陰口

 彼女との結婚は刻々と迫ってくる。バーンズ横井両家は結婚などの相談で結構集まるようになった。

 これは、縁談とは言わないのだろうが・・・・・、やはり両家の仲は深まっていくばかりで、何か少し怖かった。


 そんなことの大きな例がある。

 昨日のこと。

 両家そろって酒をガボガボ飲んでいた時のことだ。

 社長がすっかり酔っぱらって、顔を真っ赤にしてリアンの父親に言ったのだ。

「なあデヴィッドさん。うちのオリビアにはね、すごい秘密があるんだよ。門外不出の秘密だが、オリビアの結婚相手となれば教えなければならないのでな。ガハハハハ」

「そうですか~。それは身内として教えてもらわないわけにはいきませんなぁ。何なのですか・・・・・」

 ヤバい、そう思った時にすでにオリビアは動いていた。

「だぁぁぁぁぁめぇぇぇぇぇ!!!!」

 オリビアは社長に飛びかかって、頬を平手打ちした。

「ぐはっ」

 社長は、一撃で伸びてしまった。

 そして、酔った勢いでそのまま寝てしまったのだ。

(うわあ、アンドロイドの力はやっぱり強いんだろうなぁ)


 この日は、思ったより重い社長をベッドに運ぶのにとても苦労して、ヘトヘトデすぐに寝てしまった。

 その次の日起きてから、リアンは驚くような光景を目にした。

「・・・・・でだよ。義父の頼みだ。君は何の秘密を持っているんだい?」

 父親のデヴィッド・L・バーンズが驚くような質問をしていた。

「そんなこと言ったって、教えられないことは教えられません」

「そんな、もったいぶらずに~」

 そんな時に、彼女はポケットから黒いものを取り出す。

 そして、謎の呪文を唱えると、デヴィッドは気絶してしまった。

「何やってるんだオリビア。大体わかったが何をしたんだ・・・・・ああ」

 昨日みたいに平手打ちを食らわせ、父を殺したんじゃないかと思って心配したが、意味が分かった。

「ほら、これ。昨日小車に食らわせた武器と言えば?」

「竹ぼうきだな。ビックリした」

「あなたのパパに私の大切な秘密を言わないように魔法をかけただけ」

 ――ははは、それでも十分重大だが大丈夫なのか?


 社長の休みの期間が終わってしまったから、オリビアも出社することになった。

 その間、俺は観光をしていた。

 そして、お疲れ様の気持ちを伝えたくって、夕食を作っていた。

「あんたが料理を作るっていうなんて」

 母親はビックリしていたが、理由を言うと納得して料理を教えてくれた。

 今日のメニューはステーキハウスにあるような円柱状のハンバーグだ。オリビアの母親に許可は取ってあるから、高級な牛肉を使うことができたが、玉ねぎのみじん切りがとても雑になってしまった。

 そして、美味しそうなサラダを作り、パンにおいしそうなジャムをかけて、スープを作る。

 そして、出来た。

「美味しそうですね!」

 そう言われて、リアンは少し照れる。

 ――まあ、ほとんど母さんが作ったんだけどね。

 まあ、これなら大丈夫だろう。


 そう思って構えていると、ちゃんとオリビアは帰ってきた。

 ――あ? 言ってた時刻より早くないか。

 気のせいかと思ったが、オリビアはリアンを目の前にいきなり泣き始めた。

「しゃ、しゃ、社員にいじめられた」

「は? なぜだ。社長の娘をだれが」

 大きい部の部長とかの権力者が。

 オリビアの話によると、彼女がアンドロイドだとか魔法が使えるとか嘘をついている。次期社長には全くふさわしくない。子供みたいなことを言っているバカ・・・・・。

 そんな“陰口”を言われたらしい。

「でもね、一人だけこんなこと言ってきたやつがいるの。経理部長のあずまが言ってきた。・・・・・『オリビア様、魔法を持ってるんでしょう? 社員に白状すればどうですか。このまま言われっぱなしは嫌でしょう』ってさ」

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