魔法実験中
「これが実験したい魔法のリストです」
レイシアが先生たちに一枚の紙を手渡した。
「こんなにあるのか」
学園長がため息をつく。
「一番安全そうなのから試しましょう」
シャルドネが提案した。
話し合いの結果、土ボコから試すことになった。レイシアは畑仕事の好きなヒロインをイメージした。(畑なら私も耕していたわ)ヒロインにシンパシーを感じながら大きな声で「土ぼこ!」と唱えた。
……
……
……
なにも起こらなかった。
レイシアは次々に魔法を試した。
「サンドショット」
「ロックショット」
「ストーンレイン」
何をやっても上手くいかなかった。
「まあ、こんなものだな」
「そうね。残念なのとほっとしたのが半々ね」
「そうだな。むしろよかったのでは?」
先生たちは
レイシアはあきらめきれずに魔法の呪文を繰り返し唱えたが、いくらやってもなにも起こらなかった。
この実験室に砂も石もなかったから。
◇
火は、酸素と水素が空気中にあったので出すことが出来た。
水は水蒸気があるので、変換することが出来た。
風は空気があればどこでも出せる。
でも土は……
古代のアーティファクトで守られた部屋には、外部の素材は影響を受けない。
そのため、土魔法に感応する素材がなかったのだ。いくら魔法でも無から有は生み出せない。鉄から金は作れない。錬金術は不可能なのだ。
その事に気がつかないまま実験は失敗となった。そして、ラノベの情報は当てにならないという結論に達してしまった。
イメージが固定されると、外へ出てもダメなイメージが先行して魔法が上手く発動しない。出来るというイメージがなければ、魔法は発動しないようになっている。
よかれと思って準備した会場が仇となり、魔法の発展の歴史が大きく動くチャンスは
◇
その夜、レイシアは部屋の中で土魔法について考えていた。なぜだめだったのだろう? 土魔法って何?
土、砂、金属、宝石……
「金属?」
レイシアは、小銅貨を手のひらに乗せた。
「金属の形が変わったら楽しいかも」
レイシアは、硬貨がが薄く広がっていくイメージを頭の中で作ってみた。
手のひらが温かく感じる。
その熱に集中するように目を閉じた。
気がつくと硬貨は薄くなり、直径が3倍ほどの大きさになっていた。
「出来た」
手のひらのもはや硬貨とは言えない薄い銅の円盤を見て、声にならない興奮を覚えた。
「私、魔法を作ったの?」
文字がなければ作ればいい!
魔法がなければ作ればいいんだ!
それは違う! と突っ込む者はここにはいない。レイシアは『魔法は作れる』と思い込んだ!
魔法はイメージが大切。思い込みは正義?
レイシアは、土魔法は金属を加工するもの! と思い込んだため、手のひらの銅貨の形を変えることにのみ夢中になった。
最終的に何枚もの小銅貨を合わせ、小さな猫の置物を作った。気がつけば、もう夜は空けていた。
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