第21話 ヤケ気味の志原君
「どうして、ズル休みなんかしたの?」
2人に比べたら、クラスメイトの女子達からハブられて、学校が憂鬱になっている私の方が、よっぽどズル休みしたいんだけど!
それなのに、私と違って、矛先向けられてない志原君の方が、ズル休みするなんて!
第一、ズル休みしたら、大好きな岸沼君にも会えないのに!
「綿中さんはさ、自分では、どうにも出来ない流れっていうのを感じられて、何だか全てがイヤになる時とかって無い?」
えっ……?
全然悩みなんて無いような感じで学生生活を満喫してそうな志原君が、ズル休みするほど悩んでいる事が有るというの?
天使系の癒し系の外見をしているクラス1の人気者だし、成績も良いし、岸沼君とだって相思相愛で……
私が欲しくて頑張っても、得られないものばかり揃っている志原君が!!
「そんなの、私なんて、しょっちゅうだよ! いつも、どうにもならない分かり切っている事ばかりしか無いから、イヤになって来るんだから!」
心外な事を聞かれたから、思わず、志原君に向かって愚痴るような感じで言っちゃったけど……
そんな私に、アルカイックスマイルのような癒しパワー全開の笑顔を向けて来る志原君。
こんな風に、温か味の有る表情が誰に対しても出来るんだもん!
岸沼君も、釘付けになっても当然だよね……?
私なんかのぎこちない笑顔とは、比べ物にならない……
こんな笑顔してくれる人が身近いて、自分を慕ってくれているのなら、私だって、ずっとそばにいたくなってしまう!
「そうなんだ……僕から見ると、綿中さんが羨ましく感じるけど。なかなか上手くいかないものだよね」
えっ、あれっ……?
聞き間違えたのかな……?
今、志原君、私の事が羨ましいって言わなかった……?
「あの、志原君、今......」
「あっ、そうそう、ついでに言ってしまうと、僕、その進路希望調査のプリントもらっても、もう意味無いんだ!」
えっ、何……?
さっきから矢継ぎ早に、志原君が意味不明な事ばかり告げて来るんだけど……
「志原君、意味が無いって……?」
「僕は、もうすぐ、引っ越す事に決まったから!」
どこか諦めたような、スッキリした表情になっている志原君。
「引っ越す……って? 引っ越し先からは通えなくて、転校するの?」
「通えないよ、引っ越し先は北海道だから! 僕の喘息にも良いし、元々、大学は北海道のつもりだったから! それが少し早まっただけなんだ」
やっぱり志原君、喘息だったんだ……
こんな都会にいるよりは、空気の良い北海道の方が、喘息には確かに良さそう。
だけど、そんな突然、転校だなんて……
妙に自暴自棄っぽく感じられたのは、そのせい……
「志原君が転校したら、微笑み係、私1人になってしまうの心細い……」
今まで、私に落ち度が有っても、この天使のような志原君の笑顔で、随分救われて来たのに……
もう、志原君に頼れなくなるんだ......
「何とかなるよ! 綿中さん、もう慣れているし」
そうだよね……
志原君だって、新しい場所に飛び込む不安が有るんだから、私が、そんなワガママ言ってられない!
志原君が、安心して転校出来るように、私は微笑み係なんだから、『私に、任せて!』って、笑顔で言えるくらいじゃなきゃダメなんだ!
「うん、頑張るね! 志原君が転校したら、岸沼君はすごく寂しがるね」
志原君がさっき言っていた、どうにもならない流れっていうのは、転校の事だったんだね。
学校で、少し前に聞いていた、あと半年という期間は長い……って言っていたのも、その時から気になっていたけど……
その時点では、もう志原君の転校の件は決まっていたから、そう言っていたのかも知れない。
せっかく岸沼君と志原君、相思相愛で良い雰囲気だったのに、こんな形で、引き裂かれてしまう事になるって……
私が一人試行錯誤しながら暴走していたのは、結局、取り越し苦労にしかならなかったんだ……
そんな見え透いた計画を練らなくても、この2人には、そんな自然に別離が用意されていたんだ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます