人間について

 人間は大陸に広く分布する。その歴史は展大陸において約五百万年前に遡る。原始ヒト属は展大陸西南部から始まり、他の人型生物(烏老並びに火羅カラ)との生物学的分岐を繰り返しながらその好奇心によって生息地域を拡大した。また種的変異によって体内環境の恒常性ホメオスタシスを獲得したことが幸いし、その個体数は現在、ヒト属において随一のものを誇っている。


 その精神性は特記に値する複雑さと豊かさを持っている。彼らは自分たちの上位概念として神(ジン)なる存在を認めており、彼らにとって日々の生活は神の恩恵の賜物であると認識されている。例えば、大陸東部からエサロス島王国含むエイカイア諸島群に住む膨峰バンフーという人種がある。彼らはそれぞれ共和国・王国・帝国といった多様な形態で共同体を形成しているが、膨峰人種の神話では一貫して、


混沌カオスからの光と影の分離

・同時に三柱の兄弟神が誕生

・兄弟神による巨人の討伐

・巨人の血で潤った大地を用いた人間の創造


という順序で人間の根源が語られている。


 このような、神という上位存在のみならず「混沌」「光」「影」といった非常に抽象的な概念を世界の根源に据えた思考を持っているのは、ヒト属においては人間のみである。また巨人という、世界形成のための生贄が登場するのも興味深い。


 彼らは棲息地域によって固有の民族的呼称を持つが、これは広範さによるものである(それぞれの民族については後述する)。その広範な生活地域の為に民族間で言語はもとより信仰対象、衣食住習慣、文化には大なり小なりの差異が生じている。そのため信じるものの名の下に屡々争いを起こすことがあり、それは時に一民族を絶滅させるほどの規模となるが、普段は温厚な種族である。また彼らは一貫して手仕事に長け、周囲の自然から取れる様々な素材を以て自分たちの生活を常に快適にしようと努めている。

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