第4話 禁術についての見解。
折角だからと復調祝いとしてミチトとリナが腕を振るいアクィがケーキを焼く。ローサの所に子供達を迎えに行ったイブとライブはのんびりと散歩をしながら帰ってきてシナバーが凄いと皆に話をする。
「お屋敷からトウテまでが全然苦にならないの!シナバーが色々話してくれて、ずっと聞きたいくらい話し上手でさ!」
「本当、今度イブも子供達とシナバーちゃんのお話を聞きながらお昼寝したいです!」
イブとライブもシナバーのファンになったといい、カメリアが「シナバー?あなた毎日仕事でも読み聞かせしてるのにお休みの日もやるの?」と心配をする。
「だって、トウテでは初めてだったし」
そう言うシナバーは本当のプロフェッショナルなのだろう。
夕飯の席には気持ち悪いくらいのラブラブ空気を出しているイイーヨとアガットがミチトに連れられて戻ってくる。
着席してからもラブラブな空気、皿を取ろうとして手が振れただけで真っ赤になって見つめ合う状況にドン引きのミチトだったが、ライブが「ミチト?ラージポットでリナさんとの次の朝のミチトもあんなだったよ」とツッコミ、イブも「あの朝なんて酷かったですよね。マスターがヴァージを止めてラージポットに帰ってきた頃」と話を重ねる。
ミチトは当時、自分が人間を辞めて無限術人間真式になってしまった自覚からリナとの子供がリナを傷つける事を心配してリナを遠ざけようとした。
だがリナはミチトの作った壁を越えてきて2人は結ばれた。その日の喜びを思い出したミチトは真っ赤になってリナを見てリナも真っ赤になる。
「お父さん?お母さん?」
「な…なんでもないよタシア」
「うん。なんでもない」
タシアが心配そうに話しかけて必死に誤魔化すミチトとリナ。
それを見ているラミィが「変なパパとお母さんですわ」と言うとメロが「ラミィ、こういう時は見て見ぬフリが貴い者のする事だよ」と教える。
夕飯にはサンフラワーも呼ぶ。
サンフラワーも治った者としてアガットに「アガットがマスターに言ってくれたから治ったよ。ありがとう」と微笑んでいる。
「ううん。全部マスターのおかげ。ありがとうマスター」
アガットの声に合わせて症状の無かったシナバーまでミチトに礼を言う。
「いいよ。教えてくれて良かったよ。明日治癒院には治し方を教えに行くから王都で似た症状の人が居たら治してあげてね」
「はい!でも本当皆治って良かったです!」
アガットのこの言葉にアクィがはたと気付いて「ミチト!私も治しなさいよ!」と言う。
「ちっ、気付いたか」
「コイツ…」
本当に嫌そうにするミチトを見てメロが「パパ?なんでママは治さないの?」と聞く。
ミチトは真顔で「メロ…、ママをくすぐってごらん、タシアとラミィもやってみて。アクィ…両手封印」と言った。
ミチトに両手を封じられたアクィは逃げることも叶わずにメロとタシアとラミィにくすぐられるとすぐにオーバーリアクションでヒーヒーと言う。
アクィが本気で嫌がったのを見て手を止めたメロだったがミチトを見て「…なんかわかるかも」と言うと、ミチトもドヤ顔で「だろ?」と言った。
「でも治してあげて」
「仕方ない。今日はアクィと寝る日だから夜覚えてたら治すか…」
この言い方は何が何でも逃げる場合があるのでアクィが「はぁっ…はぁっ…、絶対治して」と言うとメロが「本当だよパパ。メロからもお願いだからね」とフォローに入る。
ミチトは優しい笑顔で「うん。メロが言うなら治すよ」と言って頷くとアクィが涙目でミチトを睨みつけながら「コノヤロウ…」と言った。
夕飯後にアガット達を王都に連れていきながらシックの所に顔を出してロエスロエの更なる副作用の話をして治し方を用意したから明日治癒院に顔を出す旨を伝える。
