第4話 灯浜駐屯海上自衛隊
そこは薄暗い独房だった。こんなものが海上自衛隊の施設としてあっていいのか? フィルは疑問に思う。田井中はまだ寝ている。
「あのー、いつまで寝てるんです?」
「くか?」
「おーきーてー」
「うお、UFOが揺れてる!?」
「あ、起きた」
目覚めた田井中は辺りを見回す。首を捻る。
「うん? コクピット、じゃないな」
「ええ、独房です」
「二人も入ってるのに?」
「ええ、独房です」
なんの冗談だろうか、自分達は何をしていたんだっけと思い返すが田井中は寝ていたため記憶がない。じゃあフィルはといえば。
「よかった、ちょうど私も眠りたかったんですよ。昨日から寝ずの番で」
「はあ、そりゃご苦労様」
「では、おやすみなさい」
「……はい、おやすみなさい」
独房に唯一あるベッドに移動しシーツにくるまり眠るフィル。自称宇宙人は地球産のUFOに乗って無音海岸からやって来た。その美貌を見つめる田井中。自分より少し幼い少女の眠り姿を見て、田井中は固唾を飲み込む。そして、いかんいかんと首を横に振る。
「やましい事はなにもない……やましい事はなにもない……」
念じるように呟く。彼は独房の外を見やる。誰もいない。見張りすらいない。ふと思いつきで独房の牢の戸を開けてみる。すると。
「鍵、かかってないじゃん」
田井中は独房を出た。薄暗い通路を抜けるとそこにあったのは目が悪くなりそうなモニタールームだった。そこに映し出されていたのは――
《群れ》
大群の、大群の、大群の。
「なんだ、これ――」
「知らないのか? UFOだよ。アンドロメダ銀河から来た、な」
「――うわ!? 誰……ですか」
「よう、金髪坊主。俺は
「スマ●プ?」
「おっと、もうそんな世代か」
煙草をふかした、自衛隊らしくないスーツの男は背広を肩にかけながら、ネクタイを緩める。草凪はそこら辺にある事務椅子に座るとそこら辺にあった灰皿に煙草を押し付けた。火が消える音がした。
「あんた、何やってる人?」
「あー……マネジメント、かな」
「……で? そのマネージャーさんがこんなところで何を?」
「おいおい、その前に自己紹介だろ金髪坊や」
「……田井中零士」
「よろしく田井中。俺の事は草凪でいい。んで、だ。まずはお前らが何者か知りたい。ありゃなんだ?」
田井中はモニターの一つを指さす。そこに映し出されていたのは自分達が乗って来た地球産のUFOだった。
「あれは……米海軍の」
「戦闘機だって? 冗談だろ。明らかに地球のテクノロジーじゃない。あれはどう見たってあっち側のテクノロジーだ」
草凪はモニターに映し出された群れを指さす。何処かへ向かう群れを。
「……本当だよ。地球産だって。無音海岸から来たって」
「はあん、無音海岸、ね。そっちもそっちで商売敵だが、そっちがあんなテクノロジーを手に入れてるとなっちゃ話が変わってくる」
「なにが、どう、どこからどう変わるんだよ」
「敵か、味方か、だ」
まるで、生か、死か。を選べと言われたかのような衝撃がその
「フィル……」
「もうダメじゃないですか、ちゃんと番をしてくれなきゃ」
「あんたに聞いた方が早そうだな? フィル? さん?」
「どうかフィル軍曹と」
「そいつは失敬、こっちは草凪でいいぜ。んでありゃなんだ」
再び地球産のUFOが映ったモニターを親指で指し示す草凪。フィルは溜め息を吐いて、告げる。
「試作機第十三号、正真正銘のメイドインアースの宇宙戦闘機です」
「……誰が作った」
「国連が集めた技術者達です。彼らはよくやってくれました」
「フィル軍曹、あんたは開発には?」
「ええ、関わっていますよ」
「えっ」
田井中は中学三年生くらいの少女を見やって驚く。彼女がUFOの開発者?
「ここから先の話は、少し長くなります」
フィルはそう前置きをした。
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