大王(おおきみ)の遠縁である病弱な青年。この国の古代を舞台に始まり、彼が美しい女と出会い、情を交わしたのちに彼女を探して長い長い時をさすらう物語です。
文披31題というお題にそって書かれたそれぞれのエピソードで過去と現代、その間の時を行き来しながら、少しずつ主人公の素性や来歴が明らかになり、また茨木童子や陰陽師といった歴史の狭間の妖や不思議な存在たちとの関わり合いでいくつもの出会いと別れが織物のように多彩に絡み合い、綴られていきます。
いくつものキーワードが伏線として張り巡らされ、最後につながったときには、なるほどそういうことでしたかー!! と思わず声が出てしまいました。
時折引用される万葉集の歌もとても美しい、この国の闇と光の歴史を感じることのできる物語でした。
個人的には「第16話 錆び」のエピソードの剣とのやりとりがとても好きでした!
少しずつ、じっくり楽しみながら、そしてまた何度も読み返したくなる物語です。