閑話 レイシア担当者の苦悩①
レイシアがまたトラブルを起こしそうだ!
いつの間にかレイシア担当みたいになってしまった俺。なぜ王子の俺が⁈ 仕方ないんだ。Aクラス相当の学力と俺が全力を出しても対応できる武力持ちのレイシア。それなのに貴族としての常識も、人間関係も、とりなし方も知らない田舎者なんか誰がフォローできる? 俺ですら振り回されているんだ。他のやつらが耐えられるわけないだろ? 教師たちからもレイシアがいると無言のプレッシャーをかけられるしな。うん。仕方ないんだ。
まあ、真面目ではあるし努力家。それは認めよう。しかし今度は何で呼び出されるんだ? 俺が! 決闘? 誰と? 元騎士団員? 何で! 姉に手伝わされている生徒会の事務仕事を放棄して会場に向かった。
◇
フライパン……。またこいつは……。ああ、辛いよな、あの終われない感じ。そうだよな。プライドがあるしね。
ああ、負けてもいいんだよ。あれは規格外だから。
おれは下手な三文芝居を見るような気持ちで、この戦いの
◇
で、なんで騎士団に行く! 何しでかすか分からないレイシア。俺がついて行かないとダメじゃないか! ドンケル先生に掛け合い無理やりついて行くことにした。今思えば、ドンケル先生にはめられた気もするけど。
酷いな。特に二人目。女性に何を言っているんだ。これが騎士団か? 騎士の誇りとはなんだ。ああ、ボコボコにされている。どうなっているんだ?レイシアの周りは。メイドってみんなあんな感じじゃないよな。あれ? 俺がおかしいのか?
◇
三人目がいない。え? 俺? 俺出てもいいの? 待てまて、感情を悟られるな。しぶしぶって形で交換条件を出してと。まあそれっぽく言っとけばいいや。後で考えよう。……よっしゃー! 俺はうきうきした気持ちで闘技場に立った。
「では決闘の条件を」
「ありません」
おや、王子相手に何もないのか? 大概の事は叶えられるぞ?
「ないのか?」
「ええ。好きで出向いた訳ではないので」
「そうか」
やる気がないだけか? それとも存外真面目なのか? 先の二人とは違う感じがするな。
「アルフレッド君は?」
先生が聞いてきた。そうだな
「なら、俺も条件なしでいい。だが、このままでは騎士団に失望するばかりだ。騎士の強さを見せてくれ」
まだ足りない? いや目の感じが変わった? ならば!
「メイドに負ける騎士は必要なのか?」
「確かに。おっしゃる通りですね」
間髪入れずに返してきた。ははは。そうでなくてはな。
身構え剣を合わせる。
……強い。ああ。俺はまだまだだ。手加減されているのが
俺は呼吸を整え、全力で渾身の一打を放った。
切られた! そう思った腕は痛みしかなく出血は無かった。峰打ちか。
「勝者、アルフレッド!」
会場から歓声が上がる。だが今のは相打ち。いや、わざと切られたのか?
「わざと切られたな」
「当たり前です。王子を守るのが騎士ですから」
「ふふふ。その態度はいいな。お前のような騎士ばかりだったらどんなによいだろうか」
俺は周りの騎士とパワハーラを見て心からそう思った。
「騎士団の最高司令は王です。王子が王になった時にはぜひ改革を」
「分かった。心に留めよう」
俺のなすべきことが見えた。まずはあの男を追放しなくては。
そしてレイシアの戦いが始まる。
やり過ぎだ、バカ! 騎士の方たち引きまくってるよ! テニスの試合じゃないんだから! それ以上やったら虐殺だ! 先生、早くやめさせて~!
これから祝賀会? 飲ませるな! 先生
◇
レイシアたちと別れ学園に戻った俺は生徒会室に行った。会長の姉に報告をすると鼻で笑われた。そんなことより書類をまとめろ? はいソウデスネ。見ていない人に伝わるわけがないな。一応報告はしたからな。それにしても書類多いな。
◇
王都での俺が使っている別荘に帰ると王宮に明日来るようにと伝言が来ていた。今日の騎士団の騒ぎが伝わったようだ。正式に父に伝わっているといいんだが。独り冷たい料理を食べながら、レイシアたちが祝賀会をしている事を思い出した。
わきゃわきゃと楽しくやっているんだろうな。温かい料理を食べながら。
冷めたスープを飲みながら、そんな妄想をしていた。
◇
父に騎士団での出来事を話した。先に報告が上がっていたようで、話し終わるまでは黙って聞いてもらえた。黙って聞いてもらえたのはありがたいが、リアクションがないと自分で言っておきながらなんとも嘘くさい話に聞こえるのはなんでだ⁉ 噓偽りなく話せば話すほど、自分でもありえない話に聞こえてくる。シーンとした中で、メイドがトレイとワイン瓶で騎士を手玉に取る様を語っているのは辛い。まだレイシアの
「信じられんな」
ああソウデスネ! 俺だって目の前で見ていて信じられなかったですよ!
「しかし、報告書の内容と筋だけはあっているな」
「報告書、確認させてもらえますか?」
執事から報告書が手渡され、目を通した。なんだこれは―――! 思わず叫びそうになった。いや、父の手前心の中だけで収めたけど。
それは、あまりにも淡々と書かれた報告書だった。
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