第40話 ホワイトデーの準備と当日

学校で橘さんからももらって(相変わらずツンムーブしてた)2つチョコを作る必要が出てきた。


俺ほんとに作れないんだけど……


バレンタインのお返しだし、結花に助けてもらうわけにもいかないしなあ。


いや、待て。

1人手伝ってくれそうな人いるな。

連絡してみるか……


「休日出勤かー」


「ほんとごめん」


「いや、冗談だよ」


30分ほどして、爽やかな感じで現れたのは、もちろんラブコメ師匠イケメンこと翔琉。称号がなげえ。


「料理までできるとか完璧超人かよ……」


「おー、そんなに褒めてくれるの? まあもともとはモテそうかなと思って料理にもチャレンジしてみたんだけど」


「やっぱりそういう理由か」


若干想像はしていたけどね。でもそれで上手くなったのは普通に凄い。尊敬。


……てか完璧すぎても逆に恋愛に結びつかないような気がするけど。


それは黙っておこう。翔琉は俺の理想であって頂きたい。


「だってラブコメで料理できる男子まあまあ主人公してるじゃないですか!」


「まあそう言われるとそうかもな、できるか極端にできないかの2択」


「そうだな」


俺は間違いなく後者。

でも世の中の料理できない系男子の希望となってるはず(?)

めっちゃダサい気がするが、ポジティブ思考大事。


「ま、さっそく作るか」


「何を作りましょうか?」


「それは自分で考えないと。 まあでも、チョコは難しいかもな」


「やっぱそうか……」


師匠は今さっきまでと打って変わって本気モードになる。


「クッキーにしようかな」


「わかった」


生地を翔琉に色々教えてもらって作る。

あとは焼くだけ。


「これは?」


「なんか柔らかい」



「これは?」


「焦げてないか?」


思ってた以上に焼き加減が難しい。


もう10回はトライ&エラーを繰り返ししたよ……。

何回もチャレンジするとか、Qtubeかな?


「こんな感じか?」


けっこう疲れた……


まじで3分クッキングとかあり得ないから!(だいぶ前から気づいてる)


「お、いいじゃん。 じゃあ、あとは前日に最高傑作作るだけだな」


「頑張るわ」


「おん、喜んでくれるといいな」


ほんとに良い親友を持ったものだと思う。

俺が女子であった場合彼氏にしたいランキング堂々の第1位。



師匠のご教授を受けた俺は、その後も何度か練習を重ねていよいよホワイトデー前日を迎えた。


俺は自信作を持って翔琉のもとを訪ねる。


「最後の味見、お願いします」


「おっけー!」


 翔琉はサムズアップしてみせる。


「お、めっちゃ美味しそうな感じだな。 見た目もいいし、いい匂いするし」


「まじか」


「うん、まじだ。じゃ、いただきます!」


 俺は翔琉の表情の変化を心配しながら見る。


「美味しいな」


「ほんとか!?」


「ああ! これで優希の手作りによるボーナスポイントも入るだろうから、相当喜んでもらえると思うぞ?」


「それは良かった……!」


「俺もここまで優希が成長してくれて、教えた甲斐を感じてるよ」


なぜかかなり感動されてる。ハンカチを取り出しそうな勢いだ。


あとはラッピングするだけだな。

明日、これを渡したときの結花の反応が楽しみだな。


結花の到着を告げるインターホンが鳴る。

朝早くから今日の準備は整えたから、大丈夫だ。


「おはよ、ゆうくん」


「うん、おはよ」


いつもと変わらず、玄関前には天使がいる。

俺は背中に隠した左手で袋に入れたクッキーを優しく持っている。


「渡したいものがあるんだけど」


「うん!」


俺がそう言うと、結花は暖かな朝の光みたいに眩しい笑顔を見せる。


「これ、どうぞ」


「ありがとー! 今、食べてもいい?」


「もちろん!」


結花が袋を開けて、最初の一口を食べるのを見守る。

どんな感想が飛び出すのか、どきどきしながら待つ。


「美味しい!ゆうくんが頑張って作ってくれたのが分かる、優しい味だよ」


「そ、そう?」


「うん! やっぱり手作りの味っていいよね」


「そうだね、いつも俺は結花の手作り料理食べさせてもらってるから……もっと感謝しないといけない」


「ゆうくんは真面目だなー」


でもほんとに、結花には感謝してもしきれないほどなんだ。

ずっと頼ってばっかりだし。




「どうしたの、ゆうくん? なんか難しそうな表情してる」


結花が少し首をかしげて、俺の顔をじっと見つめながら聞いてくる。


 計算せずにこんな可愛い仕草が出てくるものなのか? 結花の場合、たぶん計算なんかしてないんだろうけど。


「え、そう? ……まあ、考え事はしてた」


「ん、どうしたの?」


「……結花」


俺は真面目な表情をして結花のことをじっと見る。


「へっ!? な、なに?」


不意打ちに驚いたのか、結花は顔を真っ赤にしておどおどしてる。


「いつもありがとう」


「あ、こちらこそ! 私もゆうくんのおかげで毎日楽しいんだからね?」


「俺もそうだよ」


我ながらさっきはガチムードを作ってしまった気がした。プロポーズでもするのかってぐらい。


でも、感謝は伝えていかなきゃ。


どれだけ思ってても、言葉にしなければ伝わらないんだから。

これからもっと伝えていこう。



そう考えながら、駅への道を2人で歩いた。

3月らしい温かい風が吹いた気がした。



よく考えるとホワイトデーってイベント自体サプライズ感はゼロだよな。


暇な保健の授業中にそんなことを考える。


バレンタインデーでなにかしらもらった相手にお返しするってイベだから。

いつかちゃんとサプライズしたいもんだなあ。




誕生日とか良さそうだな。……まだ知らないけど。


次の課題は

『結花の誕生日を調べて、サプライズプレゼントをする』だ!


次は師匠に頼らず自分で道を開きたいです。(たぶんなんかアドバイス求める)



あ、ちゃんと橘さんにもお返ししたので安心(?)してください。


苦味強化チョコどころか普通の手作りチョコすらも作ることができない俺は、コンビニでカカオ70%のチョコを買った。


「わりと普通の選んできてるじゃん。 あんたにしてはいい方じゃない?」


「なんか上から目線では?……いつものことだけど」


最後は聞こえるか聞こえないかぐらいの小声でぼそっと言う。


「……なに?」


「いえ、なんでもないですー」


来年こそは苦味強化チョコをプレゼントしてやろうと決意した。

なんならカカオ豆そのままでもいいな。


まあ、今後の結花との関係をさらに深めていくためにも共通の友人の存在は大きい。


適度に上手くやっていこう。目の前で結花といちゃついて嫉妬されない程度にね。

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