第2話 白鳥茜

 茜は、知らない番号の点滅するスマホを通話にした。

『こちら警察署の者ですが、白鳥果歩さんのお母さんですか?』

 警察が何の用事だろう。でも、これは世にいうオレオレ詐欺かもしれない。

「いえ、違いますが、果歩に何かありましたか?」

『あなたは、果歩さんのお母さんではないのですね?』

 後ろから、俺が話すよと、宮人にスマホを奪われた。どちらさまですか...果歩の父親です、はい、はいと返答をしている。電話が終わって、宮人と目が合った。

「何の話?」

「果歩が亡くなったから、安置所に来てほしいって」

「何を言ってるの?」

 鼓動が早まっていく、頭には混乱するように脈が打たれていく。

「とりあえず、出かけよう。」

 宮人は動揺もせず、淡々と出かける準備を始める。果歩が死んでいるはずがない。昨日、電話で話したばかりだ。また、あの同僚の下釜野乃花という同僚に何か言われたのだろうか。

「泣かくなよ。出かけるぞ」

 宮人に言われて、茜は手で顔を覆った。知らないうちに大量だと鼻水が出ていた。 宮人に、タオルを渡され、それで顔を拭く。行くよと何度も急かすように言われ、警察の安置所に向かうことになった。


「もしかしたら、まだ果歩は生きてるかもしれないね」

 運転している宮人は何も反応を返してはくれない。沈黙が流れる。

「ねえ、何か言ってよ?」

「大丈夫だよ」

 宮人の投げやり言葉に、不安が倍増していく。


 警察署付に着いて、受付に行くと、あちらにお進みくださいと、受付の女性は安置所の場所を指し示すように手を差し伸べた。茜は宮人の腕にくっついて、足取り重く歩く。

 安置所の中は冷気が漂って、寒かった。「では、ご確認をお願いします。」と冷淡だ白衣を着た男が、壁から引き出しのように、取っ手を引いていく。そこに、人が袋に包まれたもの現れた。男性が袋のファスナーが開けられていく。変わり果てた果歩が姿が横たわって、温もりがない状態で眠っていた。茜は大声で泣き崩れてしまった。果歩に触れるのも怖かった。なんでこんなことになってしまったのだろう。

「あの、誰に殺されたんですか?」

白衣を着た男性に詰め寄る。「自ら命を断たれたみたいです。」と冷淡な声で男性入った。その言葉が脳に響く。

「そんなはずはありません。この子は誰かに殺されたんです」

「落ち着いてください」

 そのまま、宮人に連れられ安置所から出されてしまった。

「白鳥果歩さんのお母さんですね?少し部屋で話を伺っていいですか?」

次から次へと、腹が立っていた。

「違うと言ったら、どうするですか?」

「とりあえず、中へどうぞ」

 宮人は一緒に部屋に付いて来てくれなかった。女性の警察官に肩を抱かれて、部屋の中に連れて行かれた。

 椅子に座ると、怒りがこみ上げてくる。果歩は誰に殺されたのだろうか。

「お母さん、落ち着いて聞いてください」

「あの子は、下釜野乃花という女に殺されたんですよね。」

「まあ、落ち着いてください」

「私は、落ち着いてますけど。」

「最近、果歩さんに変わった様子はなかったですか?」

「だから、下釜っていう女から嫌がらせされてるって、言ってたわ」

「例えば、どういうことですか?」

「服とか、真似されているとか。会社帰りに行く定食屋に付いてくるとか。」

「そうですか」

 警察官は、ほんんど果歩の最近の様子など、聞いてくるだけで下釜野乃花が様子は教えてくれなかった。

「では、本日はここまでとうことで、お帰りになってもかまいません。」と言われて部屋を出れることなった。釈然としないまま、部屋か出ることになった。部屋を出て、周囲を確認するも宮人の姿は見つからなかった。スマホを鳴らしても、繋がらなかった。駐車場に向かと、運転席のもたれ掛かって寝ている宮人の姿が見えた。


「大丈夫だった?」

「なんで、一緒に話してくれなかったの?」

「えっ?!説明聞いてなかったの?話は一人一人で聞くって言いただろう。俺もある程度、聞かれたけど」

「そうだっ?」

 なぜだろう。宮人は娘が亡くなったというのに、落ち着いている。

「なんで、そんなに冷たいの?」

「そんなことないよ。家に戻ろう」

 車が静かに動き始める。何か言いたげな宮人に苛立ちを覚えてしまう。


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