌になり盗賊の存在を知り憧れる。長剣の使い手。


メユナ(女・19歳)

マイスの妹。兄と共に蛮族に殺されそうになっていたところチダイに助けられ兄と共にチダイと共に盗賊になる。











チダイN

俺は死ぬんが怖かった。でも食わな死んでまう…負の連鎖いうやつやな。

何とかして死なへんように何不自由無い生活ができんかと考えて考え抜いて始めたのが、盗賊。


盗賊言うてもあれやで?野道で荷馬車を襲ったり旅人から強奪したりはせえへんやつやで?


何でかって?そらあれや、喧嘩売って、もしそいつがめっっちゃ強かってみいや…死ぬやん?だから俺は火事場泥棒…言うたら格好悪いなぁ…まぁ、オレは先鋒よりも次鋒、様子見しかせんよ


戦争に巻き込まれた人が逃げた家から金品を強奪する人。かな?綺麗に言うたら。

そんな事を繰り返してるうちに変なやつに会うたんや



チダイ

「さぁてと…コンコン、どちらさんです~?あ、チダイ言います~入るで~?ええよ~入ってや~?あ、どうも~」


◆SEドア開ける


チダイ

「誰かいますか~?居ても困るけどなぁ~?···よしよし逃げとるな···まぁ、おっても困るけども……さぁて、めぼしい物はありますかいな~?」


チダイN

俺はなるべく高貴な貴族の家を狙ってた。高そうな金品を奪って他の街で換金して

なんとか生活してたんや。ちょっとその貴族の家で探すのに夢中になりすぎてたみたいで…俺はこっちを棒立ちで見ている男に気づいた


チダイ

「うわぁぁぁっ!!?誰やっ!!?」


ハイル

「いや、貴公が誰か」


チダイ

「わてかぁっ!?わては火事場どろ、あ……ん゛っう゛ん゛っ…メイド!メイドのチダコですぅ~」


ハイル

「何っ?…我が屋敷の新しいメイドなのか」


チダイ

「そ、そぅ!そうなんですぅ~ここにも!あ、そこにも!おホコリがおありましておございましたのでお金品をお見定めつつおホコリをおはらっておりましたのよ!おほほほほ」


ハイル

「金品?…だがそれは感心だ…しかしどうみても我が屋敷のメイドの恰好はしていないが?」


チダイ

「う!!!これは!?これは…い、今流行っているお盗賊スタイルでございますわぁおほほ嫌ですわぁおご主人様」


ハイル

「私はこの屋敷の主人ではない。その息子だ…」


チダイ

「あ~!!そう!!そうだと思ったのよ~私ったらついうっかり!!あ、あかんわ~そろそろお外のお空気をお吸わないといけないお発作がでてきましたわ~」


ハイル

「……貴公、泥棒か?···盗賊か?」


チダイ

「うはうっ!!?」


ハイル

「図星のようだな…」


チダイ

「チィッ…ばれたらしゃあない……けど?せやったらどないする言うねん」


ハイル

「……貴公に頼みがある」


チダイ

「な、なんや!?」


ハイル

「俺を盗んでくれ」


チダイ

「……え?」


ハイル

「だから…俺を盗んでくれ」


チダイ

「ごめん意味わからん」


ハイル

「ちゃんと共通語で喋っているんだがなぁ…」


チダイ

「いっやそういう意味やなくて」


ハイル

「※⁉◎◆∴□Σ」


チダイ

「何語やねんそれ!や、ちゃんと聞こえてますよぉ???けどな?意味わからんねん!何?俺を盗んでくれ~ってどういう意味ですか-?って言うとんねん」


ハイル

「なんだ聞こえていたのか、なら話は早い。準備してくる」


チダイ

「おいおいおいおいおい話を聞けぇて!?」



◆SE歩いて自室へと戻っていく


チダイ

「えぇ~?…………逃げよ。何か怖い」



◆SE走り去る




チダイ

