『向日葵』

 そうして笑って、やっと歩きながら『枯れない向日葵』について語りだした。


 あの山の中腹にあるという事。

 それは日向のお母さんが小さな頃からずっとそこにあるという事。

 秋になっても、冬になっても、枯れたところは誰も見たことが無いという事。日向のお母さんも、日向のお爺ちゃんでさえも。


――気持ち悪い。

 その時はそう思った気がした。しかしそんなものは当たり前なのだろう。『普通の向日葵』とは、七月の暑い夏に花を咲かし、涼しくなった秋の十月にはもう既に枯れてる。それなのにその向日葵は……なんてことを考えると、そう思わざるを得ないのだろうと今では思う。

「――だからさ、見にいこうよ。『枯れない向日葵』!」

「え? あぁ、うん」

「だから聞いてる?」

「聞いてるって。見に行くんでしょ?」

「そうそう、あの山登るんだよ」


「は?」

 その時は多分、『向日葵』で頭がいっぱいだったのだろう。一瞬だけ何を言ったのか分からなかったが、よくよく考えなくても分かることなので少し恥ずかしかった。

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