第5話 サルバンのウエディングドレス。
治癒院に過敏症の治し方を伝えたミチトは急な予定がない事を周囲に確認してからアクィを連れてサルバンに顔を出す。
「おお、すまんなアクィ」
「お前も来たのかスティエット!」
出迎えのスカロとパテラにアクィよりも自分が預かっておく方が安全だからついて来たと話すミチトは家の中を進むとヒノとノルアが出てきて挨拶をする。
ヒノは当主夫人として領地の仕事を1人でこなし、学校運営まで行っていて忙しい。
それなのにここに居るのはサンフラワー達の事を聞きたいからだと察したミチトは「ヒノさん、サンフラワー達は治しましたよ」と挨拶をすると「聞いたわよ。サンフラワーがライブに頼んで念話水晶使って教えてくれたわ」と返される。
ヒノは元々本人は偽装結婚だと思っていて、ノルアはまだサルバン騎士団に慣れる為に子供は早いと言っているがパテラはとうに30を超えていて出来るなら子供は考えたほうがいい。
そんなヒノの指には豪華な指輪が付いていて、ミチトが「珍しいですね」と聞くと「ロキが王都で私とスカロの不仲を疑っている輩が居るって言い出して、誤魔化す為にもミチトの稼ぎから指輪を買うって話になってモンアードのオーナーがわざわざ指輪を持ってサルバンまで持って来たのよ」とヒノが返す。
ミチトは稼いだ金の使い道は知った事ではなく、妻子…トウテの皆となんの問題もなく日常が続けば文句はないし、未だに仕事をする度に貯まっていくお金達に最早興味はない。
ディヴァント家の人間以外はミチトの総資産を誰も知らない。
納得した顔で「それで買ったんですね」と返すミチトに「…アンタ、自分のお金なのに文句ないの?」と聞くヒノ。
ミチトはケロッと「全然。別に俺はトウテで皆で平和に暮らせればいいですし」と言って横に居るノルアに「ノルアさんも買いました?」と聞く。
まさかの流れに「え?私はそんな…」というノルア。
「えぇ?いらないんですか?」
「いや、申し訳ないです」
「パテラさんも買ってあげてくださいね」
「むぅ…、努力する」
「じゃあアンタもアクィ達に買ってあげなさいよ」
「…まあ機会が有れば買っていますよ。でもアクィもライブもお店で買った奴は付けないで俺が作った奴にするんですよね」
このやり取りでヒノが「アクィ、キチンと甘えないとコイツわかんないのよ」と言うとアクィは妹の顔で「うん。そんな気はしてる」と言った。
ヒノも人間嫌いではあるがサルバン当主夫人としては我慢もしているし、アクィは義妹と言う事で普通に話が出来るようになっていた。
話をしながら二階の奥に向かうとアクィの父母の部屋はあった。
「増築をしてここと離れを繋いで、この部屋は廊下にして、もっと豪華な部屋を父様と母様の部屋にしようとスカロと話したのだ」
「スティエットとヒノのお陰でサルバンは潤っているから今のうちに増改築を行う事にした。そういう訳で、済まないが完成まで預かって欲しいのだ」
パテラとスカロの話に納得をしたミチトは次々と収納術に家具なんかを入れていく。
アクィ、スカロ、パテラの3人はいちいち思い出の品に反応をしてミチトを待たせてしまい作業にならないでいるとヒノが「新しい部屋に並べたら眺めなさい!」と注意をしてくれる。
諦めた3人を無視して次々と収納していると奥の方から年季の入ったウエディングドレスが出てきた。
それを見た瞬間、「あ…」とアクィが言って、今までのアクィなら間違いなく飛びつくのに素っ気なく目を逸らす。
その顔が気になったヒノが「スカロ、ティータイムよ。熊男、庭にテーブルの用意、ミチトが来ているんだからパークンも呼びなさい、ノルアは熊男の手伝いよ」と指示を出す。
ミチトは「え、まだ余裕」と言うがヒノは有無を言わさずに「パークンが寂しがってるんだから行きなさい」と言ってミチトを外に出す。
ミチトは熊のパークンが寂しいと聞いて「病気かな?大丈夫かな?」と言って我先に庭に出て行ってしまう。
ヒノは残ったアクィに話を聞くとやはりウエディングドレスには思い入れがあってミチトの手前言い出せなかったと言った。
ヒノはアクィに「お茶の席では私に従いなさい。反論禁止ね」と言ってお茶の席になる。
お茶の席にはスカロとヒノの焼いたクッキーが出てきていてヒノに言わせると晴れの日ならスカロには及ばないがかなりいい出来になると言っている。
「ねえミチト。スカロから聞いたけどラージポットのオーバーフロー後にサルバンで寝込んでいたのよね?」
「ええ、まあ実際は寝てたのは最初の3時間だけで後はイブとライブが老化しない為に力を使ってました。なんていうんでしょう?起きてはいたんですけど指一本動かせない状態ですね」
「その間のアクィ達の会話とかって聞いてたの?」
「いえ、あの時は全能力をイブとライブに向けていたから何も聞いてません。ヒノさん?」
ヒノの会話運びが気になったミチトがヒノの意図を探ろうとすると「別に、スカロから聞いたけどサルバンが襲われてばあや達が大変だったのよ。アンタそれを知りなさい」と言う。
当時は魔物の素材をわけて謝罪は済んで居たがそういう問題ではないのだろう。
ヒノはミチトの反応は待たずに「アクィ、それ見せられる?」と聞くとアクィは「え?はい…広域伝心術」と言って術を使った。
アクィはパテラの背中で眠ったままのミチトにサルバンに着いたと声をかけるがミチトは眠っていて起きない。
「パパ寝てるの?」
まだ幼いメロが聞いてアクィが「きっとオーバーフローで疲れたのね。眠らせてあげましょう?とりあえずお湯で身体を拭いてあげなきゃね。メロも手伝ってくれる?」と聞いてメロは「うん!」と答える。
そしてメロとアクィでミチトを拭き上げて、食事もスカロ達と食べずにアクィの寝室でミチトを見ながら食べる。
それでも起きないミチトを心配したがメロとアクィは献身的に介護をする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます