7.ルーテナント・フォーゼス —天の川—
「ネザアスさん。今日って七夕なの?」
フジコが笹を飾りながらそう尋ねる。
「さあ、どうかな。普通のカレンダーだと違うと思う」
調べればわかるが、と、奈落のネザアスは、ちらりと機械仕掛けの小鳥のスワロを見やった。スワロは情報端末の機能があるので、実際のカレンダーの日付がわかる。
調べないとわからない、というのは、このテーマパーク奈落で過ごしている内には、実際の日付を気にすることがあまりないということだ。
フジコの任務にも、ネザアスの任務にも、期日というものがない。彼らは放逐されたようなもので、本当は別に真面目に任務に挑まなくたって構わないようなものなのだが。そう考えると、フジコも真面目な方だけれど、自他共に認める不良黒騎士の割に、ネザアスも真面目だ。
「まあ、そもそもエリア逆行してるからな、おれ達は。季節も逆になるし。そのエリアに合わせた行事すればいいぜ」
意外と真面目な割に、その辺はテキトーなネザアスである。
「ともあれ、今日は七夕の空なんだ。七月七日の星空が再現されてるんだ。てことは、七夕しなきゃ、雰囲気出ないんだぜ」
ネザアスは、まだここが廃墟でなかった時は、いってみれば遊園地のスタッフのような立場だった。そんなこともあり、割とイベントごとが好きらしい。
「天の川、すげー綺麗なんだぜ。ま、でっかいプラネタリウムみたいなもんだがな、ここの空」
ネザアスは、ロマンチックさに欠けている。
「天の川かあ」
確か、七夕は川に隔てられた恋人同士の神様が一年に一度会える日なのだ。
(この任務が終わったら、ネザアスさんとは、年に一度も会えないんだろうな)
そんな風に考えては、まだしも、織姫は幸せかもしれないと思ってしまう乙女のフジコ。
「ネザアスさんは、織姫と彦星って知ってる?」
「あー、あれな。イチャつきすぎて、仕事サボったんで、親に別れさせられたカップルだろ。織女と牽牛てやつ」
(デリカシーがない)
「羽衣伝説も入ってるらしいけどな。なんだ、ウィスも羽衣ついてて降りてきたってか。ははは」
奈落のネザアスは何も考えていない顔で、飾り付けの終わった笹を外に持っていく。
多分、その短冊に、小さく見えないように「任務が終わった後でも、いつかの七夕の夜、彼に会えますように」と、フジコの健気な願いが書かれているとも知らない。
もう夜だ。きっと、空は満天の星で溢れている。
「そうだ、ウィス。今日は外でメシを食おうぜ。綺麗なもん見ながら、メシ食うのいいよな? 俺は、まあ、味あんまわからねえけど、うまいんだろ?」
「そうだね」
仕方がないネザアスだ。フジコは諦めて笑ってこたえる。
そんなネザアスに恋心などわかりはしないが。彼が綺麗なものが好きなことは本当で、きっも彼のいうように、今夜の天の川は綺麗だろう。
*
「ノワル、この部屋好キみたイ」
笹をくわえてリビングにやってきたユーネが、大きな一つの目を細めて水槽の、黒い金魚……のように見える黒い何かのノワルを眺める。
ここのところ、ユーネはウィステリアの家に入り浸っている。
入江の洞穴に置いていたノワルの水槽は、ウィステリアのリビングに置かせてもらった。彼の留守中、ノワルが他の泥の獣に襲われるのが心配だと言ったところ、連れておいでと言われたのだ。
となると、当然、彼もウィステリアの家で過ごす時間が多くなる。
実際、入江で住むより快適ではあった。それでも、毎日、縄張りのパトロールも兼ねて周辺をぐるりと周るが、ウィステリアの家に泊まっていくことも増えた。
夜はウィステリアを怯えさせてしまうかもしれないので、ユーネは相変わらず入り口近くのソファで寝ている。
