朝の礼拝

 翌朝、教会にはたくさんの人が集まった。あまりにもおおいので、曇り空で放射冷却も起きていなかったため、急遽外で行うこととなった。


「外でするなら順番を変えましょう。練習用の小さなオルガンを外に出して。サチ、伴奏お願いね」


 レイシアは、領主の連れてきた使用人たちへ次々に指示を出した。



 教会のドアが開かれ、神父・領主・レイシアの順で礼拝堂の奥から現れた。少し高くなったステージに上がる。神父と領主は左右に別れ、真ん中にレイシアが立った。レイシアは、大きく息を吸うと、大声で話し出した。


「皆さん、おはようございます。寒いので、まずは体を温めましょう。私の住むターナー領の教会で大人気の、『神の息吹スーハー』をお伝えします! 一緒に体を動かしましょう」


  チャン♪チャラチャラララ♪ チャン♪チャラチャラララ♪ チャチャチャ チャララン♪ チャラ チャン チャン♫


 サチが軽快にオルガンを弾いた。いきなりの大きな音に群衆がどよめく。レイシアは大声で「神の息吹スーハー、第2」と叫んだ。


 スーハーは、いつの間にか第2が出来ていた。スーハーに慣れた人々が、「より能動的なスーハーがあってもよいのでは?」と、動きの激しいバージョンを作り上げたのだ。寒い日には第2がぴったり。


「まずは大きく腕を開いて ス—————。腕を閉じては ハ—————。さあ、ご一緒に!」


 人々は何をさせられているのか理解できないまま、スーハースーハー息をした。


「軽快にいくよー! 両足飛びで肩を揺らすよ。ハイッ! トントントンス—————、トントントンハ—————」


 3回飛んで息を吸い、3回飛んで息を吐く。分からないまま皆もやった。


  トントントンス—————、トントントンハ—————

  トントントンス—————、トントントンハ—————

  トントントンス—————、トントントンハ—————


「手と足の曲げ伸ばしよ~。腕を大きく振り上げて、フンヌゥッとしたらス—————。息を吸ったままもう一度、フンヌゥッとしたらハ—————。ご一緒に!


 レイシアが奇妙な動きを始めた。頭の上まで腕を上げたかと思うと、神から叩き潰されたかのように腕を折り曲げて脇につけ、足はがに股で縮み込んだ。


(((笑ってはいけない)))


 とにかくレイシア様のなさること。同じようにやらなくてはと羞恥心を取っ払って、老いも若きも、男も女も、みんなでがに股になった。


  フンヌゥッがに股ス————— フンヌゥッがに股ハ—————

  フンヌゥッがに股ス————— フンヌゥッがに股ハ—————

  フンヌゥッがに股ス————— フンヌゥッがに股ハ—————


 恥を捨てた人々は、次から次と行われるレイシアの奇妙な動きについて行った。時に緩やかに、急に激しくなるオルガンの音に合わせスーハーは続く。変な動きをさせられながら。


「最後は基本の深呼吸。大きく腕を開いて ス—————。腕を閉じては ハ—————。ハイッ」


 やり切った。恥は捨てた。


 新鮮な空気を胸いっぱい吸い込み、恥ずかしさで顔が火照り、奇妙な動きで全身が温まった。寒い筈の外での礼拝は、温かな体と温かな心で始めることが出来そうだ。


 こうして新たなスーハー信者が、遠くの領地に誕生した。




 



作者よりお願い

 今日、恐ろしく人と絡む仕事が入り、飲み会までついてしまいました。おそらく書く読む出来る隙間時間もほとんどなさそうです。

 初めて更新止まるかもしれません。


 離脱しないで—————!


 これからも頑張りますので、毎日投稿できなくても離れないでいて下さい。お願いします。

 

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