第2話 副作用。

待ちきれないライブが「アガット?大丈夫だよ。話なよ。アンタの悩みは私達の悩みだよ!助けるよ!」と言うとアガットは涙を流して俯いてしまう。

イイーヨがアガットの手を優しく握りしめて「言いますね」と声をかけた。


緊張の走る中、イイーヨが言ったのはアガットが気絶をしてしまってイイーヨとの性交渉に耐えられなかった事だった。


なんだよ惚気かよ。

一瞬そう思いたくもなった。


イイーヨさんってば凄いのね。

そう言ってしまっても良かった。


だがアガットは真剣そのもので「私が気絶をしてしまって、イイーヨさんは途中なのにやめられて…」と言って泣く。

イイーヨは優しく背中をさすって「アガット嬢、気にする事はないと言いましたよ?」と普段見せない話し方をする。

アガットは「でも、でも」と言ってシクシクと泣き続ける中、イイーヨが気になる事を言う。


「マスター…治癒院でロエスロエの重度中毒者を治しながら、中毒が依存や震え意外にどんな症状があるかを聞いたら気絶をするくらい過敏になってと言うんです」



ミチトは聞き返すように「ん?」と言うと、ここで皆の注目はイイーヨとアガットからアクィに移る。


全員の視線を感じたアクィが「え?何?」と言い、リナが「ミチト、もしかして…」と言うとライブとイブが「うん。私も怪しいと思う」「はい。イブもそう思いますよ」と言う。


ミチトは真剣な表情で頷いて「俺も思った」と言うと急に話の中心だったはずのイイーヨが話題について行けずに「え?マスター?サルバン嬢?」と聞く。



ミチトはイイーヨの疑問には答えずに「えー…っと、やってみるか…心眼術…ロエスロエの影響が残っていれば赤」と言って心眼術を使うとアクィとアガットは真っ赤に光っている。


そして少しだったがライブも赤い。



「ああぁぁぁ…マジかよ」と言って項垂れたミチトは「アクィ、アガットに負けず劣らず真っ赤だったよ」と言い、「ライブも少し赤いんだけど、どこかで飲んだ?」とライブに聞く。


ライブには無論そんな覚えは無いがイブが恐らくと言って、ミチトがアクィを救った後、大鍋亭に帰って来て限界で寝込んだミチトに抱きつかれて一緒に仮眠した時に多分ロエスロエの染み込んだシャツの匂いを3時間吸い込んだからだろうと言う話になった。


「えぇ…ロエスロエって神経を傷つけるだけじゃなくて過敏にしてそれってヒールじゃ治らないのか?あ…傷じゃないのか…傷を治すから治らない…」


愕然とするミチトはアクィから「何とかして」と言われると「ん〜…アガットの為にはやるけどアクィは今のままで良くない?もう何年も過ごしてるしさ?ね?」と返してアクィに睨まれる。


イブが呆れたように「マスター…アクィさんの気絶顔好きだからってダメですよー」と言うとライブが意地の悪い顔で「でも気絶をしないアクィってミチトに需要あるのかな?」と言いリナが「ライブ、やめてあげなって」と止める。


この言葉にアクィは青くなってミチトを見るし、アガットはブツブツと「気絶が好き?イイーヨさんも?」と言っている。



ミチトは「アガットの為にやるかな」と言うとアガットは「マスター…治してくれるんですか?」とすがるように聞く。


「うん。何とかするから少し待っててね」と言ったミチトは「んー…」と言いながら孤児院を見ると、エグゼに汚された術人間達はサンフラワーが真っ赤だったが他の子達は無事だった。


「個人差か…なるほどなぁ。心配だからエンバーの様子も見てこなきゃ。でも行くなら誰か落としたいよなぁ。あ!カメリアとシナバーも見るからあの2人にしよう!」

ミチトはさっさとカメリアとシナバーをソフト拉致して天空島に行くとエンバーとテバッサを呼ぶ。

説明することもなく確認をするとエンバーはやや赤いがライブよりも赤みが少なくて大丈夫そうだったが、カメリアは真っ赤でシナバーは赤く無かった。


1人で結果に対して「んー…これは困ったな」と言うミチト。

エンバーが「マスター?どうしたんですか?」と聞き、テバッサが心配そうに「ミチトさん?」と声をかけると何となくこの場に呼ばれた事に察しの付くかメリアとシナバーは「マスター?アガットの件と何か関係ありますか?」「アガットは大丈夫ですか?」と声をかける。



ミチトは先にテバッサと2人きりになると「テバッサさんはエンバーと結婚しますよね?」と聞く。真っ赤になったテバッサは「お…おう」と返す。



「あの、男女の仲になりました?」


この質問にテバッサは凍りつく。

ミチトの身持ちの硬さと言うかオヤジモードは聞き及んでいて婚前の性交渉はもしかしてアウトで怒ったミチトに通気水晶を奪われて地上に落とされるかもしれないと青くなる。


そして正に昨日もなので「昨日もしました!」とは言えない。

困る中ミチトは「心眼術、テバッサさんがエンバーとしていたら赤、と言うか心読んだけど…」と言う。


テバッサは慌てて「ごめん!でも俺本気だよ!本気でエンバーを愛してんだよ!」と言うがミチトの表情を見てみると穏やかな顔から読み取れるようにミチトの機嫌は悪くない。


それどころか「ふむ。テバッサさん、エンバーとした時にエンバーって早くダウンしません?」と聞かれて、いよいよ何の話かを教わる。


「あの貴族が飲ませた薬物の影響が身体に残ってて過敏になるの?」

「ええ、治し方はこれから考えるんですけど、テバッサさんがエンバーとの行為に問題ありって思ったらエンバーも治そうと思います」


ミチトは3人で固まってキャイキャイ話す義姉妹達を見ながら説明をするとテバッサは「それ、エンバーに決めさせていいですか?俺はエンバーとする事に意味があるから、俺よりエンバーですよ」と答えた。


テバッサの漢気に感謝をしたミチトはエンバー達を呼んで今回のアガットの話をする。

どうやっても隠しようの無い話にカメリアはトウテのサンフラワー以外の子は無事だった事に喜んでいた。


「それでさエンバー、辛いならミチトさんが治し方を考えてくれるって」

「今で丁度いいから平気ですよ。テバッサさんは優しいし、私が辛そうな時は穏やかにしてくれるじゃないですか」


「バカ!言うなって」

テバッサが真っ赤になるがカメリアとシナバーはニヤニヤと見て「ご馳走様」「いいなー。マスター、彼氏欲しい」と言っている。


オヤジミチトは彼氏欲しいの部分はスルーして「まあとりあえずカメリアはアガットとサンフラワー達と同じだから治さないとね」と言って指を天に向けてクルクルとさせる。


「うん。でも経験ないから気絶とかわかんないけど治した方がいいのかな?」

「まあアクィなんてそれで死にかけてるから治すべきだよ」


「アクィさん?」

「ああ、アクィもカスケードに騙されてロエスロエ飲んじゃったんだよ。ちなみに俺が治した第一号がアクィだよ」


「まあとりあえずシナバーは折角だからトウテでうちの子達と遊んでてよ、俺はその間に治し方考えるよ。エンバーとテバッサさんもトウテに行きます?」

「んー…昨日も落ちたからパスします」

「うん。なんかロエスロエの事思い出したらモヤモヤするから家に帰ってテバッサさんに甘えておきます」


ミチト達は再度「ご馳走様」と言って有無を言わせずにカメリアとシナバーを天空島から突き落としてトウテに帰る。

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