29 短歌
なんてことないってわらうときぼくは仮面みたいな貌していないか
<読み>
なんてこと ないってわらう ときぼくは かめんみたいな かおしていないか
以前にも書きましたが、喜びや悲しみを素直に吐き出せるのが、短歌の魅力なのではと考えています。(もちろんそれだけじゃありません、が……俳句や他の詩と異なる大きなポイントではなかろうか、と)
自分の弱いところを素直にさらけ出せる、ということでもあります。
例えば自由詩でも、それは可能なのかもしれません。
でも文字数も形式も自由な詩で、滔々と弱音を吐き出すのはしつこいような気がして。これはもしかしたら私だけの感じ方で、そんな風に感じるところにこそ、私が詩人でも正直者でもないことが明かされているのかも、、と案じたりもします。
日常生活でもその性質は発揮されて――
心に喜怒哀楽を生じてもむやみと表には出さない、それを良しとする傾向があるようです。
とは云え胸の裡をすっかり隠しきれるほど心が強いわけでもなく、無理に笑うときの顔はぎこちなく固まってしまってはいないか、と。
世間にはこんな感じ方、処し方をする人がけっこういるような気がします。
傷ついた心を人に見せまいと、仮面でかくす。仮面は、矜持であり、弱さであり、欺瞞でもあるのだろうと思います。その能面のような表情にこそ、奥にかくされている真情を読みとれることもあるのではなかろうか、と思うわけです。
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