「っし…ここまで来たら大丈夫やろ……しかし変なやつやったなぁ」


マイス

「チダイ!無事やったんか!?」


チダイ

「当たり前よ!この通りぴんっぴんしてるわぁ」


マイス

「で?どうやった?この屋敷」


チダイ

「すげぇ高級そうなもんいっっぱいあってん!」


マイス

「おぉ!?ほんで?手ぶらやん?なんで?」


チダイ

「恐ろしく怖い用心棒がおるんよここ」


マイス

「なんやて!?そ、そいつはどんなんや?」


チダイ

「痩せてて~」


マイス

「ぅんぅん」


チダイ

「目ぇ大きくてな~?」


マイス

「うわもぅその時点で恐ろしいやん」


チダイ

「んでめちゃくちゃ長身でな」


ハイル

「ふむふむ」


チダイ

「耳は意外ととんがっててさー」


マイス

「こんなのか?」


ハイル

「あぁ、これな」


チダイ

「そうそうそんなん」


マイス

「ほんで?他には?」


ハイル

「俺を盗んでくれ」


チダイ

「って言うねん~……………っでたぁぁぁぁ!!!!?」


マイス

「わぁぁぁぁぁっ!!!?」


ハイル

「そんな驚くことでもないだろ」


チダイ

「いや驚くっちゅぅねん!!!」


マイス

「どえらい荷物背負ってるけど…お前ほんまに用心棒なんか?」


ハイル

「用心棒?違う。あ、紹介が遅れたな…スタイメイシュ家の一人息子、ハイルと申す」


チダイ

「はぁこれはどうもご丁寧にどうもぉぉぉって逃げるぞぉマイスぅぅ!!!!!」


◆SE全力疾走


ハイル

「あ」


マイス

「お?ああ!!!」


◆SE全力疾走



チダイ

「はぁっ…はぁっ…ぅぅぉえ…ここまで来たら……大丈夫やろ」


マイス

「ぜぇぜぇ…結局アジトまで…ぜぇぜぇ…戻ってきてもぅたやん…あかん…息苦しいわ」


チダイ

「あ、お前…すまん、メイゼク病持ってんのに走らせて」


マイス

「へへ……いいってことよぉ…ぜぇ…ぜぇ」


メユナ

「お帰りぃ!おにいちゃ……って大丈夫なん!!?発作が出たん?」


マイス

「大丈夫や…すぐ治る…ぜぇぜぇ」


メユナ

「大丈夫ちゃうやん!!チー兄は何してたん!?お兄ちゃんはメイゼク病持ってるって言うてたよね!?なんでこんなこと…」


チダイ

「…すまん。今、薬作るから」


マイス

「俺が悪いんやでメユナ、チダイは…ぜぇぜぇ…悪あらへん」


メユナ

「……横になろ?ね?」


マイス

「……あぁ」


チダイ

「すぐ作るから。待ってろよ、マイス」


マイス

「いつもすまんなぁ…チダイ」



チダイN

マイスはメイゼク病という病にかかってた…ちょっとでも息が荒くなるようなことをすると息がしにくくなり全身に酸素が行き届けへんなる病気や。俺は毒薬を作るのも薬草を作るのにも長けてた。けどこの病気だけは治すことがでけへん…あるにはあるんやけど材料が貴重で高価すぎるんや…俺の材料…薬じゃぁ治されへんかった



チダイ

「くそっ……忘れてた…アホやな俺は」


ハイル

「いや、貴公は良い動きであったぞ」


チダイ

「………お前…こんなとこまで来よって。お前のせいやぞ?···何の用や」


ハイル

「だから何回も言ってるだろう…俺をぬす──」


チダイ

「意味のわからんこと言うなっ!!?はっきり言え!!!何の用や!?」


ハイル

「……すまん」


チダイ

「…いや…わかったらええんや。……盗みに入ったことは俺も悪い、謝る……けどな、俺らはこうでもせんと生きていけん。剣技もそない強くない、傭兵なんてもっての他や…だからこうやってギリギリの生活しとるんや……すまんかったなぁ」


ハイル

「いや……いいんだ…あんな屋敷」


チダイ

「訳ありやな……どういうことや?」


ハイル

「聞いてくれるか?……俺は、自由になりたいんだ。あの生活から抜け出したかった」


チダイ

「は?あんな屋敷住んどいて…三食しっかりでるやろ?何不自由なく暮らせとるはずやで…何が不満やねん」


ハイル

「俺は外に出たことがなかった…ずっと屋敷の中で育った……柵の向こう側はとても魅力的だった」


チダイ

「魅力的?この世界が?はっ!世間を知らなさすぎるでそれは。この世間はもっと残酷で惨たらしい···甘すぎるぞその考えわ」


ハイル

「わかっている…だが、それでもあの屋敷は俺にとっては窮屈だった。退屈という名の拷問···鳥籠の中の羽をもがれた小鳥なのだ」


チダイ

「そんならヒョイと出たらええんや、何を迷う必要があんねん」


ハイル

「しかしな…自分も臆病なのだ。外に出たい気持ちもあるが勇気も出ない…悩んでいた、葛藤していたんだ。ずっと」


チダイ

「そん中俺が来たっちゅうことやな?んで盗んでくれと」


ハイル

「あぁ…誰かに連れて行ってほしかった」


チダイ

「あまあまやな」


ハイル

「ん?」


チダイ

「あまちゃんやぁ言うとんねん……まぁあの調子やったら?あの辺りは燃え続けて終わりやろぅから逃げて正解やろうけどなぁ?命拾いしたなぁ?」


ハイル

「あぁ……貴公が来てくれたことに何か、運命を感じてな」


チダイ

「運命っ?そりゃ何ともきちゃない幸運の女神だこって!…まぁ、好きにしたらええわ。野垂れ死なんようになぁ?」


ハイル

「かたじけない」


チダイ

「都合悪いとこ聞いてへんし便利な耳やのぅ。···よし、できた」


ハイル

「む、それは薬か?貴公どこか悪いのか?」


チダイ

「俺ちゃうわ、ついてきぃ、紹介するわ」


ハイル

「うむ」


◆ドア開ける


チダイ

「メユナ、薬できたで」


メユナ

「チー兄ぃ…どうしよう」


チダイ

「なんや…どうした?」


メユナ

「熱が…下がらへん…薬で治るんかなぁ?」


チダイ

「治るよ、いや治す。とりあえずこれ飲ませて」


メユナ

「うん…あ、そちらの方は?」


ハイル

「ハイルと申す、今後ともよろしくお願いいたします」


メユナ

「あ、はい…よろしくお願いします」


チダイ

「マイス…いつかめっちゃ効く薬作ったるからな?」


マイス

「あぁ…すまんなぁチダイ…」


チダイ

「任せろ」


ハイル

「健康ですまない」


マイス

「なんであんたが謝るんや···俺が弱いんが悪い」


チダイ

「健康で謝るやつ初めて見たわ。おっさん、行くで。寝かせたろ」


ハイル

「おっさん?」


チダイ

「あんたのことや、明らか歳上やろ」


ハイル

「二十になったばかりだが」


マイス

「まさかの歳下っ」


チダイ

「明らか父親っ」


ハイル

「外に出よう」


チダイ

「あ、はい」


◆SEドア開閉


チダイ

「そして自己中っ······マイス、明日また来るわ」


マイス

「あぁ、いつも···すまんなぁ、チダイ」


チダイ

「えぇっちゅうてんのに···まっ!お前がくたばったらぁ?メユナちゃんはわてが好きにするわな?!」


マイス

「······そうしてくれると助かる」


チダイ

「いや冗談やん···やめてや、悲しくなるやん。······お前の病は治る、俺が治すから大丈夫や」


マイス

「ほんま···ありがとうな」


チダイ

「もぅ寝ろ、ほなな」


◆SEドア開閉


チダイN

あいつを治してやりたい···治して、いつまでもこの生活を·········はぁ、甘いのはオレかもしれんなぁ


メユナ

「お兄ちゃんどうやった?もぅ今日は行かへん?」


チダイ

「メユナか···マイスは寝たよ……今日も行くわ。今ある材料だけやったら一時しのぎの薬しか作られへん。せやったらいつかはほんまに治せる薬作らんとあかんからな。善は急げや」


