黄昏の旅団
冒険者ギルドに懐かしい顔がそろった。
「おお、ククリ、ケント、ゴート、元気そうだな。ルルもまあべっぴんになったもんだ」
「「「ギルド長。お久しぶりです」」」
黄昏の旅団。一度はBランクにも手が届きそうになった出世頭。初心者の頃から知っているギルド長から見れば、息子たちを見ているような感覚だった。
「レイシアには連絡取れたの?」
ルルは身を乗り出してギルド長に聞いた。
「ああ。父親の許可が出れば付いていくってよ」
「過保護なの?」
「まあ、お前らで口説き落とすんだな。宿取って着替えてきな。アポは取ってやる。2時間後に集合しろ。連れて行ってやろう」
ギルド長がそう言って部屋に戻ると、黄昏の旅団は若手の冒険者たちに囲まれた。これも先輩としての役割と、40分ほど若者たちに冒険話をしていた。
◇
「おお、揃ったな。じゃあ行こうか」
ギルド長に先導されて、着いた所は領主の館。黄昏の旅団のメンバーは途方に暮れた。
「なにあの子、領主の娘なの!」
「ああ。でもそんなに気を使わなくてもいいぞ」
そうは言っても緊張する旅団のメンバー。
「おいおい、ククリは元々学園出だろ。ルルは面識があるし。お前らが口説き落とさなかったら俺の立場もないんだ」
ギルド長がくだけた感じで言った。多少は緊張がほぐれた所で、執事が現れた。
「黄昏の旅団の皆様。ようこそお越しくださいました。ではこちらへ。旦那様がお待ちになっております」
ほぐれた緊張が、一瞬にして固まった。
◇
「まあ、気楽にしてくれ」
そうは言われても領主の前。緊張が先走る。
「ルルさん。お久しぶりです」
(私? 私に振るよね。そうよね)
ルルはそう思いながら、レイシアに話を振った。
「お久しぶり、レイシア。元気だった?」
「ええ」
「領主様。私達は『黄昏の旅団』というCランクのパーティです。私はルルです。ほら、挨拶」
「あ、ああ。領主殿初めましてり俺はククリ。このパーティのリーダーをしている。元はクマデの騎士爵の息子だった」
「俺はケント。よろしく」
「ゴートです」
「私はクリフト・ターナー。レイシアの父親だ。なるほど、リーダーのククリは学園出か。ギルド長が信頼しているのもよくわかるよ。礼節を知っているようだ」
とりあえずの合格点をもらったククリ。
「君はクマデ出身と言う事だが、今回の件と何か関係があるのか?」
ククリはああ、と頷きながら言った。
「元々、ホワイトベアを狩るつもりで計画を立てていたんだ。そこにクマデでの異常な出没。ならば故郷の役に立ちたいと思ってもおかしくないだろう? 協力体制も整っているし」
「そうだな。しかし、危険ではないか?」
ルルが割って入る。
「領主様、レイシアさんにはポーターをしていただこうと誘っています」
「ポーター?」
「はい。失礼ですが、家宝のカバンを見せて頂きました。いつもはこの規模の計画ですと4~5人のポーターを雇っています。それをレイシアさん1人に任せたいんです。もちろん戦闘などさせません。危険な時は真っ先に逃します」
「荷物持ち以外はさせないと?」
「もちろんです。まだ学生に危険なことはさせられません」
「そうか」
「雇うに当たっての契約についてですが」
会計役、パーティの財布を握っているゴートが話に混ざる。
「普段は、1人1日銀貨2枚で雇っているんだが、今回は1人で何人分もの荷物が運べるのを考慮して、1日銀貨4枚でどうだろう」
その提案にギルド長が待ったをかけた。
「それはEランクの話だろう? うちのギルドのエースを貸し出す金額じゃないな」
「しかしポーターだぞ。これでも破格だ」
クリフトとギルド長と黄昏の旅団のメンバーがさんざん話し合った結果、やっとレイシアの意見を聞く番となった。
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