ユーネとウィステリアとノワルとジャック。いつのまにか、小さな家族というふうになっていた。
「ふふ、ノワルかわイなー」
すいすいとノワルが水槽の中で泳いでいる。隣に、黒物質で作られた蛇というか、虫というかなジャックが来ていた。
単純な黒物質でできたジャックとノワルは、似たような存在だ。それに比べると、ユーネはかなり複雑にできている上、存在自体が格上。それもあってか、ノワルもジャックもユーネには従順だ。彼が優しくしたからか、かなり懐いている。
ユーネはソファにたてかけた飾り立てられた笹をみせつつ、
「ジャック、今日七夕スルんだゾ」
ジャックの頭を左のひらひらで撫でやりながらユーネは、にこにこする。
「七夕ワカルか? 網飾りとカ、紙子とカ、飾り可愛イよな。で、短冊、これ、願い事書いテる。ジャックの分もオれ、書いテあげタ! ジャックモ、お話シできルといいからナ。ウィスが寂しがらナイし」
ユーネは大きな目を瞬かせる。
「それデ、夜、天の川ミてからここだと海ニ流ス。七夕はナ、ショクジョとケンギューてノいて、天の川デ隔てらレてる。一年に一度、カササギの橋渡っテあうンダ」
やたらに詳しい。ユーネは昔の記憶はないのだが、時折こういう風に妙に博識なところがあって、それはおそらく彼の過去と関係がありそうだ。
「ウィスがナ、夕方、七夕のうた、歌ってクレるて! ウィスは、人魚ダカラなー、人魚の服もキレーだし、歌も良イ。楽しみだナ」
ウィステリアは自分は人魚ではないと彼に告げていたが、いまだにユーネは、ウィステリアのことを人魚だという。
ウィステリアは、まだ前任の灯台守の魔女のヤヨイ・マルチアのことは彼には伝えていない。
ヤヨイ・マルチアになんとなく劣等感があった彼女は、ユーネが自分をあの時の人魚姫でないと知ったら、嫌われるのではと恐れている。
そんなこととも知らないで、泥の獣ユーネは、単に無邪気に魔女達を一緒くたに、「灯台守の人魚」と呼んでいるだけのようでもあった。
ふとジャックが、最近リビングに飾られた額に目をとめた。短冊のようなものが入っている。
「あア、あれ。届いタやつ」
ユーネは、目を瞬かせる。
「あれナー、種火の部屋ニある、写真ノやつ書いタて」
ユーネはなんだか複雑な顔をする。
「アレ、俺もカケるし、読めル。大したコト書いてナイ。なんかダレかに当てたただノ手紙みたいナの。ショーもない。大体、アイツ、男前チガウのにな」
むー、とユーネの頭の突起が伏せられる。猫の感情表現に似ていた。
「あの写真ノやつ、ウィス、トテモ大切にシテル。デモ、おレ、知ってル。あの面シテルやつ、ロクな奴いナイ。アンナ奴好きトカ、ウィス、変ダなー、ちょっト心配ナルー」
遠回しに言っているが、ようは男の趣味が悪いと言いたいらしい。
「ウィス、イモートみたいな人魚だかラ、オれがしっかリ守っテヤラナイとナ!」
と、ユーネは目を瞬かせた。
「そウダ。ウィス、何シテるのかナー。様子見に行コ!」
*
「新しい白騎士の隊長が、近くの駐在所に派遣されました」
今日は監視役のグリシネとの面談の日。
この時ばかりは、ドライなグリシネも音声だけでなく映像を繋いで話してくれる。
さりとて、別にウィステリアもグリシネに会いたいというほどでもない。寧ろ、都合の悪いものは隠さなければならないし、それはそれで大変なのだ。
コッソリ文月の魔女のイノアから届いた、ネザアス直筆の鏡文字暗号の短冊しかり。ユーネの存在しかり。
ユーネが理性のある泥の獣であり、珍しい存在なのは確かだが、バレると捕獲されて、管理局で実験台にされてしまう。ユーネのことは、何がなんでも隠さないといけない。
