第2話

アサヒはそれから何日か続けて講習を受けた。


しかし授業の内容は自分で勉強した箇所がほどんどで、すでに知っているものばかりだったためすぐに飽き、ただ適当に授業を聞き流しながらノートにマンガを描いて過ごすようになった。


リョータと一緒に通学したり、授業に参加したりするのは楽しかったが、今日はそのリョータが風邪をひいて休んでいる。ひとりで登校した朝、強すぎる冷房があまり当たらない暖かい席から外を眺めていると、リョータの友人のひとりが声をかけてきた。


「おっすコトヒラ。あれ? 今日お前ひとり? リョータ休みなの? 何で?」


その問いかけにアサヒが答える前に、背後から声が飛んできた。


「どーせアイツのことだからゲームし過ぎて寝坊からのサボりとみた!」

「だよなー、昨日も寝不足って言ってたし違いねえな」


アサヒに声をかけてきた男子はそう言うと、数人で「ぎゃはははははは」と笑いあった。

その後、休み時間にリョータの友達グループに廊下で話しかけられたと思ったら、返事をする前に嵐のように笑いながら教室へ去ってしまった。


リョータ本当に風邪なんだけどな、アサヒは思ったが皆そんなことはどうでも良いみたいだった。


次の授業が始まる前にいつもの席から少し観察していると、彼らは女の子と海に行く話、女の子との花火大会の話などで大いに盛り上がっている。


好きな女の子に告白をするので何とか花火大会に誘いたいのだが、どうしたら良いかという話が聞こえてきて、アサヒは自分もぜひその会話に参加したいと思った。


けど、突然おれが行っても変な雰囲気になるよな…と考えなおし、アサヒは机に伏せてハアとため息をつく。


羨ましいけど、おれにはリョータの友達は住む世界が違いすぎるし付いていけそうもないと思うと、寂しくて悲しい。

窓から差す日の温もりが暖かくて少し鼻の奥がツンとした。


「アサヒー、今日も一緒に座らねえの?」


「あ、うん。ごめん、ここ寒くないから、ここがイイ」


風邪を完璧に直し元気に講習に出てきたリョータは、一番後ろの離れた席に一人で座っているアサヒに声をかけた。


「…ふーん、そっか。まぁお前聞いてなくても勉強できるもんな」


そう言うとリョータはすぐに他の友達がいる席へと戻っていき、そのあとはもうこちらに注意を払うことはなかった。初日からずっとリョータと彼の友達グループの会話に入ることができず、つい離れてお気に入りの窓際席に一人で座っていたら、とうとうさっきの台詞を言われた。


何度誘っても来ない彼にリョータは呆れたのだろう。

たまにお前と話すだけでも楽しいんだけど、気を使わせてるよな。

ごめんねリョータ。


本を開いて読む姿勢のまま、アサヒは心の中で謝った。

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