第3話 鈍化術。

カメリアとシナバーは落下が好きではないがミチトには逆らえずに悲鳴を上げながらトウテに降り立った。


トウテで待っていたアガットはカメリアも自分と同じだった事に少し嬉しそうにして、シナバーはローサの所に行ってマナーの習得具合を見せてアレコレと王都の日々を話す。

ミチトとシック・リミールが与えた治癒院や孤児院なんかの読み聞かせの仕事は天職で仕事の日が待ち遠しくて、もっといろんな本を読んでおきたくて古代語と古代神聖語の本が読みたくなってきたと言ってローサやロウアン達を安心させていた。




「んー…」

悩むミチトにアクィが「難しいの?」と聞いてアガットが「マスター…」と泣きそうな声を出す中、ミチトだけは「いや、サンフラワーをなんて呼んで説明するか悩んで…、後は俺はできても治癒院で魔水晶の子達でも治せるようにする方法を考えてるんだ」と返し、数秒の沈黙の後でアクィが目を三角にして「まず私とアガット、カメリアを治してから悩んで!」と怒る。


ミチトはアガット、カメリアを見た後でアクィを見て「えぇ…、アクィ治すの?」と言う。

アクィはいよいよ怒鳴り声で「本気で治さないつもり!?辛いのよ!」と言う。


ここでリナが「ミチト、大丈夫だよ。アクィは治ったせいでミチトに満足できなくなって結婚を後悔したりミチトを嫌ったりなんてしないよ」と口を挟む。


怒っていたアクィは今の過敏状態が当たり前でそれをやめたら普通が物足りなくなる、そしてミチトに飽きると心配されている事に気付くと顔を真っ赤にして嬉しそうに「やだ…ミチトってば」と言った。


「んー…ふしだらだけど仕方ない」

そう言ったミチトは神経を鈍化させる鈍化術を生み出すと「心眼術!神経の状態が常人と同じなら青!鈍化術!」と言ってアガットの神経が青みがかる紫になるまで鈍化術を当てる。


「やり過ぎても困るからこれで耐えられたらよしにして、ダメならもう少し鈍化術を使うね。やり過ぎて過敏術とか必要になっても困るしね」と言った後でものすごく渋い表情で「それでね」と言ってアガットに詰め寄る。


アガットは少し心配そうな顔で「マスター?」と声をかける。


「俺、早く結果を知りたいんだ。ごめん」

ミチトは謝りながら外で待つイイーヨを呼んで王都に連れて行く。地下喫茶の入り口でオーナーを呼ぶと「もしかしてだけど、この状況ってわかる?」と聞く。

オーナーは「ええ、天使様は宿泊後に落ち込まれていたとの事、そして将来を有望視されている長兄様は先日治癒院で重度の中毒者から何やら聞かれましたご様子。ここに闘神様が居るとなれば…」と言う。


アガットとイイーヨは目を丸くしている中ミチトだけは「流石だな」と言う。

嬉しそうに笑ったオーナーは「本日は直接あのお部屋にご案内をさせていただきます。後。お茶はお勧めをお部屋までお持ちさせていただきます。お支払いは?」と言った。


「お茶まで持って行くのか?ちゃっかりしてるな、シック・リミールだ。事の発端でロエスロエ関係だからな」

「承知しました」


ミチトとオーナーの話はまとまったが理解が追いつかないイイーヨに「俺はアガットを治したんだ。でも微調整とかは本人達の問題で、うまく行ったか知る必要がある。黙ってオーナーの後について行って帰りはロキさんの所で念話水晶で俺を呼んで」と言う。


ミチトの言い分を理解したイイーヨは真っ赤になり、アガットが「あ!念話水晶!私も持ってます!それでマスターを呼べば良かったんですね」と笑う。


「あ…、ヒュドラから貰ったんだっけ?じゃあ後で呼んでよ」

ミチトは言うだけ言うと後をオーナーに任せてトウテに帰る。


問題はサンフラワーでサルバンに嫁いだヒノに相談をすると「ゴチャゴチャ言わずに治しなさい」と言われてしまう。


そうじゃない。ロエスロエの話なんてどうすればいいんだ?という話だったが聞くに聞けずに、ミチトは意を決してサンフラワーを呼んでロエスロエの事を言わずにアガットから神経が過敏になる症状を相談された旨を伝える。


サンフラワーは医療関係で他国と繋がりが出来ている事もあって「うん。神経過敏症だよね。私もなんだよ」と言って「へへへ」と照れ笑いをする。

ミチトはまさかの展開に「え?サンフラワー?」と聞き返す。


「お風呂でシャイニング達にくすぐられてる時に人よりくすぐったかったからオッハーのお医者さんに手紙を出したの。そうしたら神経過敏症だと思うって言われて、オッハーには薬もあるけど身体が鈍くなって眠くなったりお皿を落として割っちゃう事とかあるからって言われて困ってたんだけど別にくすぐったいだけだから放っておいたんだ。マスター治せるの?」

「え?うん。今さっき術を作ってみたんだ」


「じゃあ私にも教えて!後はマスターはせっかちで治ったか知りたいよね?」

「うん。どうするの?」


「治してくれたらシャイニングとアメジストとお風呂入ってくるよ!」


サンフラワーの考えがあるのなら任せたいミチトは「カメリアも同じだからいい?」と聞く。サンフラワーは意外そうにカメリアを見て「え?カメリアもなの?」と言うとカメリアの脇をくすぐる。


少しなのに身を捩ってヒーヒー言って身悶えるカメリア。


神経が過敏、別に確かめようが性交渉のみじゃ無かった事にミチトは「あー…試しようはあったのか…」と言うと手をワキワキさせながら横に居るアクィを見て「アクィ?」と声をかける。


アクィは身震いをしながら「…何その目。ミチトは止まらないから嫌よ」と言って一歩下がるとミチトはくすぐりたかったから「ちっ、アクィ」とだけ言ってつまらなそうな顔をした。


ミチトはサンフラワーに術を施した後で説明をすると「鈍化術は覚えたよ。ありがとうマスター、見ててくれる?カメリアを治すね」と言ってとても丁寧にカメリアを治す。


そしてシャイニングとアメジストを呼んで温泉に行って戻るとサンフラワーとカメリアは「前よりマシだよ」「マスターありがとう」と感謝をされたがアメジストはご不満で「マスター、なんで治すの?身悶えるサンフラワーがとっても可愛かったのに、可愛くなくなっちゃったよ」とクレームを入れてくる。


ミチトが謝っていると念話水晶が反応をするので取ると「マスター!ありがとう!できました!」と言うアガットの声。


出来ましたの声が聞いていてオヤジスイッチも入るし微笑ましくない。いや、微笑ましいが聞きたくない。

最低限の会話で済ますためにも「あー…うん。良かったね。今どこ?」と聞くと嬉しそうなアガットの「イイーヨさんの腕の中です!」と言う返事。


「おいぃぃぃっ、事後すぐかよ。見ないで良かった…。こっちもカメリアとサンフラワーも治ったよ」

「ありがとうございますマスター!これでお嫁に行けます!」


「うん。キチンと身支度整えたら呼んでね」

そう言って話を終わらせたわけだが連絡がきたのは生々しい何かを想像させる3時間後でミチトは渋い表情をしていた。


余談だが、後日「娘の不調にお付き合いありがとう、イイーヨ・ドデモ。ですが約5時間はどうなんですかね?そもそもシックの招待で?はぁ…」とアプラクサスに睨まれて、イイーヨは真っ青になっていた。

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