特に厳しいグリシネには。
『ウィステリア?』
「あっ、ええ。すみません。ぼーっとしてしまって」
『そんなことでは困ります』
ため息すらつかぬ、表情の変わらないグリシネ。長い髪の綺麗な女だが、グリシネはとても機械的だ。見かけの年齢はウィステリアより上に見えるが、おそらくグリシネは本当に彼女より年上だと思われる。グリシネは正式な魔女ではないらしいが、きっとなんらかの強化はされているのだろう。
『この間、行方不明となった白騎士の後任が派遣されてきています。白騎士の中には、あなた方魔女に好奇心で絡むものもいますから、十分注意してください』
「ええ。分かっています」
グリシネも、自分は白騎士をたぶらかすような女だと思っているのだろうか。ちょっと腹が立つ。
『新しい白騎士の隊長は、
グリシネはウィステリアの個人的な感情に構わず、機械的に続けた。
『彼は人柄は真面目で任務に忠実とあります。彼自身は問題は起こさないと思いますが、他の白騎士には注意が必要ですよ』
(真面目で忠実な人が、こんなところにくるかなあ)
ウィステリアはそんな冷めたことを考える。魔女同様、ここに白騎士がくるのも、左遷の意味合いが強い。その人物に、何か問題があってくることが多いのだ。この周辺は、ヒラの白騎士ですら質が悪い。
とはいえ、自分から白騎士にコンタクトを取ったりしないが、確かに向こうがからかいに来ることがあるので、真面目な人の方が助かると思っていた。
と、不意に、とんとんとドアがノックされて、ウィステリアは慌てた。
(ユーさん? いけない、面接中だって伝えるの忘れてた!)
ユーネは意外と紳士なので、ウィステリアの部屋の扉はちゃんとノックしてから入る。が、ノックするような人物がいるというのを知られると、やばい。グリシネに疑われる。
「あ、ちょっとごめんなさい。ペットのジャックが」
そう断って、慌てて扉の方に行く。
少しだけ扉を開けると、ユーネの大きな目と合う。
「ご、ごめんね。ちょっとまってて!」
「う、うん」
ユーネもそれなりには空気は読む。これは外部と通信中だと気づいて、静かにしている。
「あ、これ、貸して」
小声で言って、ウィステリアはユーネのくわえていた笹を拝借して席に戻った。
『ウヅキ・ウィステリア、どうしましたか? 今、何か黒いものが見えましたが?』
「あれは、あたしの作ったジャックという黒物質の加工品です」
造型の力を持たないウィステリアは、複雑な黒物質の加工はできないが、魔女の能力の応用で簡単なことはできる。その能力のトレーニングは推奨されているので、プログラムを行って、ペットを作るくらいなら咎められなかった。
『それなら良いですが。なんですか、それは、笹飾りですか?』
「ええ、七夕セットをジャックが倉庫から探し当ててきまして。笹もあるから、飾り付けて持ってきてくれたんです。今日は七夕ですし。ここでは一人で季節を感じられないので、気分転換に」
ともっともらしい理由をつける。
『七夕の笹飾り』
ぽつんとグリシネが呟く。
『私、七夕は嫌いです』
(あれ?)
珍しくグリシネが感情をあらわにする。鉄面皮のような無表情な顔から、ほんのすこし感情がのぞく。
『あんな、叶いもしない願い事を書く行事なんて……』
とそこまでいって、ふとグリシネは元の調子に戻った。
『ウィステリア。気分転換はかまいませんが、そんな遊びで本業を忘れてはなりませんよ』
(嫌味だな)
はい、と返事をしながら、ウィステリアはそう思う。
(でも、さっきのなんだったんだろう?)
