サカへ行こう

 わずか一日で街道の問題が解決した。しかもたった3人の冒険者とメイドによって。


 ヒラタの街の冒険者ギルドでは、ヒラタの領主が持つ騎士団に盗賊を預けると、お役御免ということで、ギルド主体の大宴会を催そうと準備をしていた。


「うちのギルドからも金を出す。勇者殿たちに顔つなぎを」


 商人ギルドが酒や料理を提供すると言い出した。商人ギルドにとってレイシアたちは救世主であり、今後贔屓にしたい有力な冒険者。しかもレイシアは子爵令嬢で商人ギルドの高レベル会員で特許持ち。商業ギルドでもどこまで恩を返しながら取り込もうかと必死。報奨金は天井知らず。商人たちに出させようとしていた。


「そいつはもっと薪をくべてだな、ええいかせ!」


 料理長が準備している料理の作り方に口どころか手を出す。


「テーブルにクロスをかけ直しますよ。サチ、端からやり直してあげなさい」


 メイド長も、テーブルのセッティングにダメ出しとやり直し。料理長とメイド長、二人の師匠の間を行き来しながら、レイシアが疾風のように動き回っていた。


「できたぜ。第一弾はこんなものだろう」


 料理長は、そう宣言して次の料理の仕込みを始める。


「では皆さま。近くのイスにお座りください。四方同席。いちいち座席に文句はつけないで下さいませ」


 メイド長は、薄く殺気を放ちながら手早く席に着くように指示を出す。


 四方同席。どこの席に座っても上座下座とか関係ないですよ~、という建前のもと、しっかりと席順は守られるという謎の用語。一介の冒険者たちは入り口近くに固められ、お行儀のよい商業ギルド員と商人代表たちと冒険者ギルドの職員は、情報交換ができるように奥の上席に固められた。


「今日は私達のためにお集まりいただき、ありがとうございます。街道の盗賊問題はこれで解決いたしました。今宵は皆さま、心ゆくまでお楽しみ下さい。冒険者のやつら~! 今日はうちらのおごりだ! な~に、ここの支払い程度、報奨金でお釣りがくる。死ぬ気で飲みやがれ~! かんぱ~い」


「「「おお~~~~~~」」」


 レイシアは、商人たち向けと、冒険者向け、二通りの挨拶を器用にこなしたかと思えば、高そうなコートを脱ぎすて、メイド服で給仕や調理を始めた。


 もはや、誰が主役で誰が持て成される側か分からない。


 料理を作り続ける料理長とレイシア。料理を出しては皿を下げるメイド長とサチ。いざこざが起これば、トレイが飛び交いすぐに収まる。


「これで終わりだ! 飲み足りねえヤツは他へ行きな!」


 レイシアが終了を告げる。冒険者たちは歯向かってはいけないと理解したのか早々に出ていった。


「皆さまも、そろそろ終わりにいたしましょう」

「いや、我々は君たちへのお礼とねぎらいをするために……」


「ねぎらいでしたら今日は疲れておりますので遠慮いたしますわ。早く片付けて休みたいのです」

「では、我々も片づけを」


「「「ド素人が手をだすな」」」


 メイド長、レイシア、サチが怒鳴った。


「素人の方のお手伝いはかえって手間がかかるのですわ」


 レイシアがにこやかに拒否した。もともと料理や給仕に集められていた人々も、いつの間にか手伝うこともさせられずに、お客様扱いで手を出せなかった。


「私たちの為を思うのでしたら、今日はお引きくださいませ。それとも、私達とやり合おうとか? おほほほほ」


 一気に酔いが冷めたギルド職員に商人たち。改めてお礼をしたいとだけ告げ、心惜しそうに帰っていった。鍵かけのために、ギルド職員を一人残して。


 レイシアたちは、手早くしかしきっちりと後片づけをすませ、冒険者ギルドに併設された食堂を後にした。ギルド長が手配した町一番の宿の部屋へ。



「昨日はすまなかったな。どっちがゲストか分からない宴会になって」


 冒険者ギルド長がなんともいえない表情で、レイシアに謝りをいれた。どちらかというと、レイシアたちのやらかしのせいに巻き込まれただけなのだが。


「改めて、商人ギルドや商人たちからお礼のパーティーが開かれる。行ってやってくれ。その後は、領主からも声がかかるはずだ。今は社交時期なので王都に行っているので今は留守なのだが、状況は知らせに行くので、一週間後には帰ってくるだろう」


「残念ですが、私はサカに行かなければいけませんわ。弟と会うのです。弟が来る前に盗賊がいなくなる事ができて良かったのです。それに、私達はCランク冒険者。サカの街の緊急依頼を受けなくてはいけないのですよね」


 ギルド長が頭を掻きむしった。


「それもあるんだよな。確かに冒険者ギルドとしては緊急依頼が最優先だ。それから、今回の件で三人は冒険者ランクをBに上げられると思う。申請どうする?」


 レイシアは、ククリとルルを思い出した。


「申請するにしても王都で相談します。まだ学生ですので、先生とも相談しないといけません。推薦状だけ頂けますか?」


「それでいいのか? まあそれなら作るし、領主の推薦も取ることができるだろう。まあ、そうだな。若いしな」


 ギルド長はレイシアを見ながら、なぜこの子がこんなに強いんだろうと疑問が起こった。


「ああ、例の盗賊。帝国の騎士団ということで、扱いに困っているみたいだ。悪役令嬢のおかげで騎士としての誇りを取り戻した。とか言っているらしくて、素直に答えてくれているらしいんだが、悪役令嬢って誰だ?」


 三人がレイシアを見る。


「お前かぁ? まあご令嬢だが、悪役って……。まあいい。なんかしたんだろう」


 雑な理解で終わった。


「では、これからサカへ向かいます」


 レイシアが言うと、ギルド長はあわてて止めた。


「お前たちに指名依頼がたくさん来ている。早ければ、明日。サカへの護衛依頼だ。まあ、護衛をしてもらいながら繋がりを作りたいんだろうな」


「そういうの要りませんから」


 愛想もなく断るレイシア。


「早く行って、弟のために不安要素を取り除きたいんです。ヒラタの重要案件は終わりましたので、サカに移動しますね。帰りに寄りますので、その時は顔だけは出しますので。重要案件、邪魔しないですよね」


 そういわれてしまえば引き留めることはできない。ギルド長は、申請の書類を作っておくから、必ず顔を出すようにと念を押して、レイシアたちを見送った。



………………………………おしらせ………………………………


 相変わらず作者の想定外に動き回るレイシアたち! 打ち上げ、あんな感じになるとは! 想定外もほどがあります!


 まあ、愚痴はここまで。明後日から、研修旅行で一人時間ほぼない状況に入ります。3~4日読みすらままならない状況です。

 最悪、一週間は更新できないかもしれません。忘れないで下さいね。必ず戻りますので。


 ではしばらくお待ちください。


(カクコンで短編書いています。よかったらチェックしてみて下さい。400字で終わるお話です)

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