お祖母様の怒り
いくつもの新しい味の米玉を持たせて、お祖父様とレイシアは家に帰った。お祖父様は料理人達に米玉を試食させた。料理人達はその斬新な味に驚愕した。
「これをレイシア様が?」
「ああ、レイシア主導で酒蔵の奴らが作りおった。今後、レイシアが何か作りたいと言ったら、自由に調理場を使わせるように。協力を惜しむな。いいな」
「しかし」
「何だ」
「本当にレイシア様が作られたのですか? 私には信じられません。それに、調理場は危険な場所です。お嬢様が万一にでも怪我などなさられたら……」
「そうか。ならレイシアの腕を試してみるがいい。おい、レイシアを呼んできてくれ」
「はい」
◇
調理場は、異様な熱気にあふれていた。そうそこは、レイシアの、レイシアによる、レイシアのための、クッキング・ショータイムになっていた。
ヒラリとターンすれば、いつのまにか細切れになり飛び散る食材。フライパンで全てを受け止めると強火で一気に炒める。同時に薄くスライスされたハムは、米と具材を優しく包んでいく。隙のない武道家の演舞のような立ち回りで、あっという間に米玉が並べられてゆく。
「さすがにあれだけ作れば、効率化のパターンが見えてきましたわ。開発室より設備が整っていますし」
ふぅと息を吐くと、にっこりと料理人達に微笑むレイシア。盛り上がるお祖父様サイドと、凍りつく料理人サイド。
「さあ、召し上がれ」
レイシアが、料理長に出来たての米玉を出そうとした瞬間、
「何をしているの、あなた達!」
お祖母様が大声で乱入してきた。お嬢様が料理をしていると、ポエムから知らされたのだ。
「おお、ナルシア。いい所に来た。これを食べてごらん。レイシアが作った……」
「レイシアが作ったですって! あなた、何をさせているんてすの。子爵の令嬢に料理なんて!」
「いや、これがなかなかの……」
「何を言っているのですか! レイシア、あなた何をしにオヤマーまで来たの? 貴族令嬢としてのマナーや振る舞い、社交を学ぶためよね。今のあなたは、貴族令嬢として失格ですよ。二度と調理場には入らないように。分かったかしら」
「いや、しかしだな、レイシアの作った……」
「あなた! 何を言っているのですか! 祖父としてきちんと教育なさい!」
お祖母様の怒りは、誰も止めることは出来なかった。そのまま1時間ほど、お祖母様の説教は続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます