呼び出し
孤児院の一室で、レイシアとクリシュがお祭りの相談をしていた。
「次のお祭りのメインは料理コンテストじゃない方がいいと思うの」
「なぜですか? あんなに盛り上がったのに」
「食堂やレストランは、あのコンテスト以降盛り返したわ。優勝したお店だけじゃなく、出ていなかったお店もいろいろ新作料理を出すようになったりしてね」
「ええ」
「だから、次は他の業種にしないとバランスが取れなくなるわ。様々な業種にチャンスを与えるように回さないと。偏った状態では不満が出てくる可能性が大きいの」
「さすがお姉様」
「そこら辺をギルドを集めて話し合ってみたらどうかしら」
「そうですね。お父様と話し合って見ます」
「あとはね、去年は急に始めたから仕方がなかったんだけど、宣伝と準備は早く始めたほうがいいと思うの。そうね。私が学園に行ったらすぐに始めなさい。私がいなくてもクリシュがいれば大丈夫。お父様と各ギルド長と集まってよく話し合ってね」
「はい! お姉様の代わりに頑張ります」
「素敵よ、クリシュ」
そんな感じで、勝手に今年の祭りを企画していた時、冒険者ギルドからレイシアに使いが来た。
◇
「レイシア様に指名依頼が来ています」
職員は依頼書と手紙をレイシアに預けた。レイシアは、手紙を丁寧にペーパーナイフで開封すると、読み始めた。
手紙は学園で地下道に一緒に潜った冒険者のルルからだった。読むと、以前頼んだ通りポーターとして雇いたい。契約は2週間。詳しい話は付いてから相談。2月15日頃にターナーに着く予定。そんなことが書いてあった。
「いかがいたしますか?」
職員はたずねた。
「15日だとあと4日ね。お父様にも相談しないと何とも言えないわ。受けるかどうかは会ってお話してから決めるのでそのときでいい?」
「かしこまりました。その前に一度、明日にでもギルドへお越しください」
「分かったわ。明日の10時頃でいいかしら」
「その時間は暇になっている時間なのでこちらとしてもありがたいです」
「では、お伺いいたします」
レイシアはていねいにギルド職員を見送った。
「お姉様、冒険にいくのですか?」
「さあ。お父様と話し合ってからね」
「せっかく帰ってきたのに」
「まあ、2週間だし」
「2週間もです!」
クリシュはプンプンと怒っていた。レイシアはその姿を見て(やっぱりクリシュは世界一かわいいわ)と思ったが、口に出すと怒りそうなので黙って眺めていた。
◇
「ということで、学園の授業でお世話になった冒険者のルルさんから依頼が来たんです」
レイシアは父クリフトに説明した。
「それでレイシアはどうしたいんだい?」
「私ですか? できれば一度本格的な冒険者修行はしてみたいと思っています」
「なんで?」
「なんでって……。なんででしょうね?」
「分からないのか?」
「ええ。でもこんなチャンスはもうないかと。信用のおける方々から誘われるのってなかなかない気がするんですよ、お父様」
「……そうだなぁ。明日ギルドから呼ばれているし、何かあるのかもしれんな。よし、明日私も一緒にギルドに向かおう」
「お父様もですか?」
「ああ。依頼自体が良く分からなければ、良いも悪いもないだろう。もしなにかあるなら、私も知っておかないといけないからな」
そうして明日はレイシアとクリフトが、冒険者ギルドに向かうこととなった。
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