第16話 運命の結果発表

結果発表の朝。いつも通りの時間に学校に行くと既に結果発表を待っている生徒が教室の前に集まっていた。

久遠、神代、修多羅の3人だけが落ち込んだような表情で後ろの方の隅に集まっていた。


「おはよう」

「……もうすぐ中間試験の結果発表よ」

「元気ないな、そんなにテストで実力を発揮できなかったのか?」

「そうね。もう言い訳する気も起きないわ」

珍しく応えたようだな。正直オレもだ、まさかこんな序盤からクラスのみんなが団結してオレたちを落そうとしてくるとはな。これからずっと一緒に過ごしたり時には他のクラスのやつらと協力して戦わなくちゃいけないってのに気まずくなっちまうよな。

「ま、今回はしょうがないよ! な? 修多羅」

「はぃ……。これからいくらでも挽回するチャンスはある」

「そうだな」

そして開示のチャイムが鳴る。

前の黒板に電子文字が浮かび上がる。


[順位発表および追加ポイント公開]


いよいよだな。しかもここで初めてクラスのチームの大体の立ち位置が決定されることになる。つまり、クラスカーストってやつだ。そのピラミッドが決まればおそらく他クラスではその上位のチームリーダーが実質黒牙、委員会のような立ち位置となる。これからのクラス戦などで指揮を執る元帥というわけだ。


「僕たちはルールの下作戦を練った。そしてお願いがある、久遠さん。どうか僕たちを恨まないでほしい。これからクラスは1つにならないといけない。一丸となるには僕たちのクラスはQ.E.Dが邪魔だった。それをこれでチャラにしたい。それだけなんだ?」

「委員長にはまさかそんな傲慢な権利があったとは知らなかったわ」

「あくまで民主主義。これがみんなの意見だったんだ。多数決は時に残酷な結果を生むかもしれない。だが、社会の平等性の信頼はいつの時代もこのように成り立っているんだ」

もう発表だというのにクラスのみんながこの2人の会話に注目している。クラスがまとまるときだからな。いや、誰がトップに君臨するべきなのか、か。


[最下位から発表]


「委員長、ちょっと言い過ぎだよ……」

千藤が間に入って2人の距離を空けた。

千藤はおそらく本当に中立派なんだろう。中立派だからこそ委員長と協力した。神宮寺も同じ理由だろう。先のQ.E.Dで失ったものはポイントだけじゃない。おそらく委員長のようなピンチの時の救世主がほしかったといったところか。

「千藤さん、すまない。とりあえず僕らは結果をメモしなくては……」

委員長は久遠を押しのけるようにまた教卓の前へと行ってしまった。

「ごめんね、久遠さん、天道くん」

「別に……」

バチバチだな。



[発表!]


――ついにか。


安心しろ、久遠。お前は今回苦手なリーダーとしての仕事をやってのけた。一番の敵は自分という言葉があるがお前はその一番の敵に勝利した。

そして、委員長に千藤。確かに中立は大切だ。だがこれを仕掛けた時点で既に中立などなくなった。そしてそのオレたちに仕掛けたヒモに自ら足を絡ませたんだ。



[結果発表! 1D中間試験順位及び追加ポイント!


   




    2位 神永チーム -10000




    2位 神宮寺チーム -10000




    2位 千藤チーム -10000




    2位 黒牙チーム -10000




    1位 久遠チーム +40000       




それぞれの追加ポイントがチームポイントとして入り

セルフマネーシステムにチームポイントを4で割った

ポイントが入ります。                      ]



「何だよ……これ……」

「5位!?」

「マイナスって……」


前の方から不平不満の声が聞え、しばらくしてその矛先がオレたち久遠チームに向いた。


「どういうことだい……? 久遠さん」

「……私も知らないわ」


探偵は0から1を生み出すことはできないが、1を1だと証明することができる。これには続きがあって、その証明の仮定や方法は問わない、ということだ。


「凄いな久遠。お前、満点だったのか?」

「そんなわけないでしょう? そうだとしても他のチームの-10000ってのは説明がつかないでしょ」

久遠はいつにも増して怖い目でオレを睨んでいた。

「へいへい……説明するか」

「当たり前でしょ」

そしてクラスの鋭い視線は久遠からオレにとすり替わった。

一度目を閉じて、深呼吸――

オレは露骨に冷めたような表情を見せ、1から説明を始めた。

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