8月13日

 8月13日、この日も朝から快晴だ。セミの音がけたたましく聞こえる。川では朝から釣りを楽しんでいる人がいる。


 和夫と智也は朝から勉強をしている。シゲは朝からどこかに出かけている。だが、誰もその行き先を知らない。一体どこに行くんだろう。日を追うごとに気になってくる。


 勉強をしつつ、2人はシゲの事を考えている。一体あの薬は何だろう。どんな病気だろう。気になって気になってしょうがないな。


「おはよう」


 下で声がした。鈴木だ。今日は一体何をするんだろう。


 2人は下に降りてきた。鈴木はTシャツに短パンを着ている。今日は休みのようだ。


「鈴木のおじさん」

「近くの川で鮎釣りしよっか?」


 先日釣りやキャンプを楽しんだけど、またやるんだな。楽しみだ。また鮎が釣れるといいな。


「うん、いいけど」

「鮎釣り? した事ないな」


 智也は釣りをした事がない。鮎なんて、食べた事がない。楽しみだ。どんな味なんだろう。


「した事ないのか?」

「うん。それどころか、釣りすらしたことがないよ」


 智也は照れていた。全くした事がない。どうやるんだろう。どれぐらい釣れるんだろう。


「楽しいよ」


 先日の事を思い出しながら、和夫は釣りの魅力を語った。釣れた時の嬉しさは普通では味わえないものだ。それに、釣れたての魚をその場で食べると格別においしい。やってみれば、その楽しさがわかるはずだ。


 3人は鈴木の車に乗り込んだ。和夫は助手席、智也は後部座席に座った。智也は後ろを振り向いた。その後ろのスペースには釣り道具が置いてある。この後使うと思われる。


 3人が乗った車は川に向かって走り出した。農作業をしているスエがそれを見ている。スエは笑みを浮かべている。楽しい夏休みを過ごしていて、本当に嬉しそうだ。




 3人は川岸にやって来た。今日も川岸には多くの人がいる。彼らはもう釣りをしていて、鮎を何匹か釣りあげている人もいる。


 3人は車から降りた。3人は辺りを見渡した。川のせせらぎが聞こえる。東京の川ではあまり聞けない。とても貴重な体験だ。


「けっこう人集まってるな」

「うん」


 鈴木はバックドアを開け、釣り道具を出した。やる気満々なようだ。


「針の先端にに鮎を付けるんだ。どうして?」


 智也は興味津々にその様子を見ている。鮎釣りの様子を見た事がないようだ。


「鮎は仲間に引かれて寄ってくるんだ」

「ふーん」


 鈴木は鮎の習性を語り始めた。智也はそれを真剣に聞いている。とても興味を持っているようだ。


「これを友釣りっていうんだ」


 鈴木はおとりの鮎を付けると、和夫に渡した。和夫はすぐに釣りを始めた。


「ここって何が釣れるの?」

「岩魚とか鮎とか」

「ふーん」


 名前を聞いた事のない魚だ。どんなのだろう。想像できない。


「どっちも食べたことないんだ」


 すでに和夫は釣りを始めている。だが、始めたばかりでまだ釣れていない。


 和夫につられるように、智也も釣りを始めた。初めて釣りをする。どれぐらい釣れるんだろう。とても楽しみだ。


「なかなか釣れないね」

「そんなに早く釣れないよ」


 周りの人もなかなか釣れていない。彼らもまだ始めたばかりだろうか?


「こんなんかな?」

「わからない」


 10分ぐらい経っても、なかなか釣れない。本当に釣れるんだろうか? 2人は不安になってきた。周りはそこそこ釣れている。


 と、その時、和夫の釣り竿が何かを引いているような感じだ。魚がくわえて糸を引いている。


「おっ、きたきた!」


 和夫は力強く握り、釣り竿を持ち上げた。智也はその様子をじっと見ている。


「本当?」

「うん、引いてるから」


 和夫がさらに持ち上げると、魚が釣れた。鮎だ。しかも2尾のようだ。


「釣れた釣れた!」


 鈴木はその声に反応した。まだ釣れていないようだ。早く釣り上げなければ。


「何が釣れたの?」

「鮎」


 和夫は鈴木に鮎を見せた。鈴木は驚いた。自分より早く釣り上げるとは。成長したな。鈴木は和夫の成長に感心している。


「鮎めしにしたらおいしいぞ」


 今日は土鍋を用意している。今日は3人で鮎めし食べたいな。もっとたくさん釣り上げて食べたいな。


「本当? 食べたいな」

「いいよ。そうだと思って色々用意してきたから」


 鈴木は笑顔を見せた。鮎めしを作るのが楽しみだ。


「よーし、もっと釣るぞー」


 その時、智也の釣り竿もしなった。当たりが来たようだ。


「おっ、僕もきた!」


 智也は嬉しそうな表情だ。釣れる事がこんなにも楽しいとは。


「おっ、何だろう」


 新しいおとりを付けて再び鮎を狙い始めた和夫は驚いた。何が釣れるんだろうか? また鮎だろうか?


 智也が力いっぱい引き上げると、そこには3尾の鮎がいる。


「釣れた!」

「また鮎じゃん!」


 和夫は喜んだ。もっと釣れば塩焼きもできる。頑張ってもっと釣らねば。


 鈴木はその様子を嬉しそうに見つめている。2人とも釣りを楽しんでいるようだ。釣りに興味を持って、好きになってほしいな。


「よーし、もっと釣って塩焼きも食べたいな」

「うん」


 智也は張り切って、再び釣り始めた。今度はもっと釣ってやる。塩焼きも食べられるように。


「楽しいでしょ?」

「うん」


 2人は嬉しそうだ。気に入ってくれたようで、鈴木は満足した。東京では体験できない。こんな体験も大切だ。後々大人になった時、釣りをするようになった時に大事になってくる。やっておけば、みんなから尊敬されるだろう。

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