第16話 うらめしや、寒さ……
煩悩の数ほど鐘が鳴らされたであろう夜から一夜明け、初詣にやって参りました。
寒くて、敷地内にある焚き火から離れたくなくなる。わー、生き返るー。
昨日の夜に、今年起こったことを振り返ってみたが、考え事は夜にするものじゃないな。
めちゃくちゃ考え込んじゃうし、余計なこと考えてしまう。それで眠れなくて悪循環。
お布団で考え事はしてはいけません。お布団は神聖な場であり一番安心できるおうちです(私調べ)。ただでさえ寒くてお布団から出られないのだから、より良い環境でなくてはいけませぬ。
あ、ちなみに異論は認めます。
そして本日は元旦であります。
お雑煮を食べる方もそうでない方もいるでしょう。私は食べました。具だくさんのお雑煮もあるらしいですが、うちのお雑煮はシンプル。すまし汁にお餅と白菜、ほうれん草、にんじんが入ったもの。地域や家庭によって具材や味付けが違う上に、自分の家以外のお雑煮って食べる機会がないから興味深いよね。
焼き餅ならバターで焼いたのが好きなんだけど、砂糖醤油も、きなこも好き。ただ、カロリー摂取がヤバいのに運動もしないからこれは当然増えてまう。でもこういう時にごろごろするのが最高に幸せだよね……
そんなことを考えているうちに手も暖まってきた。
家族で初詣に来て参拝も終わったため、おみくじを引くことにした。
結果は ─ 吉。微妙だと思ったら、父によると大吉の次に良い場合もあるらしい。小吉の下だと思ってた。毎年のように引いていたのに知らないまま生きてたよ……
学問や失せ物などをさらっと読むうち、待ち人の欄には「たよりなし 来る」と書かれていた。
私の人生に影響を与える人が来るということらしいが、どうか嵐や台風の目のような人ではないことを祈っておこう。
おみくじは持って帰ってもいいらしいが、個人的には大吉以外は結びたい。一応スマホで撮影して結んでおいた。
───
短いながらイベントがぎゅっと詰まった冬休みがあっという間に終わった。
久しぶりに会ったクラスメイトと話していたが、本当に寒くて仕方ない。
校則でタイツを履くのは禁止ではないためありがたく履いているが、正直男子のズボンが羨ましい。あの1枚で変わると思うんだ。冬の寒い時期だけスカートじゃなくてズボンにしたい。
そんな訳で、久しぶりに会った榎本くんの制服をガン見している。
「小松さん?そんなにズボン見てどうしたの?」
「羨ましいなって」
「羨ましい?」
そのズボンの下にジャージとか履けそうだな。タイツとズボンじゃ栗の薄皮1枚と殻みたいなもんじゃん(?)。申し訳程度の薄皮と鉄壁のガードの硬い殻じゃ話にならない。布をくれ。
思わずじとっとした目で見つめてしまう。
「防御力の低いスカートじゃなくてズボンが履きたい……」
「ああ、やっぱり寒いよね」
「この寒い時期に通気性はいらないのよ……」
冬にスカート履かないってこともないけど、さすがに毎日はつらい。
「何かしてあげたいけど、何も持ってないんだよね」
榎本くんは申し訳なさそうな顔でこちらを見てくるが、ただの八つ当たりですので!そんな顔しないでくだされ!むしろこっちが申し訳ない!
「いや!榎本くんは悪くないから!八つ当たりしてごめんね!」
「ううん。大丈夫だよ」
寛大だ。理不尽な態度をとってしまった私に対して優しすぎる。
そういえば、栞さんもだけど、榎本くんの怒った所を見たことがない。同じクラスじゃないからかもしれないが、いつ怒るのか予想がつかないし、怒った時が怖いパターンな気がする。よく言うでしょ、普段怒らない人が怒ったら怖いって。むしろ怒らせるようなことしたこっちが悪い可能性もありそう。それか怒ることもなく呆れられて離れていくか。……うわ、なんかあり得そうでゾワッとした。これ以上考えるの止めておこう。
考え事をシャットダウンさせると、先ほどどこかへ行った栞さんが帰ってきた。
「紗綾さんはお休みの間どう過ごしていたの?」
「……おじいちゃんおばあちゃん家に行ったり、ほとんどは家の中でまったりしてたかなー」
「お正月はゆっくりするのに限るわよね」
そう、実は母方の祖父母は近くに住んでいるため、初詣の後に行ったのだ。
お盆の時に訪れたのは父方の祖父母のお家で少し遠くにあるため、毎年交互に訪れたりしている。
親戚もいたりするため、一緒に遊んだり、料理を手伝ったりして、家にいるほどゆっくりはできなかったが、それもいい思い出だろう。お年玉もらえるし(小声)。
「栞さん達は?」
「そうね……私達も父の実家に帰ったわ」
「そっかぁ。やっぱり実家に帰る人が多いのかな」
「そうかもしれないね。親戚も集まっていたし」
その様子を想像することができないが、ふたりも同じように帰省したんだな。
「あ、もうそろそろ戻らないと。じゃあまたね」
「またね」
私に別れの挨拶をしてから、自分のクラスに帰っていった榎本くん。
栞さんのことは一瞥しただけで出ていってしまった。相変わらずさっぱりしているなぁ。
「どうかした?」
「あ、ううん。何でもないよ」
栞さんは自分のことを見ていた私に首を傾げていた。
異性の双子だし、兄弟で仲がいい人もいれば違う人もいるよね。
これがふたりの距離なんだろうなと、ひとり頷くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます