第22話 想いの重さ違い?

「岸沼君が心残りだよ。一目惚れって言うのかな? 正直、転校初日から、ずっと好きだったから」


 溜め息混じりに本音を語った志原君。


 あれっ……?

 私、今まで、


  志原君の想い < 岸沼君の想い 


 と思っていたんだけど......


 もしかして、違っていたのかな?


  志原君の想い = 岸沼君の想い


 とか……


 まさか


  志原君の想い > 岸沼君の想い


 なんて事も有り得る!?


 今更、そんな事、分かっても後の祭りかも知れないけど……


 私の先入観と妄想が強過ぎているせいも有って、もしかしたら、最初に志原君から聞いていた話とは、これって、どこか辻褄が合わなかったりしてない?


「あの~、志原君、もう一回確認させてもらっていい? 志原君、さっき、岸沼君に一目惚れって言っていたけど……」


 それは、私の聞き間違いではないよね……?


「そうだね……最後だから、もう、隠さないで話すよ。最初に僕が、綿中さんに交代頼んだ時の話は、少し事実を捻じ曲げたんだ」


「えっ、あれって、事実では無かったの……?」


 あ~、どうしよう!!


 私、岸沼君に志原君とキスとか何とか、もう既に色々言っちゃった後なのに!!


 違っていたなんて、今さら言われても!

 何だか、私、ただの恥ずかしい奴になってしまう!


「全部が違っていたわけではなくて、多少、事実の部分も有るけど、流れを随分脚色して話してた」


 キスには、岸沼君も反応していたから、多分、そこは事実だとして……

 流れが違うって、具体的にどの辺りなのかな……?


「ちょうど岸沼君が転校して来た頃、僕の親の転勤が決まって、自分の中では大荒れ状態真っ只中だった」


 えっ、こんな天使のような志原君が、大荒れって……

 全く想像も出来ないけど……


 まあ、確かに、この学校が気に入っているのに、急に転校が決まったら、自分も困ってしまうし、残りたい気持ちが強くなるかも知れないけど……


「慣れている所からの転校は、イヤだよね……」


「親が僕の喘息に良かれと思って、ずっと以前から、北海道への転勤を希望していたけど、なかなか叶わないままだった。だからまあ、卒業までは、ここにいられるかなって想像していた。やっぱり馴染んだ土地で、友達やクラスメートに囲まれて卒業したいから。けど、急に転校する事になって、ちょうど、そんなタイミングで転校して来た岸沼君を見たら、余計に去り難くなった」


 それじゃあ……やっぱり、岸沼君からではなくて、志原君が一目惚れしてアプローチしていたんだ!


「岸沼君には、志原君から……その……」


 確認したいけど、相手が男子同士のデリケートな関係なだけに、女子の私からは、こんな内容は口に出しにくい。


「そうだよ、完全に一目惚れ! もしかして、綿中さんもかな?」


 やっぱり隠す事無く、アッサリと自分の気持ちを認めた志原君。

 でも、私まで、そうだとしても、一緒にされてしまうのはどうかと……


「私は別に一目惚れってわけじゃなくて……見た目は、確かにイケメンだけど、見た目だけじゃなくて、さり気無い優しさとか有る人って分かったから……」


 そんな事をわざわざ志原君に説明しなくても、きっと志原君の方が強く感じられているはずだけど……


「そうだよね。僕が『微笑み係』として、転校初日に校内案内していたら、岸沼君と一緒にいる緊張感からか、運悪く喘息の発作が出てしまって……その時、引かれて避けられてしまうかなと気にしていたけど、その真逆で、すごく心配してくれたんだ」


「岸沼君も転校初日から、志原君の事が気になっていたんだよね。なんか両想いってムード漂っているもん、2人」


 悔しいけど、認めているようにそう言った途端、志原君が急に爆笑し出した。


「志原君……?」


 何……?

 私、何かヘンな事、言ってた……?

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