第7話 テスト前の勉強会

今日は成績上位者のテスト結果が朝から貼り出されていた。 この学校なんか仕事早いんですよねー。


 さてと、一年生の結果はと……

 俺の名前はどこかなー?


「おー、優希載ってるじゃん!」


 先に翔琉に見つけ出された。


「え、どこどこ?」


「そこだよ、学年25位だってな!

一学年400人だからかなり上位じゃねえか」


「おー、なかなかいいね。って、一ノ瀬さん1位じゃん!?」


「そりゃそうだろー。2位に30点差もつけてるな」


「やっぱすげーなあ」


 周りのやつらも「やっぱ天才だよな……一ノ瀬さん」って言ってる。


 人も増えてきたし、そろそろ席に座るか……。


「1位おめでとう、一ノ瀬さん」


俺は席に座って、一ノ瀬さんの方を向いて言う。


「ありがとうございます!」


「普段からめちゃくちゃ努力してるから当たり前なのかも知れないけど……」


「そう言ってもらえて嬉しいです……でも……」


 一ノ瀬さんは廊下を眺めて少しだけ表情を曇らせる。


「……あんまり天才って言われたくないんです……」


「んー、まあ天才って言われたら、なんか才能だけでやって来てるみたいな感じするもんなあ……努力してるからこその結果なのにね」


「……はい」


「でも一ノ瀬さんが頑張ってること知ってる人もいるよ。……例えば、俺とか」


 ……。

 それ言って良いの、イケメンだけだよ。

 俺が言ったらかなりイタイぞー。


俺は自分が言ってしまったことを後悔してると、一ノ瀬さんはゆっくりとうつむき加減だった顔を上げる。

イキってすみません……。


「ありがとうございます!」


 パッと花が咲いたような笑顔になる。

 え、こんなので元気になってもらって大丈夫なの?

 可愛くて格好いい一ノ瀬さんがこんなにチョロくていいんですか?

 ワンチャンあるかと思って勘違いするよ、世の中の男子が! 俺を筆頭に!


 昼休み。


 いつも通り一ノ瀬さんは勉強している。

 その姿をついつい眺めてしまう。


「おーい、昼食べに行こーぜ」


そんな俺に翔琉はドアのところから声をかける。俺は眺めてしまっていたことに気付いて席を急いで後にした。


「うん、今行く」


 梅雨シーズンは外でお昼食べられないから食堂は混雑している。


 今日もなんとか人数分の席を確保する。


「最近さ、めっちゃ一ノ瀬さんに話しかけられてない?」


「え、誰が?」


「「「お前じゃ」」」


 翔琉をはじめとする友人3人が見事にハモる。


「俺?」


「自覚ねぇのかよ……」


「まだ学校ではそんなに喋ってないけどねー」


「ん、『学校では』?」


「あ、いやいや、ふつーに、隣の席の割にはそこまで喋ってないと思うけど?」


なんとか誤魔化しに成功する。


「おいおい、結構喋ってるだろ……

 今まであんなに会話を続けられた男は優希しかいないぞ」


「まじか」


「数多の男どもの嫉妬が凄いのも気づいてないのか……?」


「え、そうなの?」


「大丈夫か……?」


 3人とも顔を見合わせて苦笑いしている。

どうやら周りの男子たちには呪い殺されそうらしい。


「まあここまで来たら結ばれるように頑張れよ」


「……おう」


 いちおー返事はしておく。


「で、今どこまで行ってんだ?」


 2人は外に遊びに行ってしまったので、翔琉と教室まで戻る。


「一緒に買い物とかなら行ったよ?」


「は……!?」


急に翔琉が立ち止まる。


「え、どうした?」


「優希ってそんなに恋愛強キャラだったのか……!? 圧倒的弱キャラかと思ってた……!」


「いや、失礼じゃないか!?」


「いやでも、中学のとき彼女いたか?」


「……いなかった」


「恋愛運高校生活に全振りしてるんじゃないか?」


「そうなのか……?」


たしかに、受験前に引いたおみくじは恋愛運高めと出てたような。そのときは受験合格の方が大事だったけど。

 翔琉はいきなり真剣な顔つきになる。


「このチャンス逃したらダメだぞ!!」


「おぅ」


俺は翔琉の勢いについ押され気味になる。


「俺はいつでも応援してるからな!!!

