はじめてのお別れ

 レイシアのお母様アリシアと、お父様クリフトは恋愛結婚。学園で2歳年下のアリシアはクリフトに一目惚れ。なんだかんだでお付き合いが始まった。


 ターナー家もアリシアの実家オヤマ家も子爵。子爵同士の結婚。一見よい話に見るのだが、かなりの格差婚だ。


 領地は広いが王国の端っこ、田舎者のターナー家と、広くはないが王都の近く、酒造りが盛んでそれに関する技術特許を多く抱えているオヤマー家。生活レベルが違いすぎ。


 もちろん、アリシアの両親は結婚には猛反対。恋愛と結婚は違うのよ、と言いくるめようとしたが、若さってコワイね。アリシアは家出同然にターナー領に押しかけて逆プロポーズ。


 すったもんだの末結婚を認めさせたのだが、未だにクリフトは、アリシアの両親始め親戚一同に嫌われている。


 それでも娘は可愛くて仕方がない。執事メイド等自分の子飼いをアリシアの脇に付けさせ、定期的に報告させている。



 …………悲しい事に、アリシアは三年前流産して、自身も危険な状態に陥った経験がある。

 

 妊娠は病気じゃない? そんな簡単なことではない。出産は命懸けの行為。病気でないにしても軽々しく考えてはいけない。まして、田舎のターナー領では、何か起こった時に出来ることなんてたかが知れている。


 故にアリシアの両親は里帰り出産を猛プッシュ。アリシアも前回の体験があり了承。クリフトも渋々受け入れざるを得なかった。産まれ子が1歳になるまで里帰りをすることになった。


 アリシアはレイシアを連れて行こうか迷ったが、父母の影響が子供のレイシアに悪影響を及ぼす危険性(一年以上旦那の悪口言い続けて洗脳しそうだわ)と、旦那が一人になって腑抜ける未来予想図が見えたため、連れて行くのは諦めた。レイシアの5歳の誕生日と洗礼式を祝ってから、実家に戻る事にした。


◇ ◇ ◇


「……と言う訳で、三日後お母様は赤ちゃんを産むために、お母様が生まれたお家に行って来ます」


「……おかあさま、いなくなっちゃうの?」


「ちゃんと帰ってくるわ。その時は赤ちゃんも一緒よ」


「赤ちゃん……」


「赤ちゃん連れて帰ってくるわ。それまでいい子で待ってて」


「……分かった。いいおねえさまになるためにがんばる」


 「そうね、いいお姉さまになるように頑張ってね」


 お母様はレイシアを抱きしめた。それから三日間レイシアは孤児院には行かず、お母様の後をついて回り、お母様のベッドに潜り込んだ。


◇ ◇ ◇


 出発の日。前日に実家から来た馬車5台に荷物とアリシア付きの使用人を乗せて旅立った。レイシアは泣きそうな笑顔で見送った。

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