11 短歌


秋になりました。

まだ暑さが残るとはいえ、日一日と秋の気配が感じられます。

過ごしやすくなるなと喜ばれる方が大半かと思いますが、夏好きの私としては寂しさを感じたりもするのです。

草木は夏と秋と、いずれを好ましいと思うのか。無言をつらぬく彼らがあくまで答えないなら、勝手に想像するまでです。




 気おとろえ長月のすゑ嵐を得

     どうぞ罰をとえだ葉ふるわせ



<読み>

きおとろえ ながつきのすゑ あらしをえ どうぞばつをと えだはふるわせ




長月は、いまでは秋の始まりですが、旧暦では秋の終わりでした。気が衰えるのは無理からぬところかも。それは植物なのか、人間なのか、はたまた――自身のことなのか。


この歌は現代短歌のつもりで、基本は現代仮名遣いです。古典的仮名遣いにしたらたぶんこんな感じ。


 気おとろへ長月のすゑ嵐を得

     だうぞ罰をとえだ葉ふるはせ


これはこれでアリかと思いますが、読みにくいのと、耽美に過ぎるような気がしたので――まるで頃は大正、うらわかいお女中さんが、ご主人さまの折檻を受けようとするかのような――、やっぱりちがう、と。


本当に詠みたかった情景は、嵐の前触れとなる風にふるえる葉が不安そうで、まるで罪の意識におののいているような、それとももはや従容と罰を受けようとしているのか……というような、そんな情景でした。

此の世に生きとし生けるもの、すべからく罪なき者はなし――とすれば、枝葉の天におそれる罪は、なんだったんでしょうね。



現代仮名遣いにすると、耽美な大正ロマンに代わって、秋の草木の物語が皆さんの脳裏に浮かんだでしょうか。

「すゑ」だけワンポイントで残したのは、ちょっとだけ嵐の不穏な雰囲気を出そうかな、という出来心です。


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