クマを退治に行きましょう!

 レイシアたちは「天使様」と領民から讃えられ、一体なにがどうなったのか訳が分からなくなってしまっていた。が、本来の目的はクマを討ち取ること!

 黄昏の旅団、領主、レイシアとサチ、それから衛兵、猟師、冒険者ギルドの代表を集めて、ホワイトベアの情報と森の地形や危険個所などを確認した。


「つまり、このあたりにクマは移動している恐れがあるということだな」

「そうですな。この近くまではわしが案内致そう。じゃが、ここから先の森へは悪いが入りたくない。身を守れる気がせんのじゃ」


 猟師がそう言うと、衛兵の代表で来ているトトリも言った。


「そうだな、確かにこの奥は雰囲気が違ったな。大勢で行けばいい! という感じで攻めた時はケガ人が続出したよ。連携が取れる者同士でないとかえって危険になる場所だったな」


 ククリは旅団のメンバーと話し合い言った。


「分かった。近くまで案内してもらうだけでも助かる。ブラックキャッツはどうする? ポーターとはいえ危険と判断するなら無理はさせられん」


 それを聞いたレイシアは(本当に大丈夫?)と思い、いたずらを仕掛けるような感じで言ってみた。


「あら、大量の荷物を抱えながら戦うのですか? 私達2人なら、いざとなったら逃げることは出来るくらい素早く動けます。それに、ホワイトベアくらい狩れるでしょうけど、私がいなくてどうやって持ってくるのでしょうか?」


「……う~ん」


 ククリ始め黄昏の旅団のメンバーはこの数日の旅を思い返した。荷物の心配のない移動に慣れ過ぎたメンバーたち。果たして危険な森の中をテントや食料、まして数日分の水を持って移動しながら戦えるのか?


「どう見ても、私たち抜きで3日分の荷物を持って戦いながら移動できませんよね」

「しかし……君たちの身に危険が及ぶかと思うと」


 そう。相手は若い女の子2人。しかも一人は領主の娘。いくら戦えると言えども危険にさらしていいものか? この地の現状を前に判断が揺らいでいた。レイシアは、そんな煮え切らない態度に思わず言い返してしまった。


「ごちゃごちゃ言ってねえで、決断しろって言ってるんだよ! ったくとろくせーな! あたしら自分の身ぃくらい自分で守れるぜ大将。適切な判断も下せねえ素人かぃ、このうすらとんかち!」


 急に料理人やさぐれモードになったレイシアに戸惑う人々。


「悪いがこの旅の間の戦い方を分析して見た。いちいち戦闘時間が長すぎだ! 安全に気を使いすぎっから体力を無駄にするんだ。連戦出来なきゃ死ぬぞ! 多少の怪我より体力温存。おめぇらには覚悟ってもんがたりねえ!」


「なっ!」


「荷物運びで体力削りながら長い戦いをこなす? ちゃんちゃらおかしいぜ。いいかい兄弟、あたしらに頼りな。完ぺきにフォローしてやっからよ!」


 グサグサと痛い所を突きまくる、やさぐれモードのレイシア。こうなっては止まらない。狩人としてやる気満々。言いたいことを言いまくる。グサグサと刺さりまくる黄昏の旅団のメンバー。サチはアチャー、と思いながら周りにフォローし始めた。


「この子、本気になると人が変わるんです。それだけクマを退治して領民を守りたいとおもってるんです」


「おらおら、ちゃっちゃっと決める! 私ら連れてってクマを倒すか、置いてって死ぬか! どっちだ!」


 レイシアの真剣な問いかけに、ククリは覚悟を決めた。


「分かった! 荷物は任す。ただ、危ないと判断したらすぐ逃げてくれ。君たちに怪我をさせるわけにはいかない」


「フッ、なまっちょろい。まあいい。サチ、いいね」

「レイがしたいようにすればいいよ」

「おう! じゃあ決まりだ」


 レイシアはやさぐれモードを解除した。


「では、私たちもついて行きます。みんなでクマを倒しに行きましょうね」


 急変したレイシアの態度について行けない人々は、「「「お、おう」」」と声を出すだけしかできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る