風に揺れる木の葉

 獣道とまでは言わないものの、主な山道からは外れた整備のされていない道を、軽めの服とサンダルで小一時間ほど登ると少し開けた所についた。


 しかし、そこに向日葵は無くてただ草が生えているだけだった。「ここ?」と日向に尋ねても「ここ、なのかな……」とよくわからない様子だった。


「向日葵……ないね」

 そう私が呟くと、日向は――ふぅ。とひとつため息をついて地面に寝ころんだ。

「つかれたぁ。あおも寝てみたら? 気持ちいいよ」

 そう言った日向の顔は楽しそうだった。向日葵は無いけど、日向は笑ってた。それを見て私も、笑ってうなずいて寝ころんだ。少し湿った土が冷たくて、静かな自然の音に包まれているのもあってか、思いのほか心地いい。それは蝉の鳴き声、風に揺れる木の葉、たまに鳥が木にとまる音やその鳥の声なんかも。

――静寂。

 そんな二文字が似合う場所だなと。そう思いながら、聞こえる音を数えながら、私は自然と目をつぶった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る