テスト開始

 貴族子女達は、それぞれグループに分かれランチを取りに行った。会場には一人取り残されたレイシア。教師がレイシアに声を掛ける。


「あなたねえ。なんとか私が貴族に残れるよう道を探っていたのに……。はあ」


 レイシアは、明るく答えた。


「奨学生は、貴族になれないと伺っていたのですが。間違いでしたか?」


「間違いではないわ。でもね、あなたのバックにはオヤマー子爵家があるの。そこを利用できればチャンスはあったのよ。残念だわ」


 レイシアは、それでも明るく答えた。


「いいんです。私は貴族になりたくないのですから」


 そんなレイシアを見て、教師は大笑いをはじめた。

 そしてレイシアに向かって問いかけた。


「そう、貴族になりたくないの。じゃあ、何がしたいのかしら?」

「弟が困らない様に、お金を稼ぎます!」


 さらに教師は笑った。それはそれは失礼なくらいに。


「あははは、あんたいいわ。好きよ、その考え。実力があるならおやりなさいな。夢物語なら早いうちにあきらめて、お祖父様になきつきけばいいわ」


 そう言ってひとしきり笑った後、「1時からテストだから、遅れないようにさっきの教室に行きなさい」と言って、ホールを出て行った。



「じゃあ、テストの前にルールを伝えます」


 教師は生徒を前にして、新しいシステムを伝えた。


「学園長が変わって2年目。好き勝手に変えてしまいました。面白いですよ、新システムは。王子が入るのに間に合うように急いで作りましたからどうなるか私達にも予測できません。君たちは実験台だと思ってくれてあきらめなさい」


 身もふたもない説明は、この教師が特殊だから。他の教室では、それっぽい説明がされているはず。


「簡潔に言いますと、点数によってクラスが変わります。侯爵も男爵も関係ありません。それどころか、法衣男爵でしょうが騎士爵であろうが、点数が取れたものは上級クラス、点数が低ければ例え王子であっても下級クラスへ行ってもらうことになります。それが行く行くは、皆さんのためになる学習になるからな。と、学園長が言ってました」


 あまりの言い方にざわつく教室。おびえ始める高位爵位の女子達。男子はいまいち理解できていないようだ。その時点でもはや勝負は決した。あほな男子と現実におびえる女子。13歳などそんなものだ。女子にかなう男子など少数。


「では、割り振りを先に言いましょうか。平均点で0~20点、ありえないですね、この点数は。もし取ったら貴族として終わりです。21~30点が最低ラインですね。31~40まあ、ここがとれればいいのではないでしょうか。ここから先は適当にしか学んでいない人には解けない問題ですね。男爵程度はここで大丈夫です」


 30点台でいいよって、どんな問題? と疑心暗鬼になる貴族子女。


「ま、そんな感じで10点刻みで判定します。80点台で私のクラス、Aクラスに来られます。この中でだれが私の生徒になれるかなあ。誰もいなけりゃAクラス自体なしですむのですが。最後に90点以上は座学はやる必要がありません。まあ、王子のための処置です。。自主学習とか、専門の家庭教師と帝王学をしなければいけませんからね。通常の座学は十分学んでいるでしょう? 他にもいたら? まあ、勝手に好きな勉強してればいいです。取れるほど学習している方なんているのかわかりませんが」


 そう言うと生徒を見まわしニヤリと笑った。


「では、頑張って解いてください。前半は国語。後半は数学です。明日は地理、歴史、経済、があります。まずは小手調べ、国語から始めます」


 そしておもむろに、テスト用紙を配った。

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