ハイル

「そうなのか…私も手伝おう。剣と体力には自信がある」


チダイ

「おう、助かる。今度の戦争はでかそうやからな…いただくなら今かもしれん」


メユナ

「あんたしか頼られへん···お願いや、お兄ちゃんを治して···辛そうにしてるお兄ちゃんを見てられへん」


ハイル

「任せておけ」


チダイ

「お前に頼ってへんわ!」


メユナ

「チー兄ぃも、お願いね?」


チダイ

「待って?俺がついでなん?」



●間3拍


チダイN

結局この日はあかんかった。高価な薬の材料はそうそう手に入らんのは知ってたが貴族街の薬屋にも無いとは思わなんだ…急ごしらえで作った薬はただ一時的に発作を治めるだけ、俺はメイゼク病をなんとかして治してやりたかった



マイス

「チダイ、こないだはほんまありがとう。おかげで···この通りや!治った!···また助けられたなぁ」


チダイ

「お?そんなん気にすんな気にすんな!あれぐらいいつでもつくれんねんから。あと治った訳やあらへんからな?一時的に収まっとるだけや」


マイス

「ほんまいつも助けられてばっかりやわ……なぁチダイ」


チダイ

「何や?」


マイス

「こないだも言うたけど···俺にもしもの事があったら…メユナを頼む」


チダイ

「縁起悪いこと言うなて…流石にボケられん」


マイス

「真面目に話しとるんや」


チダイ

「真面目に話されても俺には聞けんやつやなそれは」


マイス

「頼む、心の片隅にでも止めといてくれ」


チダイ

「…」


メユナ

「ご飯できたよ~」


ハイル

「いただこう」


チダイ

「いやお前おったんかい」



チダイN

変なおっさんも仲間に入り幸せな時が続いた、荒れ果てた街を漁りに行ったり、黒ずくめの暴風いう変なおっさんに追いかけられたり···毎日がめちゃくちゃやった。けど、今思えばこの時が1番幸せやったんかもしれへん···あいつらと隠居暮らししてたらオレはずっと今も幸せやったやろうな



●間5拍



チダイ

「行くで」


マイス・ハイル

「あぁ」



◆SE大扉閉まる



チダイN

オレ達はリヴィア帝国の最大拠点ルエホジアに潜入した。ここに大量の薬品と薬草が運ばれたとの噂が流れたからや。もうすぐ大戦争が始まる、補給物資も半端ない量のハズやからや



チダイ

「すまんなぁいきなりこないな事付き合わせて」


マイス

「ほんまや、隠密行動やから見つかったらしまいやねんぞ?」


ハイル

「いや、寧ろ感謝している…全てが初体験で心が高ぶっている。しかも直接この手で人を救うことができる。3人居た方が早く終わるしメユナ殿のところまですぐに帰れる」


チダイ

「そらええんやけどさ···おっさんほんまに大丈夫か?命かかっとるんやで?」


ハイル

「任せろ、囮や盾ぐらいにはなる」


マイス

「本気···みたいやな······2人とも、ほんまありがとうな」


チダイN

俺は心の中でいざという時はおっさんを囮にして逃げれると思っとった…ほんまこん時にはもう根っこまで性格腐っとってんなぁオレは


敵国の避難民が国境沿いからルエホジアに逃げてきている。だがルエホジアは門を開けない。この大きな戦争はリヴィア側が引き起こした戦争。どんな手でも勝とうとするリヴィアが、敵国の避難民を受け入れる振りをして集合させ、敵国の民で囲われ護られる要塞。人質でできた壁。人の盾を作ろうとしていた。