あの時の彼女の悲しそうな、腹立たしげな顔が、印象に強く残った。
*
「七夕ノうた、よかった!」
「それは嬉しいわ」
夕方、灯台に火を入れてから、いつものように歌を歌った。ただし、今日は七夕にまつわる歌だ。童謡のようなものだが、ユーネは初めてきくのか喜んでいた。
そのあと、二人して桟橋で夕涼みをする。
桟橋に置かれたランタンが、ほののかに二人を照らす。
暗くなった空には満天の星。
「星、キレー」
頭に笹飾りを抱えているユーネが、上機嫌にいう。
「おレ、知ってル。あれ、ミルキーうぇイ、つまり天の川。銀河の中心ナ」
「え。ユーさんよく知ってるわね」
「えへ、おレ、昔、結構べんキョーしてタ!」
と、得意げに言った後、ふとユーネはうつむく。
「こーゆーノ、結構思い出せる。ノニ、名前とか、昔ノ思い出、ナンデわからナイのかナ」
「焦ることはないわ。ゆっくり思い出せるようになってるのよ、きっと」
ユーネのすべすべする頭を撫でつつ、ウィステリアは慰める。
「短冊に書いたでしょう? 記憶、思い出せるようにって。ユーさんの記憶、戻ると良いね」
「ん。そうだナ」
ユーネが微笑んで頷く。
「笹、海ニ沈めル?」
「そうね、でも、もう少し空を見てからにする?」
「そーダな。星綺麗だシ。ウィスのイウとおり、しよーナ」
ユーネは上機嫌で頷いたが、その時、ハッとした彼は全身をこわばらせた。
「誰カクる!」
「えっ?」
ウィステリアは慌てて、ユーネの視線の先を見る。木々の間にライトが揺れていた。確かに誰か島にいる。
「白騎士かも」
昼間のグリシネの話を思い出す。彼らは最近発生している囚人の情報を集めに、島に上陸する可能性があるとのことだった。
「ユーさん、隠れてて」
「わかっタ。デモ、気をつけテ」
ユーネは笹を置いて、静かに桟橋の下の海に身を沈めた。
足音と人の声。男の声だ。
「お、灯台守の魔女じゃないか?」
二人の男のうち、一人がそういった。白い軍服、やはり白騎士だ。その割にはあまり質が良くない。まあ、ここに来る部隊はそんなものだろう。
「どなた? あたしは、ここに派遣されている魔女。島の灯台付近へは、許可のない立ち入りは禁じられています」
ウィステリアが毅然と対応する。白騎士二人が、揶揄するように笑った。
いつもなら、軽くあしらってやるのだが、今日はユーネがいるので、なるべくことを荒立てたくない。
「灯台の島付近の白騎士ね、貴方達」
「そういうお前は、ウヅキの魔女だったかな?」
「なるほど、良い女だな。魔女じゃなきゃ完璧だが」
値踏みするように見られて、ウィステリアはムッとする。
「無礼な真似は、貴方達にも良くない結果をもたらしますよ?」
「噂じゃもっと尻軽だって聞いてたんだがな。結構堅物だね」
距離を詰めて、肩に手を触れようにする。後ろでユーネが殺気立つのがわかり、慌ててウィステリアはその手を払った。
まずい。ユーネが出てきてしまうのが一番まずい。彼の存在が、バレてしまう。
「悪かったわね。でも、これ以上、失礼なことをするなら、それなりに考えがあるわ」
「何をするって? 魔女の力は俺達白騎士には効かないぜ? 黒物質なんか持ってねえからな」
くすくすと笑う彼らに、ウィステリアは、グリシネに連絡するか、護身用のテーザーを取るか迷っていた。あまりことを荒立てたくないが、相手の出方によっては……。
と。
「何をしている! 貴様ら!」
そこに鋭い声が割って入った。
少し掠れ気味だが、よく通る声だ。白騎士達がびくりとする。
「た、隊長」
「灯台付近の区域へは、無許可侵入自体が禁じられている。貴様らは申請していないだろう?」
どうやら、くだんの隊長も島に来ていたらしい。白い軍服に地位を示す階級章が光って見える。
「持ち場に戻れ!」
