第25話 クラス対抗試験終了

朝。

オレたち久遠チームは砂浜から少し離れた木陰で試験終了の合図を電子手帳から確認した。あの後バケツリレーを手伝おうと思ったが流石に身体が動かずに断念した。

そして、あの夜。合流した後塩分を取り除くことも考えたが、それは根本的な解決にならないと判断して考えを変えたのだ。


「昨夜の話だが、よかったのか?」

久遠は一睡もせずに今も電子手帳のクラス名簿を見つめている。

「私たちはベストを尽くした。もちろん黒牙くんたちも。参加してない神永くんたちのせいというわけでもない。他のクラスが優秀すぎたわけでもない」

「そうだな、オレたちがこの無人島に来るずっと前からこのクラス対抗試験の勝負は決まっていたってことだ」


砂浜に戻ると全クラスの生徒たちがそれぞれ集まっていた。どうやら学園に帰る前にこの砂浜で結果発表を行うらしい。

先頭に居た黒牙のチームは他のチームよりも疲れてボロボロになっていた。きっと他のチームに長く仮眠を取らせて無理をしたのだろう。


「久遠、不正行為をしたクラスはどーなる?」

「0ポイントよ。黒牙くんたちが報われないわね」

「夜に水を運びに来た千藤に聞いたらバケツリレーの順番は休憩を交えながらローテーションで行ったらしい」

「……手掛かりは無いってことね」

「ねえ、昨日から何話してるの?」

眠そうに眼をこすりながら神代が後ろから声をかけてきた。

「今に分かるさ、結果発表でな」


『結果発表は各自の電子手帳で行う! 順位と配るポイント、不正の場合はそれらの理由など、全部1つのファイルで転送する!』


【結果発表】


1位 Aクラス 獲得 10万ポイント



2位 Cクラス 獲得  8万ポイント



3位 Bクラス 獲得  6万ポイント



4位 Dクラス 獲得   0ポイント



Dクラス、0ポイントの理由は予想通り運ばれたものが水ではなく海水であったことだった。AからCは順当にポイントをもらっている。


「はあ!? どうゆうことです!?」

「誰だ!! ズルして海水を汲みに行ったヤツは!!」

「おいおい俺様がいないだけでこのざまかよ! フフフ」


神宮寺を筆頭にDクラスのメンバーは困惑と怒りを声に出していた。


「うっそ~Dクラス頑張ってると思ったらズルって……最低ね。しかもそんなバレバレのズルを思い付くあたりほんっと探偵に一番遠いクラスね」


AからCクラスの生徒が嘲笑っているのを見て久遠も唇を嚙みしめて悔しがっていた。


「黒牙、すまなかったな。海水を真水にすることは考えても実行できなかった」

「いや……うん。大丈夫だ。途中で気づけなかったミスだよ……」

やはり黒牙は根っからの委員長だな。真っ先に誰かのせいではなく、自分に非があったのではないかと感じているようだ。

「とにかく他のチームを連れて今は船に戻って休め」

「ああ……すまない天道」



船上。神代と久遠にオレとが空きスペースのパラソルで少しだけくつろいでいた。


「海水が入ってて0ポイントなのは分かったけどさ~誰が入れたの?」

「黒澤先生はDクラスの中では誰も海に近づいていなかったと聞いている。結果からAからCが妨害してないこともわかってる。つまり……」

「つまり……?」


D


「!?」


オレも久遠もいきなりその結論を導いたわけじゃない。夜中にずっと考えを巡らして全ての可能性を考えては潰していった。そう思いたくなくても最終的に残ったものが真実なんだ――。


――そしてオレはあのドラム缶を全てひっくり返して0ℓにして、最下位の4万ポイントだけでも貰おうかと考えたが久遠がそれは応急処置にもならない邪道だと遮った。


……


[ひっくり返す? ダメよ。もしそうしたらクラスのみんなは何を思う? 標的はひっくり返したあなたのいる私たちのチームに向けられて海水を入れた本当の犯人の残像すらなくなっちゃうのよ!]

[そうだな、ならいっそのこと全員で犯人探しにシフトさせた方が今後のためにもなる]

[ええ、もっと未来を考えないとDクラスは内部から崩壊してしまうわ]


……



「おい、お前たち! こんなとこで何辛気臭い会話してやがる」



反対から水着姿の黒澤先生がビーチボールを抱えて話しかけてきた。奥から同じく修多羅が手招きしてる。


「先生~!」

「向こうのプールでDクラスのみんなで遊んでるぞ~! 早く水着に着替えてこい」

てっきり全員疲れ果てて個室でぐったり寝ているのかと思っていたがあの結果のこともあり今は全部忘れて遊びたい気分なんだろう。

「行くか久遠……」

「……」

「ん? どーした?」

「……水着なんて持って来てないわよ」

「安心しろ豪華客船みたいなもんだ。何でも好きなの借りられるぞ」

「へーあっそ。良かったじゃない。じゃあ気が向いたら行くわ」

「?」

絶対来ないやつだ。しょうがない……。

「何よ」

「オレが選んでやろうか?」

「わかった! 行くから!」


オレたちは早すぎる夏のバカンスをクラスのみんなと楽しんだ。

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