20話 死闘!野球ゲーム①
ユリ一行はエデン一行と50億の弁償代をかけて野球をすることになった。
--遊ぼ遊ぼ遊ぼ遊ぼ遊ぼ!
--遊ぼ遊ぼ遊ぼ遊ぼ遊ぼ!
球場のグランドには守備に呼ばれた助っ人のモンスターペンギン達が溢れている。
エデンがボールを軽く投げてみた。
--遊ぼーーーーーー!!
屯っていた全てのペンギンがいっきに集結しボールが落ちたと思われる箇所をがむしゃらに突っつく。実際のボールは嘴で弾かれペンギン達の後方に抜けていた。
「これじゃあ守備は期待できないね。」
『このペンギン達は何のためにここに…』
守備が機能を果たさない。エデンとユリは相談しローカルルールを採用することにした。
〜ルール〜
①守備なし
②点数の付け方
ヒット…1点(死球、フォアボール含む)
ホームラン…3点
③3アウトで交代
④ゲームは9回裏まで
チーム分けは次の通りである。
ユリチーム:ユリ、ユーキ、モンペン
エデンチーム:マイ、エデン、ボドー、アルマ、ペン子
1回表、エデンチームが攻手である。
ピッチャー…ユーキ
キャッチャー…モンペン
1番、マイ。
「まずはお手並み拝見だな!」
マイがバットを構える。ユーキが振りかぶった。
ズバァァン!!
投球とほぼ同時に豪快な音が鳴る。ボールはいつのまにかモンペンが嘴で咥えていた。そして飲み込んだ。
エデンがタイムを出しユーキに尋ねる。
「ユーキ、ぼっちな君は今まで野球をする機会はなかったはずだよ。なんでそんな球投げられるの?」
「確かにこれが初めてだ。だが以前から興味はあった。ボールを投げる練習くらい1人でできる。」
そう、ユーキはずっと野球をすることに憧れていたのである。体力筋力Sのユーキから繰り出される球はストレートのみであるが常に160km/h以上の凄まじい豪球であった。
「ちなみにひとりでどうやって練習するの?」
「壁や岩に向かって投げれば良い。真上も楽だ。」
「自分で投げたボールは?」
「当然自分で拾う。」
ユリは思わず泣きそうになった。これが終わった後もユーキとはたまにキャッチボールをしてあげようと心に誓った。
その後、マイはユーキが投げようとした時点で振ってしまい、3ストライク、1アウトとなった。
2番、エデン。
「ストレートだけならよく見れば当てられるかな。」
エデンがタイミングを合わせ当てることに成功する。しかし、重い豪球に飛ばすことができずファウルが続いた。その後、空振りし2アウトとなった。
3番、ボドー。
突っ立ったまま何もせず、3ストライク、3アウト、チェンジとなった。
「おらこいよああああ!?勝負だユーキィィィ!?」
ボドーはバッドを振りやる気を見せる。しかし、すでにエデンチームの攻めは終わっていた。
1回裏、ユリ達が攻手である。
ピッチャー…エデン
キャッチャー…ペン子
1番、ユリ。
ユリは木製軽量のバットを水平に構えた。
(ふふふ、どんなヒットでも一点というのなら要は当てれば良いのです。ここはバントで行きましょう。)
エデンが投球する。
ユリはバントですら当てられず、3ストライク、1アウトとなった。
『え、ボールがバットを避けた!?これは一体何の魔法ですか!?』
「ただのフォークだよ。ひょっとしてユリちゃんも野球初めて?」
『はい…誘われたことがなかったので…。』
「雑魚だもんね」と、エデン。
「雑魚だからな」と、ユーキ。
「雑魚とはそういうものだ!」と、マイ。
「ん?お前の名前は雑魚だっけか?」と、ボドー。
ユリは深く心が抉られ這いながらベンチに戻っていった。
実はエデンは能力のバランスが良いだけでなく比較的器用な方であり、様々な変化球を使いこなすことができるのだった。
2番、ユーキ。
「それで、何故お前が勇者側にいるんだ?」
ユーキの質問にキャッチャーペン子は「キュウ?」ととぼけてみせた。
エデンが投球する。ボールは変化をつけながらユーキの顔面に向かって跳んだ。寸前で横にかわす。
「下手ザルが!どこ投げてやがる!」
「黙りなよストレートゴリラ。僕はサインの通りに投げてるだけだよ。」
エデンが指を差した先にはユーキの頭の真後ろにクラブを構えているペン子がいた。
「…何の真似だ?」
--すまない、手が滑った。
ペン子が薄笑いを浮かべる。ペン子がエデンチームに入ったのはユーキを陥れるためだったのだ。
しかし、ベンチで見ているユリにはペン子のその行動が別の目的があるように見えていた。泣きながら抗議する。
『ペン子さん、私達を裏切るなんてひどいです!私を借金地獄に陥れるつもりですね!?』
--なっ!?違うんだよユリ…!この男が私を陥れようとボグギャ
ユーキが死球をかわしたため、エデンの球は駆け出そうとしたペン子の顔面にめり込んだ。
ペン子は担架で運ばれていった。(ペン子棄権)
ペン子に代わりボドーがキャッチャーとなる。
エデンの変化球に対応できず、ユーキは3ストライク、2アウトとなった。
3番、モンペン。
--俺には必勝法がある!勝負だ金髪小僧!
「臨むところだよ。…!?」
その時、モンペンは天然王エデンを愕然とさせるという大業を成した。
残像が残る速さでバットを滅茶苦茶に振りまくったのだ。
--オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!
そう、ボールをどうすれば当てられるかわからないモンペンは思考の全てを捨てて振って振って振りまくり、偶然当たればよしという暴挙に走ったのだ。
1ストライク。
--無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!
2ストライク。
--あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!
偶々当たりヒット。エデンが讃えるように微笑む。
「…お見事。やるね、モンペン。」
--ふへぇ…俺はやったぞ…。
モンペンは目を回し倒れた。
その後、ユリがサクッとアウトとなりチェンジとなった。
ユリチーム 1(+1) - 0 エデンチーム
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