秘密

 リアンは激しく動揺していた。ついさっき婚約した彼女がそんな秘密を持っていたとは。

「はぁ?! お前はアンドロイドだって?! しかも魔法使い?!」

「ビックリしないでって言ったじゃん」

「いや、そりゃビックリするだろうが!!!!」

 オリビアは、はぁと溜め息をついた。

「とりあえず、説明するね」


「私は、サンライズジェネレーションがセラピーロボットの事業に乗り出したときに、作られた。試作品って感じでね」

「はぁ」

「そしたら、どうやらロボットには程遠い、アンドロイドに近い存在になった。まあ、これはこれで子供が楽しむからいいんだけど、問題はそこから。なぜか、私はしゃべるのがすごくうまくて、身体もほぼほぼ人間と同じだったらしいの」

 うわ、怖すぎだろ、怖すぎ。

「それで、まあどっちみち試作品だから、捨てられるとこだったの。ゴミ処理場でファイヤーされるとこだったわけね? そしたら、助けてくれたのが社長・・・・・パパよ。パパは子供がいなかったから、ママと一緒に名前を付けた。それが、後々いじめにあうことになった、横井オリビアの名前」

 少し、ドラマチックかもしれないけれど・・・・・。


「まあ、それで幼稚園はのんびり楽しくやってた。でも、小学校中学年になってからいじめられるようになった。私は、勉強はかなりできた。何でって、アンドロイドは記憶能力抜群だからね。運動はまあまあで、顔はひたすらよかった。それで、モテた。そういうのが、良く思わない生徒の反感を買ったみたい・・・・・」

 ふんふん。てか、さっき布団のメーカーすらすら言ってたのも、この記憶能力からか。アンドロイドって、やっぱりすごい。

「それで、いじめられてたある日。その日は石投げられていじめられてたの。まあ、あんまり痛いなんて感じないんだけど・・・・・」

 その理由は、もう分かった。言わなくても良い。アンドロイドだからだろう?

「そんで、なんか力持ちの男子が大きな岩投げてきたとき。何やら、ビームみたいなもんが出て、岩が跳ね返って、その男子のとこへ一直線に飛んでった」

 ビームみたいなものは、魔法だろう。

「その時に、私は魔法に目覚めた。私は魔法使いなんだ。魔女なんだって。それを護身術に使い始めたら、今度は珍しがられるようになった。ビームを出す少女って」

「ひでぇな」

「それから、私は魔法が使えなくなったってわけ」

 恐ろしい話だ。本当に、リアンとは比べ物にならないくらいのストレスをオリビアは抱えていたのだ。


「まあね、中学校に行ってから彼氏ができた。優しい子だったけど、他人をいじる子が大好きなムードメーカーだった。中学でもいじめられた私にとっては唯一の心強い味方だった。リアンと出会うまではね」

「へぇ。で、その元カレさんにはアンドロイドのことと魔法のこと、話したのか?」

「いや、話せなかった。なんせ、いじりが大好きなやつだったから・・・・・」

「ふぅん」

「ふうんじゃないでしょ。もっと心配してよ」

 はいはい。


 で、リアンには一つ気づいたことがあった。寝転んでいたらわかる。

「あのさ、話が変わるんだけど、少しだけ浮いてる?」

「ああ、そうそう。何でか、魔力で少しだけ浮いてるんだよね。そのおかげで足は早かった」

 オリビアはてへっと、舌を出した。


 ――マジでかわいい。


 君は、そんなことをささやくくせに、人を惹きつける能力だけは優れているみたいだ。

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