黄昏の旅団

 冒険者ギルドに懐かしい顔がそろった。


「おお、ククリ、ケント、ゴート、元気そうだな。ルルもまあべっぴんになったもんだ」

「「「ギルド長。お久しぶりです」」」


 黄昏の旅団。一度はBランクにも手が届きそうになった出世頭。初心者の頃から知っているギルド長から見れば、息子たちを見ているような感覚だった。


「レイシアには連絡取れたの?」


 ルルは身を乗り出してギルド長に聞いた。


「ああ。父親の許可が出れば付いていくってよ」

「過保護なの?」

「まあ、お前らで口説き落とすんだな。宿取って着替えてきな。アポは取ってやる。2時間後に集合しろ。連れて行ってやろう」


 ギルド長がそう言って部屋に戻ると、黄昏の旅団は若手の冒険者たちに囲まれた。これも先輩としての役割と、40分ほど若者たちに冒険話をしていた。



「おお、揃ったな。じゃあ行こうか」


 ギルド長に先導されて、着いた所は領主の館。黄昏の旅団のメンバーは途方に暮れた。


「なにあの子、領主の娘なの!」

「ああ。でもそんなに気を使わなくてもいいぞ」


 そうは言っても緊張する旅団のメンバー。


「おいおい、ククリは元々学園出だろ。ルルは面識があるし。お前らが口説き落とさなかったら俺の立場もないんだ」


 ギルド長がくだけた感じで言った。多少は緊張がほぐれた所で、執事が現れた。


「黄昏の旅団の皆様。ようこそお越しくださいました。ではこちらへ。旦那様がお待ちになっております」


 ほぐれた緊張が、一瞬にして固まった。



「まあ、気楽にしてくれ」


 そうは言われても領主の前。緊張が先走る。


「ルルさん。お久しぶりです」


(私? 私に振るよね。そうよね)

 ルルはそう思いながら、レイシアに話を振った。


「お久しぶり、レイシア。元気だった?」

「ええ」

「領主様。私達は『黄昏の旅団』というCランクのパーティです。私はルルです。ほら、挨拶」


「あ、ああ。領主殿初めましてり俺はククリ。このパーティのリーダーをしている。元はクマデの騎士爵の息子だった」

「俺はケント。よろしく」

「ゴートです」


「私はクリフト・ターナー。レイシアの父親だ。なるほど、リーダーのククリは学園出か。ギルド長が信頼しているのもよくわかるよ。礼節を知っているようだ」


 とりあえずの合格点をもらったククリ。


「君はクマデ出身と言う事だが、今回の件と何か関係があるのか?」


 ククリはああ、と頷きながら言った。


「元々、ホワイトベアを狩るつもりで計画を立てていたんだ。そこにクマデでの異常な出没。ならば故郷の役に立ちたいと思ってもおかしくないだろう? 協力体制も整っているし」

「そうだな。しかし、危険ではないか?」


 ルルが割って入る。


「領主様、レイシアさんにはポーターをしていただこうと誘っています」

「ポーター?」


「はい。失礼ですが、家宝のカバンを見せて頂きました。いつもはこの規模の計画ですと4~5人のポーターを雇っています。それをレイシアさん1人に任せたいんです。もちろん戦闘などさせません。危険な時は真っ先に逃します」


「荷物持ち以外はさせないと?」


「もちろんです。まだ学生に危険なことはさせられません」

「そうか」


「雇うに当たっての契約についてですが」


 会計役、パーティの財布を握っているゴートが話に混ざる。


「普段は、1人1日銀貨2枚で雇っているんだが、今回は1人で何人分もの荷物が運べるのを考慮して、1日銀貨4枚でどうだろう」


 その提案にギルド長が待ったをかけた。


 「それはEランクの話だろう? うちのギルドのエースを貸し出す金額じゃないな」

「しかしポーターだぞ。これでも破格だ」


 クリフトとギルド長と黄昏の旅団のメンバーがさんざん話し合った結果、やっとレイシアの意見を聞く番となった。

 

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