マイス

「相変わらず···ゲスいやつらやで。こんなんやから俺らみたいなんが増えるんや」


チダイ

「死にたくないんや、皆。マイス···チャンスは今しか無い」


マイス

「やな、後ろいけるか?ハイル」


ハイル

「大丈夫だ」


チダイ

「見つかったら終わりや。固まって逃げてもあかん」


マイス

「見つかったら散ってまたここで合流やな」


ハイル

「あぁ」


チダイ

「時間が惜しい、いくで」


マイス

「いつでも」


チダイN

監視塔からの死角と巡回兵から逃げながら俺たちは何とか薬品貯蔵庫にたどり着いた


マイス

「あったでチダイ!ここや」


チダイ

「おう、開けれそうか?」


マイス

「やってみる···見張り頼むで2人とも」


ハイル

「もちろんや」


チダイ

「······待って?今カンサ語つこた?」


マイス

「っぷぷ···つこてたつこてた···くくっ···あんま笑かすな鍵開けられへんやろ!」


ハイル

「どや?おかしいか?」


チダイ

「違和感の塊やわ」


ハイル

「やめておく···少しでもお前達の気が紛れればと思ってな」


マイス

「······ありがとうな··お前の心遣いで·燃えてきたわ。超集中」


◆SEピッキング音


チダイ

「まさかおっさんに気ぃ使われるとはな···すまんな」


ハイル

「いいってことよ」


チダイ

「何か腹立つ」


◆SE鍵開く


マイス

「きた!」


チダイ

「さすがや早い!中も用心して入れよ」


マイス

「おう」


ハイル

「外の見張りは任せろ、お前達は早く薬を探せ」


チダイ

「助かるでおっさん」


ハイル

「そろそろおっさんはやめていただきたい」


チダイ

「はいはい」


マイス

「開けるぞ」


◆SE扉開く


チダイ

「めちゃくちゃあるやんけ···こん中から探すんかぁ···」


マイス

「急ごう」


チダイN

俺たちは必死に探した、時間をかなりかけてしまったんや。ドアの向こうからハイルが問いかけてくる


ハイル

「まだなのか?!」


チダイ

「そないせかすな!こっちかて必死や!」


ハイル

「急げ!城内が騒がしくなってきた」


マイス

「侵入がバレたか、はたまた出陣か···はよせなここにも来るなぁ」


チダイ

「っ!?これや!あったぞお前ら!!リカーナ草!俺なら調合できる。治るぞお前の病気!」


マイス

「おおお!ありがとうなチダイ!よし、早速逃げよう!」


チダイ

「ちょっと待ってや!持てるだけ持ちたい···貴重なもんやから売ったら高ぅ売れる!」


マイス

「せやな!高ぅ売れたらメユナにも美味いもんめちゃくちゃ食わせれんな?!俺も持つ!」


ハイル

「早くしろ!時間が無い!」


チダイ

「っし!入れるだけ入れた、待たせたハイル」


マイス

「いくらになるんやろなこれ···わくわくしてきたわ」


ハイル

「走るぞ、ローブを被れ」


◆SEローブを被る→走る


マイス

「あかん、入ってきたとこも兵だらけや!」


チダイ

「逃走ルートは何個もある、安心せえ」


ハイル

「さすがやわ」


マイス

「くくっ···まじでこいつこんな時に、ごほっ」


チダイ

「おもろいよおっさん」


マイス

「ごほっごほっ···はぁはぁっ」


チダイ

「大丈夫なんか?」


マイス

「···ん?あぁ···大丈夫や······げほっげほっ」


チダイ

「あかん、ハイル!隠れれるとこないか探してくれ、休まさんとあかん」


ハイル

「む、承知した」


マイス

「いける···大丈夫やチダイ···はよ逃げんと」


チダイ

「あかん、休むぞ。ハイル!」


ハイル

「ここは大丈夫そうだ!早くここに」


チダイ

「助かる!行くぞマイス、掴まれ」


マイス

「···あぁ」


チダイN

水や酒を保管しておく部屋だろうか···俺らはそこに身を隠した


ハイル

「外の様子は任せろ、お前はマイスを」


チダイ

「わかっとる···マイス、薬や。こんな事もあろうかと常備しとるんやで俺は」


マイス

「ほんま···天才やな···いや、神やな」


チダイ

「神なんかより天才のがええわ、俺は人でえぇ。はよ飲め」


マイス

「あぁ···んぐっ」


チダイ

「ほら、水や」


マイス

「ん、んぐっんくっ」


ハイル

「外が騒がしい···どうやら盗みに入ったのがバレたみたいだ」


チダイ

「まだここから動かれへん···こんなけ樽があるんや、大丈夫や」


ハイル

「···だといいが」


マイス

「すまんな···2人とも······やっぱり、オレはあかんな」


チダイ

「喋らんでええからしっかり呼吸しろて」


マイス

「······ここから出れたら···こいつを売り捌いて···俺とチダイとおっさんと、メユナで···隠居や」


チダイ

「···せやな」


マイス

「ほんで···幸せに暮らすんや」


チダイ

「盗賊もこれで終いやな」


マイス

「···あぁ······なぁ、チダイ。俺の願いは──」


ハイル

「まずい!この部屋に数人来るぞ!?」


チダイ

「なんやて!?やばいな···片っ端から調べとる」


マイス

「······チダイ、ハイル」


ハイル

「どうした?」


マイス

「俺を置いていけ、お前らは逃げろ」


チダイ

「それはかなわんお願いや」


ハイル

「馬鹿な事を言う···帰るんだマイス」


マイス

「でも···このままやったら俺ら全員······」


ハイル

「チダイ、マイス···逃げてくれ。必ず」


チダイ

「は?」


マイス

「お前···まさか」


ハイル

「そのまさかだ···今の内に逃げろ二人とも。············本当に楽しかった、ありがとう。チダイ、マイス!うぉぉぉぉおおおお!!!!!」


チダイ

「待てっ!!!ハイル!!!!」


◆SE ドア開き走りさる


マイス

「あいつ···囮に」


チダイ

「······逃げるぞマイス···今やったらさっきのとこから出れるハズや」


マイス

「お前···見捨てんのか?あいつを···」


チダイ

「あいつの思いを無駄にすんな。おぶるから首に掴まれ」


マイス

「······すまん」


チダイN

いたぞ逃がすな···捕らえろ···追い込め···色んな声が遠くから聴こえてくる。おっさんが必死に、命を賭けて囮になってくれていた



マイス

「見えた!出口や!見張りもおらん」


チダイ

「これで逃げれるな、ギリギリまで待とう···アイツを」





チダイN

いくら待てども···ハイルは来んかった




マイス

「······何が本当に楽しかったや···何がありがとうや···お前に···何もできてへんやないか俺は」


チダイ

「···せやな」


マイス

「ハイル···すまん···すまん」


チダイ

「行こう、帰るで。メユナも心配や」


マイス

「······あぁ」



チダイN

俺らはルエホジアから出て街の方へ歩き出した。マイスは俺の背中ですすり泣いていた···ハイル······ほんまにすまんかった。




そう思った刹那だった




◆SE 矢が刺さる




チダイN

ドンッ···と。背中に衝撃が走った



マイス

「ぅっ!!?」


チダイ

「っ!!?マイス!?」


マイス

「っ···逃げろチダイッ!!!追ってや!追っ手がかかっとる」


チダイN

後ろを振り返ると弓を構えてこちらを狙っている兵が3人居た


チダイ

「くっそっ!!走るぞ!!揺れるからしっかり捕まってろよっ!!?」


マイス

「あぁ···大丈夫や」


◆SE走る


チダイN

俺はひたすら走った······岩や木に隠れながらも必死に走った。マイスを担ぎ荷物もあったがしんどいとは微塵も思わんかった。途中何度もマイスを落としそうになった、しっかりオレを持ってくれんかった


