第34話 本当の実力
「やったぜ~~!! 俺の大勝利!」
会場に着くと早速遠藤の威勢のいい勝利ボイスが聞こえてきた。そばに倒れていたのは遠藤と同じ神宮寺チームの武藤だった。
「同じチーム同士の闘いだったのか……」
「ああ、逆に手加減とか考えずにボコボコに出来たぜ」
二回戦までの休憩も兼ねて上のベンチでこれから始まる組手を観ることにした。
「2回戦は誰だ?」
「今からちょうど始まる組手。あのどっちかだな……」
自信なさげな声で指を向けた先には親しみ深すぎる顔がそれも2つ並んでいた。
「久遠と神代!?」
「ああ……というか久遠さん確定だぜこれ……」
「そりゃそうか……。まあ1回勝ったからあの条件は満たすことになる。気楽に行こうぜ」
「……そうだな」
2人が話す声が少し聞こえてきた。
「ごめんね神代さん、手加減はしないわ」
「…………」
「……? 神代さん?」
「前から思ってたんだよね。久遠チームで一番強いみたいに振舞ってて……私の方が強いよ」
いつもと雰囲気が違う。初めて出会った時の切れ味が良い刃のような雰囲気だ。
「なあ遠藤?」
「なんだー?」
「もし格闘技のチャンピオンが不良に絡まれたらどういった反応をすると思う?」
「なんやいきなり。そりゃあボコボコよ! 手も足も出せないね、不良さんが何人いようと」
「……そうだよな」
――刹那――
会場全ての視線が神代と久遠の組手に吸い寄せられた。
2人の裏回し蹴りが同時にクロスを描くように衝突し、その反動に合わせて2人は宙を回転して着地した瞬間に素早く距離を取る――
神代の中段蹴りの連続技が全て久遠に入るとさすがの久遠もバランスを崩し、ペースを持っていかれた。
「っ! 何だありゃ!!」
遠藤がその場で立ち上がる。
「……凄いな」
「お前のチームはどうなってんだ! 格闘技のプロが2人もいたなんて聞いてねーぞ!」
「オレも今初めて知った。特に神代の方はな」
そして神代の方が身長は負けているものの俊敏性や技のバリエーションは完全に優っている。最初はいい勝負だったが今は100%神代のペースだ。
「決まった!」
「神代の勝ちだ」
久遠は口を開けたまま神代の方をただ見つめている。
「ごめんね……今回は私が勝ちたくて?」
「ハァ……ハア……知らなかったわ。あなたの実力……随分隠したがり屋なのね」
「隠してたつもりは無いよ! 機会がなかっただけ」
「そうね……今回は残念だけど。これから頼もしいわ」
「それはどうも。一花ちゃん」
遠藤は席に座り直して下を向いて頭を抱えていた。
「大丈夫か?」
「前に言ったよな……。久遠さんに俺は10戦3勝って……」
「ああ(察し)。2回戦は久遠に勝利した神代ってわけだ」
「俺が勝てると思うか?」
「……(首を横に振る)」
「だよな~……」
「まあ、頑張れ」
――2回戦は瞬殺だった。
「ああ、天道のチームだったんだ遠藤くん」
「ハア、っ……うるせえ!」
試合が終わり、トボトボと戻ってきた遠藤にオレは肩を掴まれた。
「ハア……ハア……! いいか! 天道!」
「……? 大丈夫か? 凄い一撃を食らってたようだったが……」
「このことは絶対左や特に夏目には……! ハア……絶対言うなよ! 俺が女子に負けたということを!」
「誰が女子に負けたって?」
後ろから種目Dの推理を終えてきた左が遠藤に向かってタオルを投げた。
「……ああ」
「どうしたんだ遠藤は? 天道」
「2回戦で神代に瞬殺されてとても悔しいんだと」
「なんだ、顔に書いてあるまんまか」
「ああ、そんな感じだ」
「おい!! そういうお前らはどーだったんだよ!」
「「勝ったよ」」
「マジカ。俺らツヨイナ」
「正確には遠藤を除いた俺らだけどな」
「ゥぐ……」
今朝に夏目と分かれた前のことをすこし思い出した。
[あ、天道ちゃんじゃない♡]
山下に地下1階への階段で声をかけられた。
[山ちゃんか]
[天道ちゃんのチーム、んん~~強いわね! 好きよ!!]
[ああ……ありがとう。山ちゃんも耐久試験か?]
[そうよ♡ こう見えても辛抱強い恋に慎重な乙女なの♡]
[ああ……うん……]
[夏目ーーー!! 容赦しないわよ!!]
[五月蠅い……いつも苗字を叫ぶように呼ぶなと言ってるだろう。もちろん俺も手加減などしない]
[勝った方が黒牙チームの柱、黒牙ちゃんの右腕ってことにしな~~い?♡]
[っ! いいだろう。その方がやりがいも上がる]
昼休憩を簡単にすまし、まだ試験中である夏目がいる地下1階にオレたちは足を運んだ。
「今度は黒牙チーム同士の勝負になりそうだな……」
「ま、夏目を信じようや」
「そうだぞ天道」
「……わかってるよ。もし、夏目が勝てば……」
「「「シルバークラスの称号ゲットだ」」」
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