第8話 陰口
……なんか、いつもより爆睡していた感が有る朝。
気のせいか、カーテンの隙間から見えているお日様の位置が高くない……?
7時10分
枕元の置時計の文字が、いつも見慣れている数字とは、かなり違うんだけど!
今のって、見間違い……?
ウソだよね?
こんなの、ウソだと願いたい!!
どうして、アラーム鳴ってくれなかったの?
セットし忘れた?
40分も寝坊しているなんて!!
こんなの初めて!!
『微笑み係』の件で色々有り過ぎて、最近精神的に疲れているせいで、こんなに眠りこけてしまったんだ~!
お父さんは夜勤だし、お母さんは、早出だったから、今日みたいな日は、スマホのアラームもセットしなきゃならなかった!
この時間なら、もう、真緒が待ち合わせ場所で待っているはず……
連絡しなきゃ!
『真緒、ごめん! 寝坊した~!! 先行ってて!』
すぐ、電話に出てくれて良かった!
私はたまに、慌てて家にスマホを忘れる事とか有るけど、しっかり者の真緒は今まで忘れた事が無いみたいだから助かった~!
え~と、もう、朝ご飯は食べている余裕なんか無いし……
寝坊したショックが大き過ぎて、頭が回らないけど、とにかく急いで授業の用意して、ここから走って行かないと、遅刻しそう!
髪の毛は、もう手櫛でいいから、さっと結ぼう。
ゴム、昨日戻ってから、どこに置いたっけ?
この際だから、新しいの出そう。
いつもなら、真緒とノンビリ話ながら歩くけど、今日は、自転車に乗った方が確実だね!
……と思ったら、久しぶりだから、いつの間にかタイヤの空気が抜けてたみたいで、ガッタンガッタンいうし!
何だか、踏んだり蹴ったり......
仕方ないから、走ろう!
リュックはかなり重いけど、朝食抜きだから、走っても、お腹が痛くならない事だけは良かった。
あとは、一気に階段上ったら教室。
な~んだ!
ずっと走ってたから、思ったより楽勝だった!
もう少しスピード上げては知っていたら走っていたら、通学途中で真緒にも追い付けそうなくらいだったのかも......
「あれっ、真緒、1人? 季里は?」
「季里、寝坊したみたい。先に行ってるように言われた」
教室に入ろうとすると、クラス1のスピーカーの
イヤな予感がしてきて、思わず、教室に入る足が止まった。
「そういえば、季里って、昨日の放課後、西棟の方で見かけたけど、マジ信じられない! 岸沼君と一緒にいたんだけど、季里、岸沼君の学ラン着てた! これ、見てよ」
よりによって、口の軽い反川さんに見られていた!
しかも、写真まで撮られていて、クラスメイト達に見せて大騒ぎになっている。
なんか、ますます教室に入り難くなってしまった……
「学ラン? ヤバイ趣味してね?」
「ヘンに似合ってて、マジで、ウケるんだけど~!」
登校済みの女子達の大爆笑が響き渡った。
「季里ってさ~、『微笑み係』に選ばれたからって、自分は可愛いなんて勘違いしてない? クラスの2大人気者の志原君と岸沼君に、急接近してるしさ~!」
「勘違いし過ぎじゃん! 志原君は、誰にでも好かれる天使キャラだから、正々堂々と『微笑み係』に就任したけど、季里は違くね?」
いつもは仲良くしているはずの女子達の口々から、私の悪口らしき言葉が吐き出されている……
どういう事……?
志原君は、適役として就任していたけど、私の場合は、やっぱり違ったの……?
「季里って、あの通り、見た目からして、お色気ゼロじゃん! 『微笑み係』の男子と一緒でも、イケメン転校生が来た時でも、相手が季里を好きになる心配なんて、まず無いから、裏で女子が手を回して『微笑み係』にさせただけなのにね~! 勘違いして、自分の実力で『微笑み係』になれたくらいに思ってるし~!」
私が『微笑み係』に選ばれたのは、外見的に男子から好意を寄せられるような心配が無いからだったの......?
「ガチで自分が可愛いから選ばれたって、
「そうそう、この前も、私が一緒にいる時に、志原君に話しかけられたんだよね! その時なんて、2人っきりで話したいみたいな感じになって、私だけ退散させられて、ムカついた!」
えっ、真緒……?
ウソだよね……?
真緒まで、私の事、そんな風に思っていたの……?
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