入学式の日の夜(第二章 完)

 レイシアにお茶を入れさせ、お茶の時間が始まった。


「お茶は上手な人が入れると味が変わると聞いてたが……、こんなにも変わるもんだねえ」

「ホントうまい! こんなうまいんだ、紅茶って」


 二人に誉められてレイシアは嬉しかった。


「紅茶の入れ方は、メイド修行で 鍛えましたから」


 そう言うと、カンナが真面目な顔になった。


「それだよ。あんた一体何者なんだい。奨学金貰うほど落ちぶれた子爵令嬢かと思ったら、裕福なオヤマーの前領主の孫? かと思うとメイドの修行や料理の修行をして、孤児院で掃除を習う……。訳がわかんないよ、あたしにゃね」


「なんだいそれ! ラノベのヒロインだってそんな滅茶苦茶な設定ないよ!」


 イリアは不思議がった。そういえばイリアはすれ違ってばかりだったので、レイシアの生い立ち話やあちこちでのやらかしは知らなかった。ちょっと料理の得意な変わった子くらいにしか思っていなかった。


「おかしいですか? 日常でしたのですが」


 レイシアはそう言うと、5歳の誕生日のことから、洗礼式で孤児院の子と仲良くなったこと、勉強をするようになったこと、弟の出産のため母と別れていたこと、災害で母がなくなったこと、オヤマーで祖母とうまくいかなかったこと、借金で領地がひへいしていること、一つ一つをていねいに話した。


「あんた、苦労してきたんだねえ」


 カンナが涙をこらえながら言うと、


「すげー、ラノベ3冊分は書けそう」


 とイリアが興味津々で言う。

 同じ話を聞いても感想は人それぞれ。

 それがイリアスタイル!

 それが作家のさが


 こうして、レイシアは、今までの生き様を話し、本当の意味で二人に受け入れてもらえることが出来たのでした。




◇◇王子視点◇◇


「王子、早く着替えてください」

「なぜだ? 学園行事で制服を着るのは普通だと思うのだが」


「入学パーティーで制服は普通ではありません!」

「んっ? 学園行事だろ」


「制服でダンス踊るんですか!」

「問題あるまい」


「問題だらけです!!」


 まったく、融通が利かない。こいつ若いのに頭の中は老害ジジイなのか?


「じゃ、帰るか」

「だめです!!! 出席してください」


「おかしくないか? 俺は制服で出ると言っているんだ。出ないとは言っていない。着替えず出るか、着替えて帰るかだ。二者択一。分かりやすいだろ」


「おかしいのは王子の頭です」


「失礼な。なら二者択一で言ってくれ。どちらかを選ぼう」


「いいんですか! じゃあ、『着替えないでパーティーに出る』か『着替えて……』あれ? 『着替えないで……』おかしい」

「着替えないで……。なんだね」


「『着替えずにパーティーに出る』これはよし。『着替えて……』ダメだ。どうしても王子の都合のいい条件になってしまう」


「分かったかい? 二者択一の二択の答えは『着替えずに出る』か、『着替えて帰る』かだ。どっちにしろおれは、二択目の帰る方を選ぼう」


「くっ……。仕方ありません。出席だけはしてください」


 宰相の息子チャーリーはあきらめて出て行った。どこかに報告に行くのだろう。

 それにしても本当に頭わるいな。二者択一で選ぶと言ったんだ。『タキシードで出席』『燕尾服で出席』の選択肢だったら着替えたのに。



 結局、教師の指導で着替えざるを得なくなった。どいつもこいつも頭がかたい。


「なあ」

「なんですか?」


「あの子来るかな」

「おっ? 気になる子が? やっとその気に?」


「いや、あの制服女子」


「来るわけないじゃないてすか!」

「なぜ?」


「王子、あんた何したか分かってないんですか? あの後、あの子周りの女子から睨まれて、勢いよく大逃走劇繰り広げていたんですよ! かわいそうに」


「そんなことが……。見たかったな」

「人でなしですか!」


 そうか、来ないか。来たら楽しくなりそうな気がした俺の期待は……。


 そしてまた、つまらないパーティーが始まる。







………………あとがき……………




 第二章終わりです!

 まさかの王子登場! 書いてて驚きました! 一年生で出す気なかったのに……。


 新入生挨拶、そりゃ王子がいたら出すよね。他がやったらおかしいし……。





 まさか、入学式の一日で一章使い果たすとは……。予定外です!


 相変わらずのスローペース!

 いつ最終回迎えられるのやら……。


 皆さま、最後までお付き合い、よろしくお願いします。


また、感想や★💖など、何かしらアクションしていただくと、読んでもらえたなと実感できるのでうれしいです。


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