 でも先に彼女ゲットするのは俺だからな!!!」


「謎に宣言してるじゃん」


「もちろん」


「まあ、頑張ろー」


 心強い友達を俺は高校で見つけられたみたいだ。




2週間後。

帰り際になにやらプリントが配られる。うわあ、嫌な予感。


こないだ中間テストを乗り越えたはずだよな……!?

 なんかもう期末のテスト範囲配られてるんだけど!?

 高校生に救いは無いんですか……?


 高校生の宿命にうちひしがれているうちに学校での1日が終わる。

 さて、帰るとするか。


 駅までの道で一ノ瀬さんに会った。

 というか後ろ姿を見かけた俺が走って追い付いた。


「またテストあるよねー」


「でも、今回は中間テストより範囲は狭いですよ?」


「そうだけど……」


 普段から勉強する習慣ないもんなー、俺。


「優希くんこないだの順位表載ってましたよね、!」


「載ったは載ったけど、一ノ瀬さんとはけっこー差あるよ?」


「いやいや、そんなことないですよ! 今度のテスト勝負しませんか?」


「え……?いいけど……」


「じゃあ、頑張りましょう!!」


(今回は前より頑張るかなあ……)


現時点では俺の負けは確実。俺のオッズ高いよ。


 やっと家に帰り着いた。電車って乗ってるだけなのに疲れません?


「今週末は家事代行しなくて大丈夫ー」


 って送ろうか迷ってる……。

 どーしよっかな。

 まあテスト勉強の妨害になったらいけないし、送りましょうか。


「じゃあどこかで勉強しますか?

 ファミリーレストランで一回勉強してみたいです!!」


「それで行こう」


一ノ瀬さんから素晴らしい提案があって、俺は満足してスマホを枕元に置く。


……そういえば、一ノ瀬さんは母さんが来てから俺のこと下の名前で呼んでくれてるな。


俺はそのことに今さら気付いて、母さんに心の中で感謝を述べまくった。




 ……というわけで、俺たちは週末の朝からファミリーレストランの入口に立っていた。


「楽しみです!!」


「うん!」


 まだ開店したばかりなので、店内には全然人がいない。


「とりあえずお昼までは集中して勉強やろうか、」


「はい!」


 とか言って集中できないのは俺なんだけどね。


 勉強してるときの一ノ瀬さんの顔、ほんと格好いいんだよなー。

たまに黒髪を耳にかけたりするのもまた。


「……優希くん、?」


「……はいっ!」


一ノ瀬さんに見とれてたのがバレたのかと思って、思わず声が上ずってしまう。


「集中してますか?」


「え、うん、もちろん……?」


「勝負、するんですよね?」


 困った顔で言われてしまった。

 その表情可愛いんですよねー、じゃなかった。


 カッコ悪いとこ見せんなよ……。


「うん、ちゃんとやるよ……」


 30分ぐらい集中して、5分ぐらい休憩しつつメニュー見たり一ノ瀬さんを眺めたりする。

 それで3時間ぐらい経っていた。


 期末のときに提出しないといけない課題はもうすぐで終わる。

 一週間前にしてはかなり良いペースでやって来ている。

 あと一週間は自分の苦手なとこやって得点アップに繋げるとするか。


「お昼、食べませんか?」


「おー、いいね! ちょうどお腹空いてきたとこだったんだ」


「何注文しますか?」


「うーん、じゃあロコモコ丼で」


「美味しそうですね……!」


 頼んだものが運ばれてくる。

 一ノ瀬さんは日替わりランチ頼んでた。


「「いただきます」」


 頭使ったらやっぱりエネルギー足りなくなる。


 ロコモコ丼はさっさと平らげてしまって、デザートタイムに突入する。


 俺はバニラアイスにフルーツが乗っかったパフェを、一ノ瀬さんはバニラがチョコに代わったパフェを頼む。


「とろける美味しさだなあ、午後も頑張れそう……!」


「その味も食べてみたいので、一口もらってもいいですか?」


「!?」


 びっくりしてスプーンをアイスに深く突き刺してしまった。


「……いいよ」


 大胆すぎませんか……?


 最近ほんと意識させられっぱなしなんだが!?


「おいしいです……優希くんもチョコいりますか?」


「いいんなら……」


そう言って、俺は一ノ瀬さんが持つスプーンに恐る恐る近づく。


 これ、自然にやってんの?


 男子との距離感バグってますよ。。。


 知識も詰められたし、とうぶん(2つの意味で)も補給できた!

 あとはテストを迎えるだけだ……!


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