第3話 青春ロマンチカ
空は絵の具を滲ませたかのように藍色と紫と橙色が入り混じる。園内にはポツポツと明かりが灯り出していた。そろそろメインイベントのパレードの時間が近いこともあり、来園者たちは今日の思い出を語り合いながらメインストリートへと集まっていく。
メインストリートの周りにはいまかいまかとパレードの始まりを待ちわびる来園者たちで賑わっている。それと反比例するようにメインストリートから外れた場所はまるで魔法が解けたかのように静かになっていた。
そんな園内の隅っこ、小高い丘のようなエリアから私と
もちろん、私たちにとってはそれが都合よかったからなんだけど。
「もうそろそろ始まるかなー」
手すりに寄りかかって一際明るいその場所を見つめる。
「なぁ、集まれってメッセージもう届いてただろ? いいのか、行かなくて」
「うん。みんなには悪いけど、せっかくなんだから
「見えないけどな」
「ほんとに昔からお前はマイペースだよなぁ……俺が付いていてやらなきゃ、どこで何をするか分かったもんじゃない」
「ふふふ、ご苦労お掛けしまして……」
「……ま、人見知りだったお前にも、なんとか友達ができて良かったよ。小さい頃はほとんど一人で遊んでたもんな。あいつらと一緒に笑ってる
ああ、やっぱり
幼馴染というかパートナーと言うか……とにかくずっとこんな関係でいられたらなって思っていた。けれど、そうはならなかった。友情はいつのまにか愛情に変化していた。
けれど、私は分かっている。この恋は決して誰かに知られてはいけない。そして、決して叶う事はないのだと。
ふいにスマホに着信が入り、お気に入りの曲のフレーズが流れる。
「あいつら心配してるぜ? でてやれよ」
「あ!
「えっと……ごめんね
「もしかして迷っちゃった? やっぱこういう所で一人で動き回るのはダメだったか~~。 なんか近くに目印になるようなのある? 迎えに行くけど」
「ううん、大丈夫だよ
そう言って通話を切る。
なんだか途端に哀しくなって、なぜだか不安で、
分かっていた。
大悟が 私の イマジナリーフレンドだという現実に
現実に
私の夢……妄想である存在に私は恋をしてしまった。決して報われない恋なのに
ふいに空に大輪の花が咲き、賑やかな音が私の周囲を吹き抜けてく。華々しい打ち上げ花火が夜空を彩っている。ついにパレードが始まったのだろう。呆然とそれを見つめていると、ふいに背後から抱きしめられた気がした。
「仕方ない奴だな。せっかくのイベントなんだからそんな顔するなよ。俺はずっと傍にいるからさ」
「……うん」
目尻に浮かんだ涙を拭って、カラフルなキャンバスのような空を見上げる。
私はこれからも、この誰にも言えない恋を胸に抱えて生きていくのだ。
青春ロマンチカ 八雲 鏡華 @kaimeido
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