第5話 魂の依り代
「何だこの感覚は…禍々しくも強大なエネルギーを感じる」
『それはそうだ。お前は我が父上の牛魔王の魂を宿したんだからな』
「へ〜…何だろう、今なら何をされても、やり返してやるってぐらいの全能感が溢れてきてるよ」
『喜んでもらえたようで何よりだ』
「あ、ありがとうございます―――ん?」
――――ありがとう。
何故頼んだわけでもない自分がお礼を言う必要があるのか。
そもそも何故
一度、冷静に考え出したら何もかもが怪しく思えてきて全能感も萎えてきた。
「あの…そもそも何故ボクにお父さんの魂を託したのでしょうか?」
『何でって、お前は牛魔王と呼ばれるくらいの豪傑なんだろう?』
「えっ!?―――」
『どうした?間抜け面をして』
いや、勘違いというよりは早とちりである。
いくら父親と同じ名前で呼ばれている人間がいるからって確認もせずに豪傑と決めつけるのは早とちりだ。
とはいえ
「あの…もしボクが弱かったら、どうなるんでしょうか?」
『弱い?』
「あ!いえ!例えばの話です」
『ハハハ謙虚なやつだな。我が父上の名前で呼ばれる男が弱いわけないだろう』
「アッアハハ…そうですよね〜」
『まぁ弱くて目的を果たすのに支障をきたすようなら
とりあえず強がろう。
「ちなみにこの力でボクは何をすればよろしいんですか?」
この質問に小・
『人の恐怖や
「恐怖、畏怖…を集める?」
『そうだ。悪事を働くなりして人から恐れられることが父上の魂にとって栄養になる』
「あ、悪事ですか…」
『悪事は手っ取り早い一例の話だ。何でもいい悪人を罰したり戦地で敵兵を惨殺するなりも有効だ』
「怖いことを言いますね…」
おそらく人間のことなどムシケラ程度にしか思ってないのだろう。
『お前だって憎い相手の1人や2人はいるだろう?そいつらを脅してやるのもいい』
1人や2人どころではない。
「それは面白そうですね」
『ハハハそうであろう。それを繰り返していけば父上の
「
『そうだ。お前の身体を依り代にして父上の顕現は達成される』
「依り代…」
『父上の魂を恐怖のエネルギーで満たすために
『さて…早速どこかでひと暴れしてもらおうか』
「ちょっと待ってください!!!」
『どうした?大声をあげて』
「その…お父さんが
――――暫くすると考えがまとまったのか視線を
そして、よく聞けと言わんばかりに
『おそらくは自我を失い肉体を父上に渡すことになるだろう』
ゆくゆくは自我を乗っ取られることを告げられて絶句する
逆らえば殺されるが言うことを聞いても自我を乗っ取られる。
まさに前門の虎、後門の狼とはこのことである。
『おい…どうした?』
「いえ…気持ちの整理がつかなくて」
『何を言っているんだ?』
『さぁ、早速一仕事しよう』
「一仕事?」
『そうだ。人の恐怖を獲りに行くぞ』
「え?」
『ところで、お前の名前は?』
「え?
その視線の先には建物が立ち並んでいる。
そして目処が立ったのか振り返り
『―――行くぞコウタ』
自分の名前を呼んで、どこかに行くぞと言われたことがなかったから。
そんな
―――あ、ハイ。と
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます