5 長歌(+反歌)


まずお詫びしておきます。今回は、遊びになってしまいました。いや、詩はそもそも遊びだっていいと思うんですけどね。その……有り体にいうと、出来がいまいち。


短歌を詠むなら、長歌も詠まねば――と謎の使命感でつくったものです。本来、ひと様にお見せするクオリティではありません。

にもかかわらず載せてしまったのは、長歌も入れたらバリエーションが増えていいかな……というふしだらな考えと、私の描いたキャラの一人を謳ったものなので、懐かしんでいただける方もいらっしゃるかな(歌の出来栄えなんかは度外視で)、と。



(長歌)

名にし負う 銀の髪なる 我妹子わぎもこの 肌蔽へるや 射干玉ぬばたまの 黒き衣の 絹薄み こぼれる肌の 白銀しろがねの 頸に掛けたる 冴やけきの 金剛石は 冬の野の ならべる丘に 初雪の 純白ましろく眩し 海原わたのはら 翠のぎょくは 白雲の 弓手ゆんでの先の 白魚の 季指こゆび飾るる 曙の 陽にも比べむ それをしも などか喩へむ 花殷賑はなざかり 我が娘子おとめごの 咲きこぼるれば


<現代語訳>

その名も高き銀髪の愛し子の、着込んだ黒衣が薄いので肌がこぼれてしまって、白銀のような頸にかかる冴え冴えしたダイヤモンドは、冬の野の双丘に初雪がかかったような純白の胸に眩しい。海のような翠のエメラルドは、白い左手の先、白魚の如き小指を飾って、曙光にも比すべき。それら宝石さえもどうしてあの子に喩えられよう、愛しいあの子は花を盛りと笑顔がこぼれるばかりなのだから。



(反歌)

 うらまずや 花の盛りの 我妹子の 咲きてこぼれて 散るがさだめを


<現代語訳>

恨まずにいられようか、愛しいあの子が娘ざかりに、花のように絶頂期に、咲いてこぼれて、命を散らす運命にあるとは。




ご存知の方も多いでしょうが、長歌は、五・七・五・七・……と何度か繰り返して、さいごに五・七・七で締める形式の歌です。通常、反歌(長歌の要旨や結末を三十一文字でまとめた歌)が附いてきます。

万葉集にはよく出てきます。同じ音を繰り返してリズムをつくったり、やたら枕詞や序詞を多用したり、とやや古い印象ですが、その古い感じが癖になったりもします。


ここでは「の」を多用して、一定のリズムを作ろうと試しました。「の」の連続に慣れたところで「の」以外の句を入れて、調べを破る……とできれば面白いと思って。むろん、万葉歌人のようにうまくはいきません。。。



長歌は文字が多い分、叙述的、物語的になるように思います。

どの物語のだれを謳ったものか、気づかれたでしょうか。


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