第2話 初日早々まさかの……

「待って、志原君! ハグは、ちょっと……女同士でもハグって、それは、私だったら抵抗有る~!」


 ハグすると、必然的に胸同士があたる!


 私は貧乳だから、そんなに胸元が相手にあたる事を意識しなくていいかも知れないけど……

 その相手が巨乳だったらって考えると、ハグは警戒せずにいられないんだけどな……


 そういうのって、他の女子は、女同士だと案外気にしないもの?

 私が、ヘンに神経質に意識し過ぎなのかな?


「あっ、そうか! 女子って、男子と体形違うから、そういうのイヤかな? 僕は、別に男子にする分には抵抗無いけど。もし岸沼君の立場で、今回みたいに担当チェンジで、女子にあたった時は、やっぱり、嬉しいような戸惑うような……かも知れない」


 こんな中性的な感じもしている志原君なのに、女子とハグ出来たら嬉しいとか、戸惑ったりするかもって感じになるんだ~。

 男子人気もスゴイし、本人も『微笑み係』のせいなのか、素でなのか知らないけど、あの癒し全開スマイルしまくっているし……


 実のところ、ゲイなのでは……?


 なんて思ったりしていたけど……

 やっぱり、志原君は、女子が好きだって事だよね!


 志原君の事が大好きな真緒に教えてあげなきゃ!

 

「う~ん、どうしよう? 時と場合によっては、それが上限みたいな感じで、ハグも有りって事にする? それ以上なんて事は、まず無いと思うけど、有ったとしたら、それは、もうペナルティだよね~!」


 冗談のつもりで言ったんだけどな……

 意外にも、志原君が、さっきよりモジモジと頬を赤らめている。

 それって、どういう事……?


「それが……岸沼君さ、どういうわけか、キスしてきて」


 私が冗談のつもりで言ったからって、冗談で返された......とか?


 どう見ても、かなり悩まし気な志原君のままだし。

 冗談なんかで、今、こんな話を振って来ないよね?


「えっ、キスって! オデコとか、ほっぺにだよね、モチロン?」


「いや、mouth to mouth」


 え、え~っ!!

 まさかと思っていたけど、口づけなんて!!


 男子同士の……

 それも、志原君と岸沼君の口づけって……


 腐女子じゃないつもりだけど、想像しただけで、何だか絵になり過ぎて、私までドキドキしてしまう!


「も、もしかして、岸沼君って、ゲイなの?」


 もしも、岸沼君がゲイだとしたら……

 志原君が狙われたとしても、それは、当然の成り行きっぽい!


 むしろ、ゲイではなくて、志原君が可愛い男子だからって、ただの好奇心でキスしたとしたら、断じて許せない!


 志原君をお気に入りの男女かなり多いんだから!

 真緒だってそうだし、私だって、別に恋愛感情は無いけど、志原君は可愛いし、とても癒される存在って、ずっと想ってたし、今も想っているもん!

 

 誰に対しても平等に天使のような癒しの笑顔を降り注ぐ、我が校きっての美少年である志原君。


 その志原君をこんなにまで悩ませているなんて!

 それは、とても罪深き事!!


「ゲイなのかな? 尋ねると、僕もそうだと思われてしまったりして、余計、マズイ方向に進みそうだから、確かめられなかった」


「うん、そうだよね……あとは、考えられるとしたら、もしかしたら、岸沼君は帰国子女とかなのかも。そういうスキンシップの盛んな国で生まれ育って、キスは挨拶みたいな感覚とか?」


 そういう育ち方をしていたなら、相手が男でも女でも、普通にmouth to mouthでキスしても不思議は無いかも。


「僕もそれ思った。でもさ、聞いてみてイエスだったらいいけど、違った場合、微妙な感じだから......」


 志原君が、確認出来なかったのも無理は無いかも。

 ノーだった場合……

 岸沼君が、そんな習慣が無い境遇で育っていながら、望んで志原君にキスした事になる。

 それを確かめるのって、勇気がいる事だよね。


「分かった! だから、私の出番になったって事だよね? その流れだと、女子には興味無い可能性が高いから、私が『微笑み係』として接する方が色々聞きやすいと思う! うん、任せて!」


「ありがとう、綿中さん!」


 志原君の表情がパアーッと明るくなった。


 こんな可愛い笑顔で、喜ばれたら、私も思わずキュンとしてしまう!

 志原君マジック、やっぱりスゴイ!


 お~っと、志原君スマイルに見惚れて、大事な事、忘れてた!

 真緒から頼まれていたんだよね。

 いつか機会が有る時に、志原君に是非聞いて欲しいって事。

 交代してもらったという負い目が有るから、志原君、きっと快く答えてくれるよね。

 そういう負い目なくても、志原君なら、イヤな顔しないで答えてくれそうな気もしないでもないけど……


「交代する代わりに、志原君の事、少し教えて欲しいんだけど……」


「えっ、でも、僕達は……」


 あっ、私が知りたがっていると勘違いされちゃった!


 まあ、無きにしもあらずかも知れないけど……

 そんな風に、志原君に言われると、そんな気持ちになりかけてしまって、こっちまで頬が熱くなってくる!

 これじゃあ、ますます勘違いされてしまいそう!

 

 そう、私達『微笑み係』は、私達が決めたルールだけではなく、他にもクラスメイト達によって決められた厳格なルールも別に有る。


 そのルールの1つが、任期の1年間は、誰とも交際禁止になっている事!

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