第14話 試験開始
中間試験前日の放課後。オレは1人で職員室にいる黒澤先生を訪ねた。
「天道か。どーしたいつにもなく真剣な表情で」
「貸しの件、覚えてますか?」
「ああ、覚えてるとも。おかげでまだ俺はこうやって今日もカジノに通うことができる」
「……中毒ですよねそれ」
「お前が言いたいことはそんなことじゃないだろ? 明日の中間試験のことだ。おそらく内容は、」
「「中間試験の全科目の解答をください」」
……バレバレだな。だが貸しは貸し。それに久遠に頼まれたことだからな。
「それは無理な相談だな」
「なぜ? 貸しと今の条件の重さがイコールじゃないということですか」
「そうじゃない。学校の決まりだ。試験関連だけはセルフマネーシステムなどを用いた取引はできない。よく考えれば当然のことだろう?」
「そうですか」
悪いな久遠、神代。折角お前らが手にしたアドバンテージはここでは使えなかったみたいだ。
教室に戻ると神代が待っていてくれた。
「あ、天道。久遠と修多羅はさっさと帰っちゃったよ」
「何か言ってたか?」
「自分の力で何とかなるわ! だってさ」
お見通しってか。ま、あいつらしいな。自分の実力で上位を掴むべきだと考えてるのだろう。
「修多羅は?」
「僕はちょっと忙しいので……だってさ」
何でいちいち真似するんだ。似てるけど……。
「そうか、じゃあオレたちも帰るぞ。ここに長居しても邪魔になるからな」
「え、誰か来るの?」
「あー来るぞ。夜は幽霊とかな。中間試験の点数を食べちまう妖怪もな……」
「はいはい」
テスト当日。入学試験以上の緊張感。警備員が廊下を巡回、教室天井の中心には360°監視カメラ、床にはお掃除ルンバのような機器が4台静かに巡回している。前の教卓には珍しくスーツを来た黒澤先生が威厳を見せつけている。
カンニングは難しそうだな。消しゴム落としただけで追放されそうだ。
1時限目から国語、数学、化学・物理。昼休みを挟み、午後は残りの社会、英語を実施という1日をフルに使う流れだ。昼休みは原則としてトイレ以外教室から外に出ることはできず、トイレには警備員2人が同行しなければならない。
まるで捕まったみたいだま。探偵の学校とは思えないほどに。
「机の中に何も入っていないか、机に落書きが無いか確認してくれよ」
みんなが机を念入りにチェックした。
「試験開始――!」
そして黒澤先生の合図とともにテストが始まった。国語は制限時間60分。現代文、古文、漢文で構成されている。
現代文の得点比率が高いな、特に小説の。特に久遠にとっては最悪といったところだろう。
60分があっという間に過ぎ去り、答案用紙を奪われるかのように回収され、そのまま休憩時間に入らずに数学へと移行した。
主に数学1Aの範囲で問題も少ないが難易度はかなり高いように感じた。
さっきからずっとオレは問題をあまり見ていないのでよくわからない。カンニング、不正行為が既に行われているな……。
委員長のチームだな。ここから斜め方向に見える離れた席に座っているチームメイト。明らかに問題の枚数がおかしい。おそらくカンニングペーパーだな。敢えて問題用紙のように大きく広げて、堂々とした態度を見せていることで逆に疑われない。技術的なカンニングではない、心理的な方を選んだのか。
「残り30分~」
黒澤先生があいつの横に来た。どうする?
――ん?
見ていない……? 明らかに今黒澤先生の視線ははあいつの席を飛ばした!
取引の先を越されたってわけだオレは。委員会……負けたよ。そして黒澤先生。あの貸し、とんでもなく大きく膨らんでますよ。
横目で久遠の方を確認するとどうやら苦戦しているらしい。ペンが進んでいない。
そんなこんなで午前科目が終わって昼休み。
「どうだ久遠」
「かなりマズイかも。難易度は高くても受験くらいだと思ったけど難関大学の二次試験以上って感じね……」
「そうか。まあ問題は平等だ。他の奴らもきっと苦戦しただろう」
「他のチームは?」
「おそらく委員長のチームが黒澤先生と取引を結んでいるらしい。おそらく全科目満点で仕上げてくるだろうな」
「全部満点……」
久遠は驚きを超えてもはや呆れたような顔を見せている。
短い昼休みが終わり、また午後の問題用紙が配られる。
「午後の試験開始」
始まった瞬間、オレは早速クラスの違和感に気づいた。
斜め前のこいつは確か千藤のチームの。こいつも問題用紙が多いな。どういうことだ……? オレは周りをよく見渡すと久遠チーム以外のメンバーが問題用紙が多いことに気づいた。
――久遠。オレたちははめられた。前のQ.E.Dでオレらのチームが少し頭1個抜けていると予想した他のやつらはオレたちを下げようと企んだってわけだ。同率1位はおそらく認められる。全て満点の場合、ルール上40000円獲得される。
オレたちがどんなに頑張ってもその差は他のチームと30000円は最低でも……。
やっぱりこのままだとヤバいな
中間試験前日、生徒会室。
「柊、1Dの天道唯人くんと会っていたみたいだね」
「あっはい。買物の帰りにたまたまです……」
「彼をどう思う?」
「鋭いというか抜け目ないという感じですかね」
「抜け目ない、か。言い方だな」
「?」
「人の弱みを利用するのが上手い。探偵というよりかは詐欺師だよ。あのやり方は」
「会長はそれが勝つためなら良いことだと思ってますか?」
「さあな。ただあいつは勝つことだけを考えていないと思うぞ?」
「……?」
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