「おお、それは助かるよ。でもあまり被害を聞かないのはなんでだろうねぇ?」
「多分、個人差がある事と好んでロエスロエを飲むくらいだから過敏症になる事自体は嫌じゃないんですよ。だから治療法を確立しても来るのは色街で無理矢理飲まされていた人達かも知れないですよ」
「成る程、だが困る者もいるから治療法はありがたいよ。ありがとうミチト君」
「いえ、ただ発端がアガットからで、そのアガットとイイーヨさんを誘ったのはシックさんだったので今回の検証はシックさんのお支払いにしましたからね」
シックは地下喫茶の値段を知っているので一瞬言葉に詰まりながら「……了解だよ」と言った。
シックも後日アプラクサスに「婚前旅行はありがたいが娘が変わってしまうのは嫌なものだ」とものすごい顔で睨まれていて素直に謝っていた。
ミチトはアクィを連れて別荘にくるとすぐに過敏症を治す。
「はい。治ったよ。とりあえず鈍化術は禁術クラスの術だから覚えても無闇に使わないでね」
「ありがとうミチト。本当に普通にできるか…いいかしら?」
アクィは初めて気絶封印をせずに行為を終える事が出来て泣いて喜んでいた。
「そんなに?」
「当たり前でしょ!この感じなら普通にまだまだ出来るわ」
ミチトの腕の中でガッツポーズのアクィを見てミチトは「治さなきゃ良かった」と言ってため息をつく。
「なんでよ?」
「アクィはすぐに無理するからだよ」
ここ1番で気遣ってくれる言葉にアクィは、嬉しい気持ちになりながら「ねぇ、ところで禁術ってなんで禁術なのかしら?そもそもあの真式様がなんで絶命術なんて思いつくのかしら?」と聞く。
ミチトは究極と呼ばれる摸式になっても質問してくるアクィを見て完全や完璧と呼ばれるイブだったら言わずとも察するだろうなと思いながら、改めて術人間は世界に広めていいものではないなと思っていた。
「サンフラワーも言っていたけど多分オッハーの薬なんかを飲むと怪我が増えたり注意力散漫になったりする。鈍化させ過ぎれば痛みを感じない人間の出来上がりで戦争に出したら死ぬまで戦うよ。嫌がらせなら行為をしても何も感じなくしたらどう?」
この言葉に戦場にしても愛する人との行為にしても無反応な状況を想像して「あ…、そうね」と言った。
「それに絶命術なんかは、本来いい術なんだよ」
「え?」
意外そうなアクィを見てフォローのつもりで「アクィは剣士が長いから想像力が足りないよね」と言ってから説明を始める。
「これが薬もヒールも効かない病気の人が死にたがった時、剣で介錯は傷も残るしヘタクソだと痛むだろ?だけど絶命術なら介錯に使える。と言うか、真式の奴は介錯目的で作ったんだと思うよ」
「そうね。痛覚封印とかはミチトが改竄術を思いついた結果だし…。あれ?鈍化術は改竄術じゃダメなの?」
「俺は改竄術を模式達に与えたくないんだよ。だから鈍化術を作ったんだ」
「あ…そうね」
会話をしながらアクィはもう一度ミチトと行為をして、今までと違う安心感に喜んだ。
「ねぇ」
「何?」
「スカロ兄様から屋敷を改築して離れを作るからそれまで母様達の遺品を預かれないかって聞かれたの」
「どのくらい?」
「サルバンの私の部屋くらいよ」
「収納術には入るけど…、アクィって万一戦闘中に間違ってその荷物出しそうだから俺もついて行って預かるよ」
「いいの?」
「いいよ。俺の収納術なら問題ないし、万一困ったら天空島に預かってもらうよ」
「ありがとう。嬉しいわ」
これでミチトはサルバン行きが決まる。
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