28 俳句(冬)



 雪の深き知る夜やえだの折らる聲


<読み>

ゆきのふかき しるよやえだの おらるこゑ




新年、おめでとうございます。


地域によっては大雪のなか新年を迎えられたかもしれませんね。

夜、雪はしずかに世界を侵し、朝を迎えて初めてそれを知ることもあるでしょう。とつぜん枝の折れる音が静寂しじまを破って、ああ、いつのまにそれほどの大雪が降っていたのかと知る、そんな夜の情景を詠みました。

豪雪地帯のスキー場では、めていた車が次の日帰るときには完全に雪に埋まっていることも。雪の重みで木の枝が折れるのも、フィクションではありません。


とは云いながら、実はこの句は他の人の詩から着想を得たものです。東洋の詩歌の伝統ではそれは剽窃ではなく、先行詩への敬慕を示すものですので、これを発表することに後ろめたさはありませんが……元ネタがあることを明示するのがフェアだと思いますので、一応ご報告を。


元ネタは、白楽天の「夜の雪」。(読み下しは、我流なのでちょっと癖があります)


 已訝衾枕冷  すでに訝しむ、衾枕きんしん(夜着や枕)の冷たきを

 復見窻戸明  た見る、窻戸そうこ(窓)の明るきを

 夜深知雪重  夜深きに知る、雪の重きを

 時聞折竹聲  時に聞く、折竹の聲


オリジナルでは、雪を知るのは窓の外の雪明りに気づいたためですが、私の句では、枝の折れる音で気づいたことにしています。ほかにも、「深い」を夜ではなく大雪っぷりを表すために転用したり、多少の換骨奪胎は当然あるわけで、先行詩をどのように受容し・変容させるかに、それぞれの個性が表れるのだと思います。


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