閑話 学園祭はパーティーでお終いです①

【アリア】


「明日のパーティーは俺の側にいてくれ」


 学園祭の中日。朝から会長との打ち合わせの最後でそう言われた。

 分かっています。生徒会としてパーティーの潤滑な運営をすればいいのですよね。


 パーティー会場は四ヵ所。高位貴族中心、法衣貴族スタンダード、法衣貴族カジュアル、騎士コース中心。それぞれ役割とノリが違うのですよね。会長の担当は当然高位貴族の会場。


 本当は聖女見習いとして裏方に徹してお金貰いたかったんだけど……。生徒会から定期的なバイト代貰っているから仕方ないね。


 そう。パーティーと言っても学生のまねごと。メイドを目指す先輩たちは実践形式のパーティーでメイド役になるし、騎士コースでも近衛兵を目指す先輩は、会場の警備に当たる。聖女コースは明かり担当。学生の運営でパーティーの表も裏も疑似体験しておく、それが学園祭のパーティーだそうだ。


 生徒会でも聖女コースでも、どのみち裏方だから気が楽ね。

 お昼の二時間だけ休憩と自由時間を貰っているけど、ほぼ会長の側にいるから。仕事ってそういうものよね。パーティー会場でも同じようなものね。


 私は「はい」と答え、今日の仕事の準備を始めた。なんか、さっき会長のお姉さまから急に全体の方針変更を言い渡されたらしい。あれかな? 開会式の騒ぎのせい?

 ま、私には関係ない。言われた通り動きましょう。




【王女】


 昨日はとんでもない予定外だったわ。まさか帝国の第三皇子がステージに上がって、私にプ……プロポーズをするとは! 


 とにかく昨日は皇子にはうろうろしないように、学園長や王室の者で皇子を持て成しながら軟禁した。


 それで今日は私が学園祭を案内することになったのですが……。


 その前に色々修正! 早朝から学園長、シャルドネ先生、アルフレッド、レイシア、その他私の側近たちを集め打ち合わせを始めた。


「今回、帝国の皇子が来られております。レイシアの発明した魔道具とレイシア自身。これは今帝国の皇子に流していい情報ではありません。シャルドネ先生、ゼミの発表を止めて頂けませんか」


「そうね。レイシアが目立つのは考えたくないわね。興味ある層には昨日で十分すぎるほどアピールできたし。もともと目立つ必要のない学園祭だからいいわ。レイシア、それでいいわね」


「ポマール先輩は?」

「多分昨日で精神を使い果たした。十分でしょう」


「ではレイシアは目立たぬように。問題はパーティーなのよね。レイシアの料理と魔道具を披露して、一気にレイシアの名前を売るはずだったのだけど」


 状況が変わりすぎた。今レイシアを帝国にマークさせてはいけない。商会が立ち上がるまでは足場が弱すぎる。


「料理の変更を。食材発注してありますので、その中で温かくない料理をこれから考えて下さい」


 温かい料理は王室料理人の担当だから、この変更くらいどうにかできるでしょう。

 次々と変更を指示していった。


「私からもよろしいでしょうか」


 ドンケル先生が手を上げて発言した。


「警備態勢です。キャロライナ様が襲撃、もとい告白をしようと第三皇子がステージに上がった時、止めたのはレイシア君の専属メイドでした。学園祭の間、レイシア君には不便をかけますが、レイシア君のメイドのサチをキャロライナ様の近くに配置してはいかがでしょうか。それから、レイシア君がコーチをしている騎士コースの者達は、パーティー会場での実践形式の訓練をしております。彼らにパーティー会場の警備をさせてみてはいかがでしょう」


 警備は騎士団とも協力をして配備を強化していますが。そうですね、一考の余地はありますね。


「レイシア、どうですか?」

「サチはキャロライナ様に預けます。騎士コースに関してはドンケル先生に任せますわ」


 それでいい。合格ですわレイシア。


 時間がない。第三皇子が来る前に打ち合わせを終えましょう。

 今回はレイシアの痕跡を見つけられないようにするのが一番のミッション。そう伝えて打ち合わせを終えた。


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