嫌いな奴にトラウマを植え付けて自殺する方法

 

第1話

 私は、駅のホームに立っていた。激しい音を立て、電車が近づいてくる。「よしっ今だ」そう思い、電車に飛び込もうとした瞬間、突然後ろから手を引かれた。


「大丈夫?」


 振り向くと、そこには、20代くらいの茶髪でショートカットの女性が立っていた。


「何か辛いことでもあったの?」


 女性は心配そうに私を見つめていた。その声は酷く優しい。私は今にも泣き出しそうだったが、涙を堪え、悩みを打ち明けた。


「実は私、学校でいじめられてて……」


「そうなんだ。辛かったね」


 女性はそう言うと、私を抱きしめ、頭を撫でた。


「もう大丈夫?死にたくなくなった?」


「まだ少しだけ死にたいです」


「そっか。それじゃあ、もっといい自殺方法があるんだけど、試してみない?」


 そう言うと、女は私を抱きしめるのをやめ、私の顔をじっと見つめた。その顔は、とても真面目そうでさっきの発言をしたようには思えなかった。だから、私は聞き返した。


「あの、よく聞こえなかったのでもう一度お願いします」


「じゃあ、もう一回言うね。もっといい自殺方法があるんだけど、試してみない?」


 私は愕然とした。そして、思わずこう呟いた。


「良い人だと思ってたのに、最低」


「最低?私のこと?」


「そうよ、あなたのこと。人に自殺を勧めるなんて人間のクズがやることよ」


「でも、せっかく慰めてあげたのに、君がまだ死にたいって言うから、私は違う自殺方法を勧めたまでだよ。私、何か間違ったこと言ってる?」


「間違ってる。普通の人は、自殺を止めたあとに別の自殺方法を勧めたりしない」


「そうは言っても、君はまだ死にたいんでしょ。だったら、私のおすすめの自殺方法で自殺すればいい。これでWin-Winじゃん」


「何がWin-Winよ。ふざけないで」


「でも、残念だなぁ。この方法で自殺すれば、いじめっ子にトラウマを残すことが出来るのに」


「……どんな方法?」


「それはね、……ちょっとここ人が多いから、私の家で教えてあげるよ」


 







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嫌いな奴にトラウマを植え付けて自殺する方法   @hanashiro_himeka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