厳しく叱られると、白騎士の二人はウィステリアから離れて歩いていく。
あの堅物、クソが、と吐き捨てるのが聞こえる。どうやら、この隊長、それなりに煙たがられているらしい。真面目なのは本当のようだ。
ほっとしたウィステリアに、隊長が近づいてくる。
「私の部下が失礼した。本来なら、こちらには接近しないつもりでしたので、許可を申請しなかった。申し訳ない」
「いえ」
近づいてきた隊長が、ウィステリアの持ってきていたランタンに照らされて姿を現す。
白騎士の白い軍服、腰のサーベル、痩せ型で背が高くてすらりとしている。
「ありがとうございます」
と礼を言おうとして、顔を見て、ウィステリアははっとした。
「本当に失礼した」
赤毛の短髪に鋭い眼差し。瞳は両方とも赤っぽい。彫りの深い顔立ち。
ウィステリアは、息を飲んで思わず顔を赤らめた。
「挨拶が遅れましたが、私は、この近くの駐屯地に先頃赴任した。ゼスNo.4、ZES-AN-WK-004第二尉官。ルーテナント・フォーゼスと通称されている。フォーゼスと呼んでくだされば」
「フォーゼス、さん」
はっと我に返って、ウィステリアは慌てて挨拶をする。
「あたしは、卯月の魔女、ウヅキ・ウィステリア。灯台守の魔女です」
「ああなるほど、そうか、先ほど聴こえていた歌は、貴女のものか」
フォーゼスがふと相好を崩す。強面だが意外と柔らかい表情もするのだ。
「素晴らしい声だった。囚人の活動が活発ときいていたが、この島の周りはずいぶん穏やかだ。貴女がいるためかな」
「いえ、そんな」
ウィステリアは、照れるのがかくせない。
「お邪魔して失礼した。私も今日の立ち入りを申請していない。そろそろお暇しよう」
「い、いえ、助けてくれてありがとございます」
「私の部下が無礼だっただけだ。お気になさらず」
と、フォーゼスは立ち去ろうとして、ふと、笹飾りに目を留める。
「そうか、今日は七夕だったか。懐かしい。私も子供の頃は、よく笹飾りを作ったものだ」
にっと微笑んで、フォーゼスは会釈する。
「今夜は星空も綺麗だ。どうか良い夜を」
そう言って、フォーゼスは背を向けて立ち去っていく。それをウィステリアはぼんやりと見送っていた。
彼の気配が消えてから、そっと水音がしてユーネが海から上がってきた。
「ウィス、大丈夫?」
「えっ、ええ」
ウィステリアはまだふわふわしている。
一方、ユーネは憤然としていた。
「アイツら、不埒ナやつ。ウィスに手、触れたら海ニ引き摺り込ンでヤっても良かっタ!」
ユーネは意外と血の気が多い。
「だめよ、ユーさん。ユーさんは、あの人たちに知られると大変なんだからね」
ウィステリアはそう嗜めつつ、ため息をついた。
「隊長さんがまともで良かった」
「そーかナー」
ユーネは何故かまだ不機嫌だ。
「おレ、あーいウ顔のヤツ、嫌い」
「ユーさん、なんてこと言うの」
ウィステリアはたしなめる。
「隊長さんのお陰で穏便に踏んだんだからね」
(驚いた)
ウィステリアは、昔、笹の短冊に、こっそりかいた願い事を思い出した。
七夕の夜に、もう一度ネザアスさんに。
あれから何度も七夕がすぎて、もはや叶うはずもないと思っていたけれど。
(ルーテナント・フォーゼス。あの人、本当にネザアスさんに似てた。びっくりした)
フォーゼスは右手も右目もあるし、ネザアスよりもっと上品だった。しかし、七夕の夜に彼そっくりの人物と言葉を交わしたのも、何かの縁だろう。
「ウィス、笹、流ス?」
「ええ」
ユーネに尋ねられ、動揺した心を一旦隣に置いて、ウィステリアは笹飾りを手に取った。
黒い海は、どこかで溶けて沈んだネザアスと繋がっている。彼も天の川を見ているのだろうか。
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