マイス

「えぇ感じや···チダイ」


チダイ

「はぁ、はぁ···何がや」


マイス

「撒けとるよ、もぅ···かなり走っとる」


チダイ

「ほんまか···よかった···はぁぁ···どうなるか思た」


マイス

「このまま聞いてんか」


チダイ

「お?おう···いやしかしどっと疲れたわぁ」


マイス

「······お前みたいになりたかった」


チダイ

「お?俺様に憧れるとわぁ、さすが見る目があるやないかっ!」


マイス

「真面目に聞けて···メユナを頼む、幸せにしてやってくれ、お前なら大丈夫や」


チダイ

「任せろぉぉ?わいの妾、第一号にしたる!」


マイス

「フフッ、そんで···かまへん······ハイルの言うこと···今更···わかった気がする···わ···」


チダイ

「そろそろ降ろすで?疲れたやろマイス」


マイス

「今まで···ありがとう······な、チダイ······めちゃくちゃ······楽しかった」


チダイ

「何泣いとんねん、横んなって寝とけて······っ!??」




チダイN

マイスの背中に·········矢が刺さっていた······おびただしい量の血が背中に、脚に···染み渡っていた······


マイスは······冷たくなっていた


俺は泣き、喚き、地面を殴り続けた、血がふき出ようが骨が砕けようが、一心不乱に地面を殴りつけた


俺の大事な物が音を立てて崩れていく、壊されていく。現実が壊していく···俺の世界を


しばらく放心状態になっていた俺はマイスを埋め、その場に墓を作った。手向けの花は病気が治るように···盗んだリカーナ草を大量に置いた


チダイ

「······これでええやろ······マイス、俺はいつかお前みたいなやつがおらんなるような世界を作る男になる······メユナは俺が幸せにするからな、安心せいよ」


チダイN

俺はまた走り出した、メユナが待つ隠れ家に···けどまだやった。


壊されていく現実は追い打ちをかけてきた



チダイ

「······何や···どういう事やこれは!?メユナ!!メユナぁ!!」


メユナ

「チダ···イ···お兄ちゃん?」


チダイ

「っ!??どこや···どこや!!?メユナ!!!」



メユナ

「ここ···やよ···無事···やったんやね···良かった」


チダイ

「っ!!?」


チダイN

火と瓦礫の下敷きになっていたメユナを見つけた···メユナは腰から下が潰れて、胴と繋がっているかさえわからん状態になっていた


メユナ

「お兄ちゃ···んは?ハイルさんは?」


チダイN

メユナはもう助からへん、一目でわかる···瓦礫をどかせたとしても血を止める事がでけへんやろう······俺はもう···涙すら出んくなってた


メユナ

「どうし···たん?お兄ちゃんは───」


チダイ

「おお!ピンッピンしとるで!もうすぐ飛び跳ねながら来ると思うんやけどなぁーおっかしいなー」


メユナ

「······嘘」


チダイ

「へ?」


メユナ

「嘘が···下手ね······でも···ありがとうチダイ···私······楽しかったよ·····」


チダイ

「なに······言うてんねん···何もできてへん······俺は···俺は!!!」


メユナ

「お兄···ちゃん···よかったね······チー兄が···おって」


チダイ

「っ······ぐぅっ···うっ」


メユナ

「うん···おやすみ······お兄ちゃん···また···明日やね···明日······また·········うちと···お兄ちゃんと···チー兄で······おっさんも······ありがとう······おやすみ」


チダイN

そういうとメユナは···眠るように逝った······燃えた瓦礫がメユナに落ち、みるみる燃えていった


チダイ

「·········何や······結局······1人かい。何や······お前ら······揃いも揃ってありがとうって······アホやで···ほんま······何やねん······何やねん!!!」


チダイN

俺は神様に遊ばれとった、ただの道化師やった。


そんな事があったんや···こんな事話すんお前だけやで···なぁ?


なぁ?ちゃんと聞いとるか?ユクロはん





































































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