子供

 ホテルから出た二人は、とりあえず家に帰った。社長の方の家。そこで、社長がいたからこっそり聞いてみたのだ。

「ねえ、オリビアの秘密って知ってます?」

「ん? どの秘密?」

「全部」

「例えば?」

「ええと・・・・・魔法が使えるとか」

「はぁ? 魔法? どういうことよ。・・・・・ああ、そういうこと。確かに、人の笑顔を惹きつける魔法はヤバい。っていう解釈でいいかい?」

「ええと、はい」

 マジか。知らないのか、魔法のこと。まあ、そういう解釈もアリだ。

「他には・・・・・」

「さては、聞いたんだな?」

「・・・・・ええ」

「アンドロイドだってこと」

「そうです」

「そうなんだよ。彼女はアンドロイドだ。アンドロイドでも、結構色々行けるのはなんでか知らんが・・・・・すごいよな。こんなアンドロイドができるなんて」

「ですよね。彼女はすごいですよ。社長もよく育てたもんですよ」

 そう言って、リアンが拍手を送ると、社長は照れ臭そうにそれを退けた。

「まあ、別に私は娘が欲しいと思ってたから娘にしただけだよ。これからは、リアン君頼むよ」

「はい」

 任せられたってことは、いよいよ結婚が近いということだろうか。


 次の日、社長の家で寝ていたリアンに、オリビアはささやいた。

「私の部屋に来て」

 まだ、社長や社長夫人、父や母は起きていない。

 オリビアに言われるがままに、部屋に連れていかれる。


「え?!」

 オリビアの部屋、すごかった。電源コードがたくさん連なったものがある。そして、巨大充電器のようなモノと、よく分からない機械がたくさん。

 まず、オリビアは樽型の巨大充電器のようなモノについて話しだした。

「まず、これが魔法をつくるかくはん機」

 リアンはその隣にあった壺を指さす。

「これは、魔法をためる壺。私の溜め息から出てくるの」

 溜め息? それっていいことなのか。

「その息を集めるのがこのマスク」

 消防士が付けるような重々しいマスク。それを付けている時は、息から魔力を集めるらしいが。

「で、これは充電器と、そのコード」

 小さな四角い箱と、コード。四角い箱の中に入ってたのは、大きな乾電池だった。

「まあ、魔法があるからこれで行けるのよ」

 へえ・・・・・。

「で、最後の子のでっかいのには?」

 そう、でっかいでっかい箱がある。言うなら、教室にある掃除ロッカーのようなものだ。一番下に、引き出しのようなものがある。そこから、コードがたくさん伸びている。そのコードは壺やかくはん機ともつながっている。

「これはね・・・・・子供を作るもの」

 子供? とは?

「分かんないの? 私とリアンの子供よ」

 へ? この掃除ロッカーモドキで子供を作るって?

「正確に言うと、アンドロイドだけど・・・・・」

 ああ・・・・・なるほど。

「つまり、この機械を使って、電気を吹き込み、魔法を吹き込むわけ。ああ、そうそう。この引き出しの上の部分にはロボットみたいなやつがいっぱいあるよ」

 怖い。彼女、怖い。


「アンドロイドの私と人間のあなたの初めての子供よ。結婚して、少ししたら産まれると思う。ワクワクしない?」

 その、楽しそうな笑みはやっぱりぼくの笑顔を惹きつける。これは、やっぱり魔法だ。これは溜め息じゃなくって、心の底から出ている魔法だ。リアンはそう思った。


 で、そんな楽しい妄想を打ち消す物音がした。

 がタン!!!!

「うわ、ヤバい!バレる!」

 だ、誰かいる・・・・・?

「ちょっと誰かいるの? 出てきなさい!」

 オリビアがとっさに部屋を出て、声がした方に走り出した。

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