第15話 試験休み
次の日は規則として試験休みとなる。久遠は神代と修多羅を部屋に呼んで今後のクラス順位の予想を話していた。
「天道は?」
「彼は何か用事があるみたい、私たちだけで話しましょう」
「結果はまだわからないけど手応えはどうだった? 二人とも」
神代は国語担当、修多羅は化学・物理担当だったわけだが首を横に振っていた。
「……そう。実は私も」
「難しかったですから! しょうがないですよ! きっと他の人たちも……」
「いいえ、天道くんに教えてもらったけど、どうやらかなりマズイ状況よ……」
久遠はありのままのことを包み隠さずに2人に話した。委員長のチームをはじめとするその他のチームはおそらく満点で仕上げてくること、そして私たちがはめられたという事実。神代はまたかという表情を浮かべ、修多羅は無言でしばらく黙っていた。
「ごめんなさい、リーダーとして考えが足りなかったわ」
「ううん、いいの。まだこれからもセルフマネーシステムを増やせる逆転のイベントはあるだろうし……これからだよ」
「……」
同刻。1D教室にて。
「今日は静かだろ?」
黒澤先生はいつものようにぐったりとした態勢をとっている。
「誰も居ませんねからね今日は」
「お前以外はな」
「そういえばウソだったんですね。あの職員室での会話」
「さあな」
「もういいですよ。委員会ですか。良い取引だったんですね」
「さあ? 取引先との契約は結果発表までだ」
「それ……もう答えですよ」
明日が朝一番で結果発表がそれぞれの教室で行われるのだと黒澤先生は教えてくれた。
「この後はどこへ?」
「職員室ですかね。ちょっと用事がありまして」
「この学校のお偉いさんに文句を言いにか?」
「いえ。強いて言えばチームのためってやつですよ」
教室の用事を終えた頃には夕方になっていた。そのまま急いで職員室に行き、用事を済ませた。
――あれは、1Aの生徒か。
反対側にある1Aの靴箱の前に手や足に包帯を巻いた女子生徒が座っていた。
「その、大丈夫か? 怪我しているようですが松葉づえとか車椅子は使わないのか?」
「あなたは」
座り込んでいた少女を覗くと日本人形のような黒のショートカットの小学生くらいの体型をしていた。いつもすぐに心の中で可愛いとつぶやいてしまうオレもこの人のことはおそらく初対面だが少し不気味だと思ってしまった。
いかん、中間試験で人間不信になっているのかな……。
「1Dの天道唯人。君は?」
「1Aの天道
今、天道と言ったか? おかしい。いつの間にオレに妹ができた? 一緒なのはたまたまかと思いたいがそんなに有名な苗字ではない。探るか……。
「天道? 一緒ですねー。すごい偶然だー!」
「棒読みですね。それに偶然じゃないですよ? 昔会った時のこと、覚えていますか? あの頃にはこの包帯は無かったですけどね」
――昔?
小学生の、あの頃か……?
「あの公園でか?」
「はい。魔法使いにならなかった探偵さん♪」
「そうだったのか。かざりって名前だったのか……。あれから全然会わないから……思い出せなくて」
「……フフ。変わらないね」
飾はその場になんとか立つと手足が震えて苦しそうだった。
「おい……大丈夫か?」
飾はニヤリと笑い、袖から出した錠剤を口に流し込んでみせた。
「……?」
怪我じゃないのか? 何かの病気かそれとも……。
「御父様によろしくお伝えください」
そう言い残して彼女は軽い足取りでその場を去ってしまった。
感動の再会にはならなかったな。この学校に入ってから気になることばかりだ。
1Aか……。他のクラスにもおそらく厄介なやつらがいるんだろうな。ここから大変になるぞ、久遠リーダー。
【中間試験ルール:5科目試験。順位はチーム合計点数ではなくチームメンバーの科目最高点の合計で決まる。なお、これは学年全体で行われるためチームのクラス内順位だけでなくクラスの学年順位も競う。授与されるのは科目順位1位該当チーム、クラス1位順位クラス、クラス内順位1位チーム。賞金はそれぞれ5000円。またチームにはその合計点数分×10が入金される。※複数該当可
チームの中で満点が居た場合、+40000円ということになる。
不正が教師に発覚した場合は獲得した合計から-50000円とする。
また、赤点は10点未満。追試験申請金額は1科目2000円とする。】
「何度見返しても面白いな」
「面白い?」
後ろから上裸の体格がいい男子生徒と黄色いツインテールの女子生徒が並んでやってきた。
「オマエ、イッショ」
日本人じゃないのか。それと何で上裸のムキムキ野郎の隣でこの女はカップに紅茶注いで飲んでるよ。どういうことなんだよ。
「ガンゲルはあなたもそう思ってるのだろうと言ってます」
「は、はぁ……?」
翻訳? なんか癖強い。いや今思ったけどさっきの包帯&錠剤幼馴染もなかなかだったよ!
「……またいずれ会いましょう? わたくし達は1Bの
帰ろう……。きっと疲れがたまってるんだな、オレ。
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